パジェロ・エボリューション 【1997,1998,1999】

15年の集大成として登場した究極のパジェロ

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パリダカ参戦のためのベースモデルの開発

 1997年にダカール~アガデス~ダカールのルートで開催された通称“パリダカ”ことパリ~ダカール・ラリーは、三菱自動車工業にとって記念すべき大会となった。プロトタイプ車両でのメーカーエントリー、さらにはガソリンターボエンジンでのエントリーが禁止されたこの年、市販車改造クラス(T2)にパジェロとチャレンジャーで参戦した三菱チームは、トップ4を独占(第1~3位までがパジェロ、第4位がチャレンジャー)。しかも、篠塚建次郎選手が日本人で初めて同ラリーを制覇するという偉業を成し遂げたのだ。

 次戦のパリダカはさらに厳しい展開となる。連覇を達成するためには、パジェロの戦闘力をいっそう高めなければならない--。決意を新たにした三菱チームは、その目的を果たすために、パジェロのエボリューションモデルの開発を計画した。

「エボリューション」の名をつけて発売

 パリダカへの参戦から15年目を迎えることから、“15年間の集大成”と謳った究極のパジェロは、「エボリューション」の名をつけて1997年9月に市場デビューを果たす。キャッチコピーは「4WDエボリューション、始まる」。ベース車は2代目パジェロのメタルトップZR-Sで、シャシーからボディ、エンジン、内外装に至るまで、すべてを徹底的にチューンアップしていた。

 シャシーについては、パリダカでの高速ステージ走行を念頭にトレッドの拡大(前後1590mm)を実施。同時に、サスペンションを前ダブルウィッシュボーン/コイル、後マルチリンク式ダブルウィッシュボーン/コイルの4輪独立懸架とし、加えて前240㎜/後270㎜の超ロングストローク化やショックアブソーバー減衰力の最適化、ボールジョイント式スタビライザーの採用などを行って接地性や悪路走破性、乗り心地の向上を図る。この新開発の懸架機構は、“ARMIE(アーミー:All Road Multilink Independent suspension for Evolution)”と呼称した。また、シューズには専用開発の265/70R16 112Hタイヤ+7JJ×16アルミホイールを装着する。

 組み合わせるボディに関しては、空力性能や冷却性能の向上、軽量化および高剛性化を狙ったブラッシュアップを敢行。外装には専用デザインの前後エアロバンパーや開口部を広げたフロントカラーグリル、前後オーバーフェンダー(前エアアウトレット付)、ステップ一体型サイドエアダム、ウイングフィン付リアスポイラー、バンパービルトインタイプ・プロジェクターフォグランプなどを装備する。また、大型エアインテーク付フロントフードとスキッドプレートは軽量なアルミ材で仕立てた。フレームは新サスペンションの設定に対応してクロスメンバーの形状変更や閉断面リーンフォースメントの追加などを実施。ベース車比で曲げ剛性が約47%、ねじり剛性が約33%もアップした。

エンジンは280ps仕様のV6ガソリンを搭載

 搭載エンジンは6G74型3496cc・V型6気筒DOHC24Vユニットをベースに、可変バルブタイミング&リフト機構のMIVECや電子制御可変吸気システムを組み込んだ新開発ユニットを採用する。パワー&トルクは280ps/6500rpm、35.5kg・m/3000rpmを発生。あらゆる領域での高トルクの維持と圧倒的な加速フィーリングを実現する。さらに、ヘッドまわりには中空吸気バルブやチタン製バルブスプリングリテーナ、ナトリウム封入中空排気バルブなどを装着し、軽量化とともに高熱負荷への耐久信頼性およびバルブ追従性の向上を図った。トランスミッションには、ハイパワー化に即してセッティング変更や剛性強化を行った5速MTとINVECS-Ⅱスポーツモード5速ATを導入。駆動システムは様々な路面状況に合わせて4つの走行モードから最適の駆動方式を選べるスーパーセレクト4WDを採用。悪路走破性やオンロードでの旋回性の向上を狙ってヘリカルギア式LSDにビスカスカップリング(VCU)を装着したハイブリッドLSDも組み込む。ブレーキには制動性能を高めた前ベンチレーテッドディスク/後ドラムインベンチレーテッドディスクに、4チャンネル方式マルチモードABSを採用した。

 インテリアは、走行性能だけではでなく長距離ドライブを快適に過ごすための装備も充実させる。フロントシートにはホールド性を高めたレカロ社製シートを装備。ステアリングは専用の本革巻き4本スポークタイプで、インパネにはカーボン調パネルをセット。また、フルオートエアコンやマルチモードキーレスエントリーシステムといった快適アイテムを標準で装備した。

1998年のパリダカではトップ3を独占

 チューンアップの内容に比してリーズナブルな価格設定(5速MT374万円/5速AT390万8000円)も奏功し、パジェロ・エボリューションは順調に受注を伸ばしていく。そして、パジェロ自体が全面改良する1999年まで販売が続けられた。

 一方、パジェロ・エボリューションの主戦場であるパリダカでの戦績は、パリ~グラナダ~ダカールのルートで行われた1998年大会でトップ3を独占(J-P・フォントネ選手/篠塚建次郎選手/B・サビー選手の順。三菱チャレンジャーを駆る増岡浩選手が4位)し、見事に連覇を果たす。グラナダ~ダカールのルートで実施された1999年大会ではプロトタイプ車両のシュレッサーバギーにトップを譲ったものの、パジェロは第2~4位に入る好成績を残した。