プリウス 【2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011】

“ハイブリッドのトヨタ”を印象づけた大ヒットモデル

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2代目は初代の約10倍の販売台数を記録

 2003年9月にデビューした2代目プリウスは、環境性能に優れたハイブリッド車を世界的にポピュラーな存在としたエポックモデルだった。
 「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーとともに初代プリウスが登場したのは1997年12月(発表は10月)だった。エンジンとモーターを組み合わせた世界初の量産ハイブリッド車として登場した初代モデルは、当時のガソリン車の約2倍の28km/Lの10・15モード燃費をマーク。環境に有害なCO2排出量の少ないエココンシャスなクルマとして世界じゅうから注目を集めた。

 しかし、ハイブリッド初挑戦のクルマとしては優れた完成度の持ち主だったものの、走りはやや力不足。好き嫌いがはっきりと分かれるスタイリングもあって、販売成績はそこそこのレベルに留まった。初代プリウスの世界総販売台数は12万3000台(日本国内販売6万5000台)である。
 対して2代目プリウスは、2003年9月から2011年12月のモデルライフで初代の約10倍に当たる119万2000台(日本国内販売36万台)を売り上げた。トヨタが世界からハイブリッド車のリーダー企業として認知されているのは2代目プリウスの成功があったからこそと言える。

走りの気持ちよさと環境性能を引き上げた2代目の実力

 2代目プリウスのセールスポイントは、クルマとしての「走りの気持ちよさ」を引き上げた上で、環境性能を一段と向上させた点にあった。2代目の開発を担当したチーフエンジニアの井上雅央氏は「2代目の魅力は“眺めているだけで気持ちがいい”、“運転して気持ちいい”、“操作して気持ちいい”という、クルマがもたらす“気持ちよさ”において進化した、ということです。とくに走りの気持ちよさについては、モーターの大幅なパワーアップにより飛躍的に進化しました。また、35.5km/Lという世界トップレベルの低燃費も実現し、環境への配慮という面でも進化しています。“ハイブリッド・シナジードライブ”というコンセプトによって実現した力強い走りと、世界トップレベルの環境性能。この両立で生まれた“気持ちよさ”を一人でも多くの方に体験していただきたいと思います」と語っていた。

 2代目のハイブリッドシステムは「THSⅡ」と命名した新機構。1.5ℓガソリンエンジンとモーターの組み合わせという点では初代と同様だったが、とくにモーターの大幅なパワーアップによってパフォーマンスを大幅に向上させた点が特徴だった。モーター出力は従来モデルの33kWから50kWへと大幅に増強されていた。これにより発進時や低速走行はモーターを主動力とし、強い加速時や高速走行時にエンジンがアシストするという、トヨタのハイブリッド機構の基本走行スタイルが確立された。トヨタはこの走行スタイルを「ハイブリッド・シナジードライブ」と命名、プリウスの先進の走りを特徴づけた。

 事実、2代目プリウスの走りはスムーズさとともに初代と違う逞しさが感じられた。動きだしから最大トルクを発揮するモーターの特質を生かした結果だろう。発進加速はアクセルを軽く踏んだだけでも力強く、気持ちがよかった。高速走行時も非力な印象はなくなっていた。それでいてモーターが主力となった関係で実用燃費はさらにアップ。カタログ値の35.5km/Lという10・15モード燃費を叩き出すのは、さすがに難しかったが20km/L以上をコンスタントにマークした。しかも街中や渋滞路ではエンジンの停止時間が長くなるため、一般的なガソリン車とは逆に、走行状況が悪化するほど好燃費をマークした。つまり日常走行ほど環境に優しいクルマに仕上がっていた。

車格は上級移行。世界初の先進装備も導入

 2代目はボディサイズを拡大。クラス感がアップし、居住性能も向上した点も魅力だった。ボディサイズは全長4445×全幅1725×全高1490mm。初代のカローラ・クラスから、プレミオ&アリオンと同等のミディアム・クラスになり、幅の拡大で3ナンバーモデルとなった。ボディスタイルは空力特性を徹底的に重視した“トライアングル・シルエット”。Cd値は世界トップ級の0.26をマークする。滑らかなフォルムは徹底的な風洞実験によって磨かれ、ボディ上面だけでなく、アンダーフロアも空気の流れをコントロールする造形に仕上げられていた。

 装備の先進性という点でも2代目は際立っていた。キーを身につけていればドアロック操作やシステムを起動が出来るスマートエントリー・スタートシステムや、世界初の装備である駐車時のハンドル操作を自動化したインテリジェント・パーキングアシストを設定。次世代車らしい新しさをフルに盛り込んだのだ。2代目プリウスは性能装備ともに“2010年代のスタンダードカー”を掲げ開発された、確かにすべてが近未来を見越した設計でまとめられていた。

自動運転の第1ステップ。世界初の予防安全機構S-VSC

 2代目プリウスは、自動運転の第一歩ともいえる先進安全機構を装備していた。S-VSC(Steering-assisted Vehicle Steability Control)と命名されたシステムである。障害物を回避するため急激なハンドル操作をした場合など、クルマが横滑りしそうになるとセンサーが判断すると、自動的に各車輪のブレーキ油圧とエンジン&モーター出力を制御するだけでなく、電動パワーステと協調、操舵トルクアシスト量を制御する世界初の予防安全機構だった。

 コーナリング時に後輪の横滑りが発生した場合、ブレーキやエンジン&モーター出力を制御するだけでなく、横滑りを抑制する方向に容易にステアリング操作ができるよう操舵トルクのアシストを行っていた。各種センサーが走行状況をモニターし、危険と判断した場合に積極的にアシストを行うシステムという意味で、いわば自動運転の萌芽ともいえた。2代目プリウスの先進性を象徴するシステムのひとつだった。

 2代目プリウスは、トヨタならではの高い信頼性を背景に、ライバルを圧倒する“未来感覚”を実現した傑作だった。日本が世界に誇る名車の1台である。