Z 【1998,1999,2000,2001,2002】

ミッドシップに大変身した2代目のZ

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軽初のスペシャルティカー、名車Zの復活

 かつての人気ネーミングを復活させて人気を得ようとする戦略は、クルマに限らず一般的に用いられる。1998年10月にデビューした2代目ホンダZは、まさしくその典型であった。

 最初のホンダZは、軽自動車初のスペシャルティカーとして1970年に登場している。爆発的な人気を博したN360系列のシャシーコンポーネンツを使って、2ドア+リアゲートのユニークなスタイルのボディを組み合わせたモデルだった。リアウィンドウの周囲に付けられた縁取りのイメージから「水中メガネ」というニックネームを奉られていた。後にデザインイメージはそのままに、メカニズム関係をライフベースに変更し水冷エンジンを搭載。センターピラーレスのハードトップも現れ、1974年まで生産された。

 この軽スペシャルティカーであったZの名を、およそ25年後に蘇らせたのが、新しいZである。規格はもちろん軽自動車サイズだが、オリジナルのZとはスタイルや成り立ちなどの点でも何の関連性もないことが特徴だ。

エンジニアの夢を満載した2代目

 軽自動車の可能性を突き詰めるのは、旧い時代からのホンダのお家芸とも言える。2代目Zもその例外ではなかった。最大のポイントは、エンジンをリアミッドシップ、それもアンダーフロアに置いた独特のレイアウトにある。これは、センターデファレンシャルにビスカス・カップリング(VCU)を用いたフルタイム4輪駆動システムの採用に際し、前後輪の荷重配分を50:50の理想値にするための設計だった。

 また、ラゲッジスペースを確保するために、排気量656ccで64ps/6000rpmを発揮する水冷直列3気筒SOHC12バルブにインタークーラー付きターボチャージャーを組み合わせたエンジン(他に自然吸気型の52ps/7000rpm仕様もあり)は、シリンダーを90度寝かせた状態で、リアアクスル直前に縦置き搭載されていた。

 エンジンのパワーは、4速オートマチック・トランスミッションからVCUのセンターデファレンシャルで前後に分けられ、各々前後輪を駆動していた。従って、2輪駆動モデルは設定されておらず、トランスミッションもマニュアル仕様の設定はなかった。

ミッドシップながら広い室内空間が自慢

 スタイルはどちらかと言えば実用性重視の無骨な感じのするもので、フルモノコックの2ボックス・スタイルで乗車定員は4名となっていた。ボディサイズは軽自動車規格の全長3395mm×全幅1475mm×全高1675mm、そしてホイールベースは2360mm。もちろんテールゲートがあり、後席は折り畳むことが可能。

 横倒しエンジンなど巧妙な設計のおかげで、ミッドシップ・レイアウトでありながら、使い勝手の良いフラットな床面を実現していた。最低地上高は195mmも確保されており、15inサイズのタイヤを装備したことと相まって、オフロードや雪道走行での走破性は軽自動車らしからぬ高いものとなっていた。

 サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイル・スプリング、後はド・ディオン式/コイル・スプリングの組み合わせで積荷による後輪荷重の変化に対応したものとなっている。価格は自然吸気仕様が114万8100円、ターボチャージャー仕様が128万8000円と性能や装備から考えれば十分納得できる設定であった。

コンパクトサイズながら世界水準の安全性を確立!

 2代目Zは軽自動車ながら世界水準の安全性を獲得していた。日本の法規よりも厳しい、オフセット衝突64km/h、正面衝突55km/hでもパセンジャーを守るホンダの社内基準をクリアー。

 さらにパセンジャーの安全だけでなく、衝撃吸収構造のボンネットやフェンダー、ワイパーピボットのスライド機構やボンネットヒンジの構造の工夫などで不幸なアクシデント時に歩行者の頭部傷害を軽減する安全設計を盛り込んでいた。周囲への安全配慮という面でも先進的なクルマだったのだ。

 技術者の夢を具体化したとも言える新しいホンダZであったが、一般のユーザーにはあまり理解されることがなかったようで、早々に市場から消えてしまった。しかし今日でも熱烈なファンが存在している。いかにもホンダらしい個性的なモデルだ。