フィットアリア 【2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009】

広い室内と抜群の実用性を誇ったタイ製セダン

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輸入車として上陸した新型セダン

 2002年11月に発売された「フィット・アリア」は、初代フィットをベースに開発されたコンパクトサイズの3BOXセダンである。特徴は、クルマ自体のキャラクター以前に、その開発・生産体制にあった。フィット・アリアは、もともとホンダが東南アジア向けに開発した「シティ」がベース。生産もタイのアユタヤ工場が担当し、日本には輸入車のカタチで導入されたのである。

 3BOXセダンは、乗用車の基本形である。落ち着ける室内空間と、独立したトランクスペース、そして適度なフォーマル感を持ったセダンは、1台のクルマとしてバランスに優れている。モータリーゼーション発展期にはコンパクトカーからプレステッジモデルまで、日本でも圧倒的な人気を誇った。だが、クルマのある生活が一般的になり、クルマにフォーマル感よりも合理性が求められるようになると、しだいにセダンの人気は低下する。とくにコンパクトカーの分野ではセダン人気の低落は顕著だった。日本ではコンパクトカーはFFファミリアなどがデビューした1980年代初頭から、しだいに2BOXハッチバックモデルに移行。1990年代後半になるとセダンのユーザーは、保守的な個人ユーザーや社用車などのフリートユーザーに限られるようになっていた。コンパクトカー・クラスのセダンは、販売台数が望めないことからしだいにラインアップから落とされる。

伸びやかで若々しいスタイリング

 東南アジアでは事情が違った。かつての日本がそうであったように、モータリーゼーション発展期の東南アジアのユーザーは、コンパクトカーでもセダンを望んだのだ。ホンダがシティ(=フィットアリア)を3BOXのセダンとして開発したのは旺盛でユーザーニーズがあったからだった。シティは、東南アジアではホンダのブランドイメージを代表するハイクラスなクルマとして認知され、高い人気を誇っていた。それだけに実に完成度の高いクルマだった。「最適なセダンがすでにあるのだから、日本向けに新規車種を開発するより輸入したほうがベスト」とホンダのマーケティング担当者が考えるのは自然な流れだった。フィット・アリアは、ホンダのグローバルなクルマ作りを象徴したモデルだったのである。

 フィット・アリアは、5ドアHBのフィットをベースにトランク部分を伸ばして3BOXスタイルに仕上げていた。ボディのスリーサイズは全長4310×全幅1690×全高1485mm(FF)。フィットと比較して480mm長く、15mmワイド、そして40mm低かった。2450mmのホイールベースはフィットと共通だった。
 ヘッドライトを独自の横長形状とし、リアウィンドーを寝かしたスムーズな造形のトランク部を持つフィット・アリアのスタイリングは伸びやかで美しいものだった。日本でのライバルとなるカローラ・セダンと比較して若々しい印象を持っていた。

室内広々、後席アレンジ自在のジェントルモデル

 セールスポイントは、広い室内空間と、圧倒的なユーティリティだった。フィット・アリアのシャシーは、フィットと同様に燃料タンクを運転席の下側に配置した独創のセンタータンクレイアウトを採用。これがアレンジ自在の後席と広大なトランクスペースを実現する。後席は左右別々に倒せ(ダイブダウン)、しかも座面だけチップアップすることが可能。後席を倒すとトランクとつながり最長2000mmのフラットスペースが出現した。トランクもクラス最大の500リットルと大容量だったため、その収納能力は圧倒的だった。しかも後席座面をチップアップすると高さ1245mmの空間が後席足元に生まれ、観葉植物など背の高い荷物が積めた。もちろん室内長1975mmを誇るキャビン空間は余裕たっぷり。フィット・アリアはマルチユースフルな新種のセダンといえた。

 バリエーションは上級版の1.5Wと、ベーシックな1.3Aの2種で、パワーユニットは1.5Wが排気量1496ccの直4OHC8V(90ps)。1.3Aは1339ccの直4OHC8V(86ps)を搭載。トランスミッションは全車CVTで、駆動方式はFFと4WDから選べた。
 フィット・アリアは、セダンらしく足回りのセッティングがソフトに仕上げられ、静粛性対策も入念に行われていた。室内色基調色を明るいベージュとし1.5Wではインパネやコンソール部に木目パネルを配するなど、上質感の演出にもぬかりはなかった。販売台数こそ多くはなかったが、購入したユーザーの満足度は高かった。ホンダらしいアイデアが満載されたジェントルモデルの代表といえた。