デリカ・スターワゴン 【1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999】
広さと走破性を備えた個性あふれる3代目
1983年秋にアメリカでデビューした、クライスラー系のプリムス ボイジャー/ダッジ キャラバンに始まるミニバンの流行は、たちまち世界中に波及した。日本もその例外とはならず、各社各様のミニバンを登場させることになる。多くは、商業車のワンボックスバンの内装および外装を仕立て直し、エンジンを強化したものだった。トヨタのライトエース ワゴン、ハイエース ワゴン、日産のバネット、キャラバン、マツダのボンゴなどがそれに当る。三菱は、商用車デリカをベースとしたデリカ・コーチを1969年に、そしてデリカ・スターワゴンを1979年6月にデビューさせていた。
最初のデリカ・スターワゴンは、2世代目のデリカを3列シートの乗用車登録ができるモデルへ改良を加えたもので、数多くの快適装備やアクセサリーを加え、乗用車として十分な魅力を備えたモデルとしていた。基本的なスタイルはキャブオーバータイプのリアにスライドドアを備えたワゴンとなっており、デビュー当初は標準ルーフ仕様と1.6リッターエンジンのみだったが、1980年5月にはハイルーフ仕様と1.8リッターエンジンを加えた。
1986年6月にフルモデルチェンジを受けて、今回の主役となる第3世代に切り替わる。すでに、スターワゴンはRV(レジャービークル)として高い評価を獲得しており、このジャンルのトップブランドのひとつとなっていた。
3世代目となったデリカ・スターワゴンは駆動方式で2輪駆動と4輪駆動があり、ルーフもノーマルルーフ(エアロルーフと呼んだ)とハイルーフの2仕様があった。スタイリングは小型車枠を最大限に使った実用性の高さはそのままに、初代から比べて角が取れてスタイリッシュになった。
大きな変更点は、サスペンションが前ダブルウィッシュボーン/縦置きトーションバースプリングとなり、ステアング形式がラック&ピニオンとなったことである。乗り心地と操縦安定性は大幅に向上した。のちに全長4590㎜となるロングバージョンを加え、最大乗車定員では10人乗りが可能となった。
通常ルーフ(エアロルーフ)のほか、ハイルーフ仕様を設定したデリカ・スターワゴンは、2WDのハイルーフ仕様に、魅力的な仕様を設定した。それがクリスタルルーフ。フロントシート上部のルーフにはガラスサンルーフを採用したうえ、セカンドシートからサードシートにかけてのルーフサイド部分にもガラストップをあしらったもの。
ルーフはガラス張りのキャノピー仕様の印象、1ボックスボディーの長いルーフに施されただけに、その開放感は相当だった。サイドのガラス部分は固定式だが、フロントのサンルーフはチルトアップが可能。もちろん、遮光のためのサンシェードは、ルーフのガラス部分すべてに採用していた。
メカニズムはタフ。パジェロ譲りの4輪駆動システムを持った仕様では、全高を小型車枠に収めるためにハイルーフ仕様はなく、標準ルーフのみの設定となった。それでも、全高は1975㎜にも達していた。ホイールベースが2240㎜と短かったから、一見、腰高なスタイルとなったが、オフロードや雪道での走行性能はパジェロに匹敵するポテンシャルを示した。
装備されるエンジンは排気量2476㏄の直列4気筒SOHCターボチャージャー付きディーゼル(4D56型、出力85ps/4200rpm)および1997㏄の直列4気筒SOHCガソリン仕様(G63B型、91ps/5500rpm)の2種。トランスミッションは4速オートマチックと5速マニュアルであった。
スターワゴンは基本的なスタイルや仕様を変えることなく、多くの特別仕様モデルを作りながら、1999年まで存続した。RVの名車である。