パジェロiO 【1998,1999,2000,2001,2002,20032004.2005.2006,2007】

専用ボディ&シャシーに刷新したパジェロ兄弟の次男坊

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専用シャシーのコンパクトSUVの開発

 トヨタ自動車のRAV4やホンダのCR-Vなど、小型車クラスのライト級SUVが高い人気を集めていた1990年代中盤の日本の自動車市場。このカテゴリーにパジェロ・ジュニアという、軽自動車のパジェロ・ミニをベースとした小型SUVを送り込んでいた三菱自動車工業は、次期型を企画するうえでひとつの方針を打ち出す。既存のジュニアの最大の欠点、すなわち軽自動車をベースとするがゆえのデメリットである室内空間の狭さやホイールベースの短さなどを徹底して解消することだった。

 目的達成のために、開発陣は専用ボディおよびシャシーを新設計する。基本骨格はフレームをビルトインしたモノコックボディに仕立て、同時に全方位衝突安全構造のRISEを採用。ボディタイプはホイールベース2280mmの3ドアと同2450mmの5ドアを設定した。シャシーはフロントにマクファーソンストラット/コイル、リアに5リンク/コイルのサスペンションをセット。さらに、トレッドの拡大や幅広で大径の215/70R16タイヤの装着などを実施した。

“Just my size”を謳って市場デビュー

 三菱自工の新世代小型SUVは、「パジェロ・イオ(iO=イタリア語で“僕”“私”の意味)」の車名で1998年6月にまず3ドア仕様が市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“Just my size”。コンパクトで扱いやすく、しかも充分なキャビンスペースを備えた新世代のオールラウンドSUVであることをこのコピーで主張していた。

 エクステリアは、シンプルな線と面を基調にロールバーキャビン仕立てのアッパーボディとブリスター形状のフェンダーによる安定感のあるフォルム、スポーティ感を強調するカラーキーのフロントグリルとクリアなノーカットレンズのヘッドランプを組み合わせたフロントビュー、フレームレス化したバックドアウィンドウを持つリアセクションによって、パジェロ譲りのダイナミックなルックスを構築する。また、アプローチアングル34度、デパーチャーアングル47度、最低地上高205mmを確保して優れたオフロード走破性を実現した。インテリアについては、ワイドで上質なインパネに新鮮なカラーメーター、操作性および視認性に優れるセンターパネル、成形タイプのドアパネルなどを配して機能的なキャビンを実現。シートは運転席に無段階ハイトアジャスト機構を、後席にリクライニング付スプリットタイプを装備した。

 搭載エンジンは筒内噴射ガソリンユニットの4G93(GDI)型1834cc直列4気筒DOHC16V(130ps/18.5kg・m)で、トランスミッションには4速ATを採用。駆動システムには軽量・小型化を図った新開発のビスカスカップリング式4WDのスーパーセレクト4WD-i(SS4-i)を導入した。

魅力度を引き上げる改良を積極的に実施

発売後1カ月の受注が月販目標2200台の2.5倍を超える5800台に達するなど、好調なスタートを切ったパジェロ・イオは、1998年8月になると待望の5ドアを発売する。3ドア比で全長+300mm、ホイールベース+170mmとして広いキャビン空間とラゲッジスペースを確保した5ドアは、実用性に優れる小型SUVとしてファミリー層を中心に高い人気を獲得。また、イタリアの有名カロッツェリアのピニンファリーナが基本デザインを手がけた「ソレント」は、専用のツートンボディカラーやクロームメッキを施した縦桟グリル、光輝タイプのルーフレール、イタリア製のシート生地などを採用し、おしゃれで小粋なSUVとして熱い視線を集めた。ちなみに、ピニンファリーナは欧州向けのパジェロ・イオ=Pajero Pininの生産も担当した。

 5ドアの追加によってセールスに勢いが増したパジェロ・イオは、精力的に車種改良を実施していく。1999年8月には、全車のエアコンをフルオート化したほか、上級グレードのZR-Sや2WD車を追加設定。2000年6月にはマイナーチェンジを行い、搭載エンジンの4G94(GDI)型1999cc直列4気筒DOHC16V(136ps/19.5kg・m)への換装や衝突安全性の強化、内外装デザインの一部変更などを実施する。翌7月には、“GDIターボ”エンジンの4G93(GDI)型1834cc直列4気筒DOHC16Vターボ(160ps/22.4kg・m)を搭載するTRグレードを追加。2002年9月には車種設定を5ドアの4WDモデルに絞り、またECI-MULTIの4G93型1834cc直列4気筒OHC16Vエンジン(116ps/16.3kg・m)を搭載する仕様をラインアップに加えた。

 その後も車種展開の縮小などを経ながら販売を継続したパジェロ・イオだったが、2007年6月にはついに日本での生産を終了。後継モデルは設定されず、1代限りで姿を消したのである。