トヨタデザイン13 【1989,1990,1991】

世界基準で仕立てた上級サルーン&GTカーの登場

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トヨタの技術の粋を結集した新ラグジュアリーセダンのセルシオ

 後に“バブル”と称される好景気の最盛期となった1990年前後、トヨタ自動車は豊富な開発資金を使って新世代デザインを採用した上級モデルを相次いで市場に放っていく。
 1989年9月には、米国で新しい高級車のレクサスLS400を発売する。それから1カ月ほど遅れて、日本でもセルシオの車名で販売を開始した。セルシオのクルマ造りは、それまでのトヨタ車とは一線を画していた。エンジンや駆動系、ボディなどの加工を高精度とし、内装材には厳選した最高級の材料を使用する。ボディ塗装も従来とは違った高級塗料と方法で吹きつけられ、被膜の耐久性や色の輝きは既存の上級サルーンを大きく凌いでいた。

 スタイリングに関しては、感性に訴える美しさと気品を備えるとともに、空力特性を徹底的に磨いた新曲面フォルムのセダンボディに仕立てる。具体的には、強いテーパーで絞ったフェンダーとプレスドア、ラウンドさせたコーナー処理、わずかにヒップアップさせたテールエンド、エンジン下部を覆う大型のアンダーカバーなどを採用してクラストップの空気抵抗係数(Cd値)0.29を実現した。インテリアについては、大らかな曲線を用いた端正かつ豊かなデザインで構成し、ウォールナットなどの厳選した天然素材の導入と相まって乗る人を温かく包み込むキャビン空間を創出する。また、新しいパッド材を内蔵したシートおよびドアトリムの表地にはソフトで肌触りのいい高級ファブリック3種と本革を設定。さらに、マイコンプリセット式のドライビングポジションシステムやブラックフェイスを基盤にしたオプティトロンメーター、マイコン制御のオートエアコンといった先進機構を組み込んでいた。

3代目ソアラはアーティスティックラウンドシェイプを構築

 1991年5月には、スーパーグランツーリスモを名乗る3代目ソアラがデビューする。基本スタイリングを担当したのは、日本ではなく米国のデザインスタジオのCALTY。レクサス・ブランドでの販売(車名はレクサスSC)も決定したため、アメリカ市場の志向を存分に取り入れようとしたのだ。

 2ドアクーペボディの車両デザインについては、フロントノーズからリアデッキにかけて動感あふれる曲面でアレンジしたアーティスティックラウンドシェイプを基本とし、ここにソアラの新アイデンティティとなるフロントマスク、すなわちロービームから独立させた丸型ハイビームを組み込む4灯式ヘッドライトの新しい顔をセットする。さらに、ボディ塗装には反射光によりブルーとブロンズに色調変化するフタロシアニンカラーフレークや輝きと深みを両立するM.I.Oカラーを導入して質感を高めた。インテリアは、インパネからドアトリムに続くラウンディッシュなフォルムで空間を構成し、ドライバーにゆとりと安心を与えるデザインを採用する。また、独立タイプのセンターパネルやGPS付のエレクトロマルチビジョン、ブラックフェイスのスペースビジョンメーターなどを設定し、高級スペシャルティクーペにふさわしい華やかさと機能性を創出した。

新高級車を目指したFFアッパーミドルサルーンのウィンダム

 1991年9月には、ソアラと同様に米国CALTYが基本デザインを手がけた上級サルーンのウィンダムがデビューを果たす。アメリカ市場では2代目のレクサスESとして販売されたFFアッパーミドル車は、4ドアピラードハードトップのボディを基本に、フードと一体化したボディ同色グリルや2連のクリアレンズでカバーした4灯式プロジェクターヘッドランプ、伸びやかでダイナミックな躍動感を表現したサイドビュー、上下3段の大型コンビネーションランプを配したリアセクションなどで精悍かつ存在感あふれるスタイリングを構成。また、ボディカラーは風格と高品質感を持ち合わせたツートンタイプで仕立てた。

 インテリアは、3ナンバー専用ボディとFFの利点を活かしたクラストップレベルのワイドキャビンを構築したうえで、ラウンドシェイプのインパネ&ドアトリム造形を取り入れて乗員を優しく包み込む居住空間を創出する。また、内装色にはアイボリー/ブラック/トープの3タイプを用意し、オプションとしてラグジュアリーな雰囲気が存分に味わえるレザーパッケージを設定した。

動的でソリッドなスタイリングを採用したアリスト

 1991年10月には、ハイパフォーマンス4ドアセダンを謳うアリストが登場する。スタイリングはジョルジェット・ジウジアーロが主宰するイタルデザインが手がけたプロトタイプをベースに、社内の造形チームが量産化を担当。プレスドアを用いた4ドアセダンボディを基本に、流麗で力強い面構成やウエッジを利かせたサイドシルエット、ハイマウント&セミセパレートランプを組み込んだ専用スポイラー付リアセクション、そしてロングキャビン&ワンモーションのソリッドフォルムを採用して“心昂る”空力スタイリングを実現した。

 内装は、機能性とクオリティの両立を追求するとともに、ドライバーズエリアにおける独特のコクピット感を演出する。具体的には、優れた運転視界、視認性のいいオプティトロンメーター、乗員をしっかりと支持する8ウェイマルチアジャスタブルシートにデオドラント機能付のシートファブリック、車速感応型のプログレッシブステアリングなどを取り入れて、快適かつドライビングに集中できる運転空間に仕立てていた。