CQ-X 【1995】

理想の新世代サルーンを目指した提案モデル

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先行開発技術を満載したサルーンの新提案

 1995年秋のフランクフルト・ショーでベールを脱ぎ、10月の第31回東京モーターショーで日産ブースの主役としてスポットライトを浴びたCQ-Xは、近未来の理想のサルーン像を提案した意欲作だった。モーターショー出品モデルには、夢を語るコンセプトカーと、ユーザーの反響を見るための市販予定車に大別できるが、CQ-Xはその中間。2000年代初頭に実現を予定している各種技術を満載した提案型モデルといえた。ちなみにトヨタは31回東京モーターショーでハイブリッドカー、プリウスのプロトタイプを公開している。

 CQ-Xのスタイリングはクルマの基本形であるセダン。全長をコンパクトに抑え、全高やトランク高を高く採った合理的なパッケージを採用した。国産車トップクラスの室内&広大なトランクスペースを実現するとともに、将来の各種規制を見こした衝突安全基準を先取りした先進フォルムだ。開放感を高めるドアウィンドーの前端部分の処理と、サイドの幅広プロテクターが個性を明確に主張する。フロントグリルは2000年代前半の日産車のアイデンティティとなる2分割グリルを先取りしていた。4320×1740×1450mmのスリーサイズは当時のパルサーとプリメーラのほぼ中間に位置するコンパクトサイズだった。

燃費を重視した2種の直噴ユニットを設定

 パワーユニットは燃費性能を重視した直噴システムのガソリンとディーゼルの搭載を想定しており、トランスミッションはCVT。ガソリン仕様で従来比25%の燃費向上を目指し、ディーゼルでは燃費向上と同時にカーボンやHC、Noxなどの排出を大幅に抑えたクリーンエンジンに仕上げていた。ハイブリッドシステムは考慮されていないが、ガソリン&ディーゼルともに2000年代の重要課題を“燃費”と位置づけた新世代パワーユニットだった。タイヤも転がり抵抗を徹底的に低減した低燃費タイヤを装着する。

 安全性面の取り組みもCQ-Xは積極的だった。運転席&助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、ビルトインチャイルドシートはもちろん、居眠り運転警報&覚醒システム、夜間歩行者警報システム、障害物警報システム、事故自動通報システム、プレビューコーナーモニター、ディスチャージヘッドライト、撥水ウィンドーシステム、ドアミラーウインカーなどを標準装備。どの装備も“絵に描いた餅”ではなく、実際に安全走行に貢献するものばかりだったのが特徴だった。後に生産車に採用されたアイテムも多い。

先進のナビゲーションシステム

 CQ-Xは安全性とともに、クルマと道路のコミュニケーションという面でも数々の提案を盛り込んでいた。インパネ中央に埋め込まれたカーナビゲーションは世界初のバードビューシステムを採用。鳥の位置から俯瞰することにより空間認知を高める手法を採用した。また家庭のパソコンで入手した各種交通情報や宿泊情報を、専用ICカードを介してカーナビゲーションに持ち込めるホームトラフィックサービスも盛り込んでいた。各種マルチメディアサービスと連携を図り、クルマを情報ステーション化する発想を、早くも取り入れていたのだ。

 この他にもパセンジャーを優しく包み込むエルゴノミックシートや、視覚、触覚、聴覚のメカニズム解析により視認系と操作系を明確に分離したインスツルメントパネル・デザインなど、CQ-Xは2000年代のモデルを先取りしていた。来るべき21世紀のカーライフをまじめに追求したCQ-Xは、日産の高い技術力を示す先行開発車として内外に大きな影響を与えたのである。