FEV-II(コンセプトカー) 【1995】

実用十分な航続距離を実現した地球に優しいEV

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地球に優しい次世代モデル、それがEV

 トヨタがハイブリッドシステムを搭載したプリウスのプロトタイプを発表した1995年の第31回モーターショーで、日産はEV(電気自動車)のパーソナルクーペ、FEV-IIを披露する。FEV-IIはファーストカーとして使える実用性の高いEVだった。

 1995年当時、EVは市街地などで限定的に使用するコミューターとして捉えられていた。電池容量の問題があり1充電当たりの航続距離が短かったからである。しかしEVは走行中にCO2をいっさい排出しない地球に優しいゼロエミッションビークルである。モーターと内燃機関を組み合わせたハイブリッドは、たしかに後続距離は長いが、一定レベルのCO2を排出する。EVとハイブリッドのどちらが地球に優しいかと言えば、圧倒的にEVなのだ。日産は早くからEVこそ地球に優しい次世代のクルマのタカチと認識し、精力的な開発に着手していた。その第一弾の完成形がFEV-IIだった。

航続距離200kmの秘密は新開発リチウムイオン電池

 FEV-IIの1充電当たりの航続距離は200km以上(エアコンオフ、10・15モード計測)。一般的なガソリンエンジン車と比較するとまだ短かったが、それでも一般的なクルマの使用状況をカバーするのに十分な航続距離を確保していた。ちなみに2010年に本格販売がはじまる初代リーフは1充電当たりの航続距離が160km(US/LA4モード計測)である。計測方法が異なるとはいえFEV-IIはリーフより長い航続距離を持っていたのだ。

FEV-IIが200kmもの航続距離を実現できたのは、ソニーと共同開発した先進のリチウムイオン電池のおかげだった。高密度・軽量・超寿命というメリットを持つリチウムイオン電池は画期的だった。FEV-IIは100Ah・28.8Vの電池ユニットを床下に12個並べ、従来までのEVでは実現不可能だった航続距離を現実のものにした。駆動モーターも新世代だった。A4サイズのノートと同等の小型サイズながら、最適磁気回路設計により大きな出力トルクを生みだしたのだ。しかも回生によるエネルギー回収をはじめ、さまざまな工夫でエネルギーの無駄を一掃していた。ちなみにモーターはフロントに横置き搭載し、前輪を駆動するFFレイアウトだった。この配置はリーフも同様である。

プリセット機能付きエアコンで快適性も高水準

 FEV-IIはファーストカーとして乗れるEVを目指しただけにドライバビリティの磨き込みと快適性に対する配慮も万全だった。ドライバビリティの面では高効率のベクトル制御を採用した新方式モーター制御コントローラーを採用。ドライバーの意思に忠実なパワーコントロールを実現する。内燃機関と異なるパワー特性を持つモーターを動力源とするEVでは、コントローラーのセッティングが走りのテーストを支配する。FEV-IIはコントローラーのリファインを徹底しドライバーの意思に忠実な走りを実現していた。トップスピードも120km/hと十分なレベルに達していた。快適性の面では省電力設計のエアコンを開発。しかもタイマーかリモコン操作によって、乗車時にあらかじめ快適な希望室温にしておくプリセット機能を組み込んだ。

 スタイリングは2002年に登場する3代目マーチを先取りしたようなモダンで、しかもどこか懐かしさを感じる造形だった。EVだからといっていたずらに先進フォルムを纏うのではなく、時代の半歩先をいくスタイリングにまとめた姿勢にFEV-IIの本物ぶりが現れていた。ちなみにEVのためラジエターグリルはなく、充電用リッドはフロントグリルの右側に配置されていた。ステアリング位置は左でカーペットやシートクロスにはペットボトルなどのリサイクル素材を採用していた。