スカイライン・クーペ 【2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013,2014,2015,2016】

“超魅惑・超洗練・超高性能”を標榜したV36型系スペシャルティ

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次期型スカイライン・クーペに求められるものとは?

 2006年11月に市場デビューを果たした12代目のV36型系スカイラインは、“魅惑・洗練・高性能”を開発コンセプトに据えて完成させた新世代のスポーツセダンだった。では、このモデルをベースとするクーペモデルにはどのような開発テーマを掲げればいいのか−−。最終的に開発陣は、セダンモデルを凌駕する“超魅惑・超洗練・超高性能”の実現を目指すこととした。

 スタイリングに関しては「艶やかで躍動感のあるスタイリングの構築」を主眼に置く。フロント回りはヘッドランプ内側まで絞り込んだフェンダーラインや強い抑揚のあるエンジンフード、精悍な表情かつ質感のあるヘッドランプ、彫刻的な輝きをみせるフロントグリルで構成。サイドスタイルはクーペならではの流れるようなラインと面の美しさを基本に、力強くかつ優雅にカーブするフェンダーやシャープにカットしたシルなどで躍動感を表現。リアビューはショルダーやリアエンドにボリューム感を持たせることで、特徴のあるワイドなシルエットを演出した。ボディサイズは全長4655×全幅1820×全高1390mmで、従来型に比べて15mm長く、5mm幅広く、5mm低いディメンションとした。
 ボディカラーはバイブラントレッドとルナマーレシルバー・チタンパールメタリックの2つの新色のほか、ホワイトパール/ブリリアントシルバー・メタリック/スーパーブラック/ファウンテンブルー・パールメタリック/ストラフィアブルー・パールメタリックという全7タイプから選べた。

 インテリアについては、「走る楽しさに満ちた、高品質で快適な空間の演出」を主要テーマに掲げる。優雅にカーブするラインで構成したドアトリムは、ドアの大きさを活かしたクーペ専用デザイン。囲まれ感を創出したコクピットと、インパネからドアトリムへとスムーズに流れながら豊かな面を持つアシスト側とで前席周りを構成し、スポーティかつ高品質な居住空間に仕上げた。また、フロントシートはシートバックのサイドを高くしながらクッションバネ部を連結し、運動性能から求められる高いホールド性と快適性を両立する。ドライビングポジションに関しても、ステアリング位置調整量の拡大や低ヒール段差化、シートスライド調整量の拡大などを実施した。

 開発陣は装備アイテムにもこだわり、7インチワイド液晶モニターおよびマルチファンクションスイッチやアナログ時計、本アルミ&本革巻きコンビシフトノブ、ファインビジョンメーター、マグネシウム製パドルシフト、ファイングリップタイプ本革巻きステアリングなどを設定する。

意のままに操れる卓越した走行性能を目指して

 シャシーに関しては、V36型系スカイラインで採用した新設計の“FR-Lプラットフォーム”をベースに、よりスポーティで快適な走りを生み出すよう、専用チューニングを施す。サスペンションはフロントがアルミ高真空ダイカスト一体構造メンバーやアルミ高強度鍛造材リンクを設置したダブルウイッシュボーン式、リアがアルミ摩擦圧接工法のラジアスロッドにアルミ材料高強度化を図ったロワリンクなどを組み込むマルチリンク式を採用。またダンパーには、欧州ワインディングシーンなどでの走り込みによって4輪ストローク変化を徹底的に分析することで減衰力特性を最適化したデュアルフローパスショックアブソーバーを装着する。ほかにも、4輪アクティブステア(4WAS)やビークルダイナミクスコントロール(VDC)、車速感応式油圧パワーステアリング、4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキ、インテリジェントクルーズコントロール(低速追従機能付)、バイキセノンヘッドランプ+アクティブAFSなどの先進機構を設定した。

 搭載エンジンについては、新開発のVQ37VHR型3696cc・V6DOHCを搭載する。VQ37VHR型は既存のVQ35HR型ユニットに対して、VVEL(バルブ作動角・リフト量連続可変システム)や専用ピストンなど約35%の部品を新規に盛り込み、その上で左右完全対称の吸排気システムを採用して吸入空気量の増大と排気抵抗の低減を達成した。パワー&トルクは333ps/7000rpm、37.0kg・m/5200rpmを発生。VVEL等による俊敏なレスポンスと伸びのある加速を実現しながら、2400rpmから7000rpmの広範囲で最大トルクの90%を発揮する柔軟性も兼ね備える。さらにエミッション面でも、V36型系スカイラインと同等の10・15モード走行燃費や「平成17年度基準排出ガス75%低減レベル(SU-LEV)」適合を成し遂げた。組み合わせるミッションは、1〜3速のトリプルコーンシンクロやショートストローク設計を採用した6速MTとアダプティブシフトコントロール(ASC)+DSモード付フルレンジ電子制御5速AT(パドルシフト付)を設定する。

キャッチフレーズは「日本に、クーペのときめきを」

 新しいスカイライン・クーペは、まず北米市場版のインフィニティG37クーペが先行デビューし、2007年10月よりCKV36の型式をつけて日本での販売を開始する。キャッチフレーズは「日本に、クーペのときめきを」。RV車が主流を占める日本市場に、クーペモデルの素晴らしさを再認識させることが狙いだった。グレード展開は上位から370GT Type SP/370GT Type S/370GT Type P/370GTをラインアップ。オプションとして、専用チューニングのBOSEサウンドシステムやカーウイングスナビゲーションシステム、サイドブラインドモニター&バックビューモニターを用意した。

 市場に放たれたCKV36型系スカイライン・クーペは、発売後2週間を経過した時点で累計1562台の受注に達し、月販目標200台の約8倍という好調な滑り出しを記録する。走りに関しての評価も高く、とくにVQ37VHR型エンジンの力強い加速性能や専用セッティングの足回りによるロードホールディング性の高さなどが好評を博した。

走りと内外装に磨きをかける改良を実施

 CKV36型系スカイライン・クーペは2008年12月になると、一部改良が実施される。最大の注目点は新開発のマニュアルモード付フルレンジ電子制御7速ATを採用した点で、これにより加速のスムーズさやレスポンスのアップ、さらに環境性能の向上を達成した。また、この回の改良ではクリスタルホワイトパールのボディ色の追加やスクラッチシールドの採用、ウォークインレバー色味およびドアグリップフィニッシャー柄の変更、インテリジェントエアコンシステム/プライバシーガラスの標準設定化なども実施される。

 2010年1月に入ると、内装をメインとしたマイナーチェンジが敢行される。主な変更項目は、コンソールのデザイン(AT車のみ)や本アルミフィニッシャー/本木目フィニッシャーのパターンおよび色味、メーター内の車両情報ディスプレイおよび指針の照明色(白色)、スピードメーターおよびタコメーターのフォント(正体)など。さらに、カーウイングスナビゲーションシステムの標準装備化やインテリジェントクルーズコントロールの作動車速範囲の拡大(停止〜約100km/h)も実施する。グレード展開の一部見直しも図り、廉価グレードとして装備を簡略化した370GT Aパッケージを設定した。
 スポーツクーペ本来のスタイリングの艶やかさや走りの高性能を市場にアピールし、ユーザーから高い評価を受けたCKV36型系スカイライン・クーペは、スカイラインの長い歴史の中でも、魅力的な1台である。