S2000 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009】

高剛性オープンボディを纏って復活した新世代 “エス”

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“エス”モデルの復活を目指して−−

 本田技研工業は1998年9月に行った会社創立50周年を祝う記念式典において、新しいスポーツカーのプロトタイプを発表する。1995年10月開催の東京モーターショーに出展したコンセプトカーの「SSM(スポーツ・スタディ・モデル)」を発展させた新世代スポーツカーの試作版を披露したのだ。

 当時の吉野浩行社長自らが「21世紀に向けた新しいホンダのシンボル」と語った新スポーツカーは、1999年4月になって「S2000」の車名を冠して市場デビューを果たす。ホンダの“エス”モデルとしてはS800Mが1970年7月にカタログから外れて以来、実に28年9カ月ぶりの復活だった。

車体前後重量配分を理想的な50:50に設定

 S2000は“走る楽しさ”と“操る喜び”を具現化しつつ、同時に環境への配慮と高い安全性を兼ね備えることを開発テーマに据える。基本レイアウトはフロントエンジン&リアドライブ(FR)方式の2シーターオープンボディで構成。また、優れたハンドリング性能や人車一体感を実現するためにエンジンを前輪車軸後方に配置して車体前後重量配分を50:50に設定した。

 肝心のオープンボディに関しては、中央部に位置するフロアトンネルをメインフレームの一部として活用し、フロアトンネルを前後のサイドメンバーと同じ高さで水平につなぐX字型の新構造“ハイXボーンフレーム”を導入する。これにより、完全ストレート化させたサイドメンバーからフロアトンネル、サイドシル、フロアフレームまでつながる“三つ又分担構造”を形成し、クローズドボディと同レベルの高剛性と衝突安全性を実現した。一方、シャシーについては高いハンドリング性能と高レスポンスを具現化するために新設計のインホイール型ダブルウィッシュボーンサスペンションをセット。さらに、前後ディスクブレーキやコンパクト化したABSシステム、トルクセンシングタイプのLSDも組み込んだ。

超高回転型ハイパワーユニットを搭載

 前輪車軸後方に縦置き搭載されるエンジンは、シリンダーブロックのスリム化や各部の軽量化を果たした新開発のF20C型1997cc直4DOHC・VTECで、11.7の高圧縮比と専用セッティングのPGM-FIなどにより9000rpmの最大許容回転数、250ps/8300rpmの最高出力、22.2kg・m/7500rpmの最大トルクを発揮する。また、マルチポート排気2次エアシステムやメタルハニカム触媒などの導入によりコールドスタート時からの効率的な排出ガスのクリーン化を実現した。組み合わせるトランスミッションは新開発の6速MT。スムーズな加速感と小気味いいシフトチェンジが味わえるよう、クロスレシオ化とショートストローク化を敢行した。

 開発陣は内外装デザインの演出についても徹底してこだわった。エクステリアは空力特性を重視して抵抗や揚力を低減したうえで、リアルスポーツカーらしい機能美を追求。勢いを感じさせるウエッジシェイプを基本に、スピード感のあるキャラクターラインや抑揚のあるフェンダー、プロジェクタータイプのディスチャージヘッドライト、ダックテール形状のリアビューなどを採用する。また、ソフトトップには素早く開閉できる電動タイプを導入した。一方、内包するインテリアは機能とエキサイトメントを両立させるデザインのあり方を模索して設計。フォーミュラマシンをイメージさせるデジタルメーターや操作感に重きを置いた小径ステアリングホイール、形状やウレタン硬度分布などをきめ細かくアレンジしたスポーツシートなどを装備した。

たゆまぬリファインで常に新鮮さをキープ

 ホンダが放つ久々のFRオープンスポーツカーは、走り好きのユーザーから好評をもって受け入れられる。一方で開発現場は、「スポーツカーは進化と熟成が命題」という方針のもと、緻密かつ先進的な改良をS2000に施していった。

 2000年7月には、世界初のステアリング機構であるVGS(車速応動可変ギアレシオステアリング機構)を組み込んだ「type V」を発売。2001年9月には初のマイナーチェンジを行い、カスタムカラープラン(外装色13タイプ/内装色5タイプ/幌色2タイプ)を新規に導入する。2002年10月には専用外装色2タイプにクロームメッキミラーやゴールドホイール、タン内装などを装備する特別仕様車の「ジオーレ」をリリースした。2003年10月になると、再度のマイナーチェンジを実施。一部内外装のデザイン刷新に加え、17インチタイヤの採用やサスペンションのセッティング変更、ボディ剛性の強化などを敢行する。2004年4月には、生産工場を栃木製作所高根沢工場から鈴鹿製作所TDラインに移管した。

 その後も精力的に改良を実施し、走り好きを大いに魅了したS2000は、デビューから10年あまりが経過した2009年6月に生産を終了する旨が決定される。この発表は同年1月にアナウンスされたのだが、以後多くの注文が舞い込み、結果的に2カ月伸ばしの2009年8月まで生産ラインを流れることとなったのである。