シグマ 【1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996】
ディアマンテ・ベースの上級サルーン
三菱自動車が1990年10月から発売したシグマは、いわば帰国子女のようなものであった。それまで、主にヨーロッパ諸国を中心に生産されていた輸出専用の4ドアセダンを、ギャラン店系列の専売モデルとして日本国内仕様に各部を変更して売り出したものだったからだ。車名のシグマ(Sigma)はギリシア語のアルファベットで第18番目の文字で、英語のアルファベットではSに相当しており、全てを加える(備える)という意味を持つ。また、シグマ(Σ)の名は、1976年5月にデビューしたギャランΣとして、ギャラン系の4ドアセダンに使われていた。
新しいシグマの直接的なベースとなっていたのは、1990年5月にデビューしていた大型4ドアサルーンのディアマンテで、それと異なる点はディアマンテの様にピラードハードトップではなく、サッシュ付きドアを持ち、ルーフを25㎜ほど高くして室内空間(特に後席のヘッドスペース)を広くしていた点だった。ドアがサッシュドアとなったため、Cピラー直前に三角窓が追加され、いわゆる6ライトと呼ばれるスタイルとしている。その他、グリルやテールライト周りの意匠を僅かに変えている。ボディーサイズは、全てのモデルが3ナンバーサイズとなっていた。最初から5ナンバー枠に囚われることなくデザインされていたから、スタイリングには余裕が感じられた。
フロントに横置きされ、前2輪もしくは4輪を駆動するエンジンは、やはり基本的にはディアマンテと同じもので、排気量別では3種があり、全てサイクロンと名付けられたV型6気筒DOHC。排気量は1998㏄(6G71型12バルブ、出力125ps/5500rpm)をベーシックに排気量2947㏄(6G73型24バルブ、出力175ps/6000rpm)、トップレンジには排気量2972㏄(6G72型24バルブ、出力210ps/6000rpm)が組み合わされた。
トランスミッションは5速マニュアルと電子制御4速オートマチック。駆動方式は前2輪駆動とビスカスカップリングをセンターディファレンシャルに使ったフルタイム4輪駆動があった。サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後ろは2輪駆動仕様ではマルチリンク/コイルスプリングが、4輪駆動仕様にはダブルウィッシュボーン/コイルスプリングが使われた。ブレーキは4輪ともディスクブレーキとなっていた。
当時考え得るあらゆる電子デバイスが標準化されていたが、中でもサスペンションを状況に応じて電子的に制御するアクティブECS、車速および操舵力感応型パワーステアリング、4輪駆動モデルには必須となるTCL(トラクションコントロール)、4輪ABSなどはグレードによって装備の違いがあった。また、エアコンディショナーなどの調節を外気の状況に応じて自動的に行う、三菱インテリジェントコックピットシステムや三菱の独自開発によるマルチコミュニケーションシステムなども装備可能だった。トヨタ マークⅡや、日産 ローレル、ホンダ インスパイアなどを直接的なライバルとしていたが、装備される電子デバイスの種類の多さでは群を抜いた存在となっていた。
販売は小規模。マイナーチェンジは繰り返されたものの、販売チャンネルの縮小などマネージメントの外的な要因が重なり、1995年1月に第二世代のディアマンテに吸収統合される形生産を中止、カタログからは消滅した。