コロナ 【1987,1988,1989,1990,1991,1992】
実用性能を追求した定番モデルの9代目
伝統のコロナは8代目のタイミングで、カリーナとともにFFモデルがデビューする。冒険を望まないトヨタらしく、当面はFRモデルとの併売というスタイルを取っていた。しかし、1987年12月、今回の主役である9代目コロナの登場とともに、一般ユーザー向けはFFモデルに統一。FRモデルは営業ユース向けを除き、ラインアップから姿を消した。
9代目となるコロナは、FF完全移行が遂げられただけあり、トヨタの主力ファミリーセダンに相応しい先進性と、コロナらしい堅実性が与えられた。ちなみに同時に登場した5ドアHBモデルにはSFのサブネームが付いた。
セダン系に搭載するパワーユニットは、1種のディーゼルエンジンと、4種のガソリンエンジン。ディーゼルは2リッターの直列4気筒SOHC仕様で、最高出力は73ps/4700rpm、最大トルクは13.5kg-m/3000rpmのスペックを持つ2C-III型。従来の2C-II型をベースに、燃料噴射系を見直した新開発エンジンだ。ガソリンエンジンは、4タイプとも直列4気筒のDOHC16V。筆頭は、数あるトヨタのエンジンラインアップのなか2リッター直4スポーツモデルの心臓を担う3S-GE型だ。セリカなどにも搭載され、そのポテンャルの高さと扱い易さで好評のパワーユニットである。最高出力は140ps/6200rpm、最大トルク17.5kg-m/4800rpmを誇る。ボア×ストローク86.0×86.0mmの高回転に適したスクエアタイプで、最高出力は6200rpmで発揮。吸気制御システムのT-VIC(トヨタ バリアブル インダクション システム)なども備えるユニットだ。
もうひとつの2リッターエンジンとなる3S-FE型は、トヨタ自慢のハイメカツインカムと呼ばれる機構を組み込んだ先進DOHC16Vユニット。進化した燃料噴射システム、EFI-Dを採用し、120ps/5600rpmの最高出力と、17.2kg-m/4400rpmの最大トルクを発揮する。同じくハイメカツインカムとなる1.8リッターDOHC16Vの4S-Fi型はシンプルな電子制御燃料噴射装置のCiメカを採用。105ps/15.2kg-mを発揮した。コロナのベースエンジンとなる5A-F型エンジンも1.5リッターという排気量にも関わらず1気筒あたり4バルブのDOHC16Vに進化した。キャブレター仕様ながらパワースペックは最高出力85ps/6000rpm、最大トルク12.5kg-m/3600rpmを実現。16.4km/Lの10モード燃費を達成した。コロナのエンジン群は、高性能とともにコロナらしく優れた実用性を重視したエンジンだった。
組み合わせたトランスミッションは、マニュアルタイプは5速もしくは4速で、それらをグレードによって使い分け、オートマチックタイプはOD付き4速フルオートマチックである。
エクステリアはオーソドックスなデザインで、曲面を多く用いた優しい表情を持つ。セダンというカテゴリーを極めるかのように多くの人に好まれるアクのなさはある意味でずば抜けている。インテリアもクリーンなイメージでまとめられ、操作性に優れたインパネと上質なシートを装備。上級グレードには、セダンながら6対4分割可倒式リアシートバックを採用し、長さのある荷物も積み込めた。また最上級グレードには、ひとクラス上の装備であるパワーシートを運転席に備えていた。
9代目コロナは、一見すると地味な印象を受けるが乗り込むほど、使い込むほどに「いいクルマを選んだ」と感じさせる存在だった。ユーザーの立場ですべてを構築したまじめなクルマの代表。隠れた名車と言える。
9代目には個性派もあった。トヨペット店累計販売1000万台達成記念モデルとして、1990年5月に170系・9代目コロナのラインアップに登場したコロナスーパールーミーだ。ホイールベースを210mm延長したストレッチリムジンである。延長したのは前席の後方部分で、ボディサイドを観察するとフロントドアとリアドアの間に伸ばした分のボディーパネルが備えられている。リアシートに着座すれば、足元のスペースが格段に拡大されていることに気付く。スリーサイズは全長4690mm×全幅1690mm×全高1370mmで、ホイールベースは2735mm。ストレッチモデルながら5ナンバーサイズで、5人乗りだ。 室内長は、210mmのホイールベース延長分がそのまま反映され、2120mmを誇っていた。ちなみに2735mmのホイールベースは、1987年に登場の8代目クラウンの2730mmを凌ぐものだった。