ソアラ 【2001,2002,2003,2004,2005】

トヨタの美学を結集したDHTクーペ

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上級パーソナルカーの先駆、それがソアラ

 1981年2月に、最高級パーソナルカーとしてデビューしたトヨタ・ソアラは、2001年4月にフルモデルチェンジされて第4世代へと発展した。初代のデビューから20年の時間が経過していた。車名のソアラ(Soarer)とは、トップクラスのグライダーの機体を意味するもので、ハイウエイでの優雅な走りをイメージしたものだ。

 ソアラは、日本ではそれまでほとんど馴染みの薄かった上級パーソナルカーというジャンルを創造したクルマである。他の量産モデルとはあまり共通部分を持たず、そのモデルのみが独立して存在するという、メーカーにとっての看板モデルといえるものであった。具体的にパーソナルカーというジャンルが登場したのは、1950年代末のアメリカである。

 1955年にGMのシボレーブランドが送り出したスポーツカー、コルベットの対抗馬として登場したフォード・サンダーバードは、3年後の1958年モデルからは豪華な内装と満載された快適装備、派手なスタイリングを持ち、セダンとスポーツカー(あるいはグランドツーリングカー)の中間的な位置の、個人使用(パーソナルユース)を前提とした高性能パーソナルカーへと発展する。これが、現代に続くパーソナルカー(スペシャルティカー)の始まりであった。

先進技術の積極採用がソアラの個性

 初代ソアラが誕生した1980年代初頭は日本の社会や経済が一つの爛熟期にあった。クルマの分野でも本当に良質なものであれば、少々生産コストや販売価格が高くなっても容認する風潮が生まれ初めていた。クルマに限らず、人びとは様々なものを購入するに際して、より付加価値の高いものを選ぼうとする傾向にあったのだ。

 こうした時代背景の下、ソアラという高級パーソナルカーをデビューさせたのは、トヨタの万全を期した市場調査と市場解析に基づくものであったことはいうまでもない。当時でも主力モデルは300万円を超える販売価格であったが、多くのユーザーは最高価格のモデルを争って購入した。トヨタの市場戦略はものの見事に的中したことになる。

 面白いのは、ユーザーの多くが、当時としては珍しい複数所有ユーザーだったことだ。4ドアセダンの他にソアラを買っていた。市場の拡大という、トヨタの計画は此処でも成功したのである。
 その時代のメーカーが持っている最高レベルの最新技術を全て結集したモデルとして、ソアラを位置付けるトヨタは、歴代のソアラにはスタイリングから内装の細部に至るまで、それこそ考え得るあらゆる先進技術を盛り込んだ。「新技術のショーケース」といわれたのも当然だったのである。4世代目ソアラもその例外ではなく、2000年代に向けての最先端技術が惜しみなく投入されていた。

4代目はオープンに変身する電動メタルトップ採用

 4代目となって大きく変わったのは、ボディーバリエーションがオープンモデル一種になったことだ。無論、それはトヨタが初めて採用したデタッチャブルHTの高い完成度が支えていた。フルオープンからハードトップへの変身が可能なメタルトップであれば、敢えてクローズドルーフのクーペの設定は要らなくなるわけだ。

 トヨタがメタルトップと呼ぶバリアブルルーフは、旧くは1930年代にプジョーやタルボが採用しており、1950年代にフォードがフェアレーンの一部車種に、また1990年代後半にはメルセデス・ベンツSLKなどが採用していた。いずれも、スチール製のハードトップを電気モーターや油圧作動により、後部トランクに収める方式だ。

 キャンバス製のソフトトップとは異なり、耐候性や遮音性はもちろん、セキュリティー効果は飛躍的に高まるという大きなメリットがある。ソアラのバリアブルルーフは総アルミニウム製であり、上げ下げの動力には8個の電気モーターを使っていた。細かな制御が行えることや耐久性、信頼性の点で、油圧式や油圧と電気モーターの併用型よりも優れているのだという。センターコンソールにあるスイッチの操作により、全自動で完全なオープン状態から完全なクローズまでに要する時間はおよそ25秒。これはメルセデス・ベンツSLKよりも若干速かった。

エクステリアは欧州デザイン案

 4代目ソアラは日本以上にアメリカをはじめとする海外市場をターゲットに定めていた.それだけにスタイリング開発はワールドワイドに行われた。エクステリアは、日本の本社デザイン部とアメリカのCALTY、そして欧州のEPOC(現在のEDスクエアの前身)というトヨタの3デザイン拠点による競作となった。

 与えられたテーマは、「10年たっても古く見えない普遍性」だったという。当初からクーペからオープンに変化するバリアブルルーフはデザイン要件に盛り込まれていた。本社とCALTYはキャビンが小さく、リアをハイデッキに仕上げたダイナミックな造形。一方EPOCは優雅さを強調したエレガントな造形を提案する。このなかから選ばれたのはEPOC案だった。

 一見シンプルながら吟味した面処理を持ち、美しさとスポーティーさ、そして力強さが見事に両立していたことが選択の理由だった。EPOCの提案デザインはほぼ量産車そのままで、市販モデルとの相違はトランクのオープニングラインなどが微妙に変わった程度だった。

 インテリアはエクステリアに合わせて日本の本社デザイン部が担当した。オープンモデルだけに車外からの視線を意識したという。キーワードは「本物」。形状だけでなく、シートの革そのもの、木目パネルの材質にも徹底的に気を配った。とくにステアリングホイールとシフトノブは無垢材からの削りだしとなっていた。

エンジンは4.3リッターV8を搭載

 エンジンは排気量4292ccのV型8気筒DOHC32バルブで電子制御燃料噴射装置と10.5の圧縮比から280ps/5600rpmの最高出力を得る。排気量は大きいが超低排出ガス車(ULEV)としての認定を取得していた。トランスミッションは電子制御5速オートマチック(5 Super ECT)のみの設定となる。駆動方式は縦置きフロントエンジン、リアドライブである。サスペンションは前後ともコイルスプリングを用いたダブルウイッシュボーン、ブレーキは4輪ディスク(フロントはベンチレーテッドタイプ)。標準装備されるタイヤは245/40ZR18サイズである。

 エンジンとトランスミッションが一種類となっているので、ソアラのモデルバリエーションは事実上シングルグレードとなり、後は細かな装備品の違いがあるだけとなる。正式な呼称もトヨタ・ソアラ430CSVというものだ。基本価格は600万円ジャストで、それは初代ソアラのほぼ倍の値段となっていた。販売チャンネルはトヨタ店及びトヨペット店であった。しかし、発売前から予約注文が殺到する状況で、発売の一ヶ月前には販売予定台数(月販で200台)の7倍に達したという。それほどソアラは人気を集めるブランドだったのだ。