i-ROAD(コンセプトカー) 【2013】

クルマとバイクを融合した新発想の都市型EV

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パーソナルモビリティの新提案

 低炭素社会の実現に向けた動きが世界規模で脚光を浴びる2010年代。自動車業界では省エネやCO2削減などが重要な開発テーマとなり、環境負荷の少ないクルマの実用化に鋭意力が注がれる。その状況下でトヨタ自動車は、都市内の近距離移動に最適で、かつ新しい価値観を享受できる電気自動車(EV)タイプのパーソナルモビリティの研究・開発を積極的に推し進めた。

 1人乗り都市型EVの「i-REAL」や「i-Swing」、「i-Unit」などを創出してきたトヨタの開発陣。一方で、別展開として2人乗り都市型EVの企画も企画する。そして、2013年3月開催のジュネーブ・ショーでは“コンパクトで爽快なモビリティ”をテーマに据えた前2輪/後1輪車の「i-ROAD」を初公開した。

軽快で楽しい新感覚の走りを具現化

 i-ROADの主な特長は、4点に集約される。まず、超小型パッケージによる取り回しのよさ。ボディサイズは全長2350×全幅850×全高1445mmで、ホイールベースが1700mm(実証実験時は全長2345×全幅870×全高1455mm/ホイールベース1695mmと公表)と非常にコンパクトで、車線を占有することなく道路端をスムーズに走行することができる。また、駐車時は一般的なクルマに比べて1/2〜1/4で済む省スペース性を達成。最小回転半径も3.0mの小ささを実現した。

 次に、軽快で楽しい新感覚な走り。i-ROADは旋回Gに合わせて車体の傾きを最適かつ自動的に制御する新開発のアクティブリーン機構を組み込む。左右の前輪が上下に動いてベストな傾きになるこの新システムにより、狭いトレッドでありながらドライバー自身がコーナリング時の車両バランスを保つ必要がなく、安定したタイヤグリップで旋回が楽しめるようになった。メーカーでは、この特性を「クルマやバイクとは別次元の、一体感のある爽快な走り」と表現する。ちなみに、装着タイヤは前2輪が80/80R16サイズ(実証実験時は80/90R16サイズ)、後1輪は130/70R10サイズ(同120/90R10サイズ)をセットした。

 3点目は、クローズドボディによる快適性。タンデムレイアウトの室内はフロントウィンドウおよびルーフ、左右ドアで覆われ、天候に左右されることなくドライビングが楽しめるように外板を構成する。また、乗員が音楽などを自由に楽しむことができる快適性も実現した。一方、内装のデザインは丸型ステアリングやデジタルメーターなどでシンプルにアレンジ。大柄なドライバーでも最適な座り心地が得られるよう、シートはたっぷりとしたサイズを確保した。

 4点目は、環境性能の高さだ。動力源には走行中の排出ガスがゼロで、モーターならではの静かな走りを実現するEVパワートレーン(電動モーター×2/リチウムイオン電池)を採用。一充電の走行距離は50kmを確保する。また、最高速度は45km/h(欧州仕様。日本仕様は60km/h)に設定した。

各地で公道走行による実証実験を敢行

 環境性能だけではなく、走りの楽しさも内包したi-ROADは、ショーデビュー後に実証実験を積極的に行い、完成度を着実に高めていく。
 まず2014年3月には、トヨタのお膝元の愛知県豊田市で展開されている「次世代都市交通システム」にi-ROADを投入。その未体験の乗り味に多くの市民が驚きの声をあげた。2015年4月になるとトヨタとパーク24がタッグを組み、i-ROADを使ったパーソナルモビリティ・シェアリングサービスの実証実験を東京都心部でスタートさせる。さらに同年7月からは、i-ROADの本格的な実用化に向けて、企業や生活者と共同で取り組む新たな施策「OPEN ROAD PROJECT」を東京都内で敢行。具体的には、駐車および充電スペースの発掘やカスタマイズパーツの開発などを行った。

 i-ROADの実証実験は、2014年10月よりフランスのグルノーブル市でも実施される。当地では公共交通機関と連携した新しいカーシェアリングサービスの“Cite lib by Ha:mo”プロジェクトが行われることとなり、ここにトヨタ自動車も参画してi-ROADを提供したのだ。ちなみに、同プロジェクトにはトヨタ車体製の超小型EV「COMS」も供給された。
 次世代都市交通の要のひとつであり、同時に新たな自動車の成長領域として期待されるパーソナルモビリティの都市型EV。その先陣を切るi-ROADは、まさに未来のクルマの試金石だった。