カペラ 【1987,1988,1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

欧州調のクリーンスタイルを採用した第5世代

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先進技術を積極採用した第5世代カペラの開発

 車両レイアウトをパッケージ効率に優れるFF方式に一新し、1982年9月にデビューした第4世代のGC型系マツダ・カペラ。当初は好調なセールスを記録したものの、クルマのハイテク化が急速に進展した1980年代中盤に差し掛かると、市場における同車の存在感は徐々に薄れつつあった。次期型カペラには、他社にはないハイテク機構を積極的に組み込む必要がある−−。そう判断したマツダの開発陣は、走行性能に磨きをかける先進システムを精力的に企画していく。さらに、ボディタイプや内外装の演出にも徹底して工夫を凝らした。

 基本骨格については、入念なモーダル解析(動きの中でのボディ変形の分析)を行ったうえで新設計したスーパーモノコックボディを採用する。ホイールベースは従来比で65mm延長(2575mm)して居住空間を拡大。また、前後トレッドも広げて走行安定性を向上させた。ほかにも、騒音と振動の抑制を狙った新素材の2重構造遮音材や3点から4点に増やしたエンジンマウントおよびオイル封入マウントなどを設定する。懸架機構には専用セッティングの4輪ストラットを基本に、コーナリング時に後輪の台形リンクがトーアウトを打ち消す“SS(Self Stabilizing)サスペンション”をセット。上級モデルには舵を切るフロントタイヤに対してリアタイヤを電子制御で同・逆位相に動かし、高速安定性(同位相)と小回り(逆位相)の両方を高める“車速感応型4WS(4 Wheel Steering)”を設定する。また、工場出荷時に当たっては4WSの全数を検査する体制を整えた。

スーパーチャージド・ディーゼル新登場。ガソリン仕様も改良

 搭載エンジンにも新機構を組み込んだ。従来型に採用して好評を博していたRF型1998cc直列4気筒OHCディーゼルには、量産エンジン初のコンプレックス型スーパーチャージャー=PWS(プレッシャー・ウェーブ・スーパーチャージャー)の過給器を装着。82ps/18.5kg・mにまで出力アップすると同時に、従来のディーゼルエンジンにはなかった回転のスムーズさと力強いパワーの盛り上がりを実現する。

 ガソリンエンジンについても、可変慣性吸気システムのVICS(バリアブル・イナーシャ・チャージング・システム)を採用したFE型1998cc直列4気筒DOHC16V(140ps/17.5kg・m)やTICS(トリプルポート・インダクション・コントロール・システム)を組み込んだF8型1789cc直列4気筒OHC12V(EGI仕様97ps/14.6kg・m、キャブレター仕様82ps/13.6kg・m)、熟成を図ったB6型1597cc直列4気筒OHC(73ps/12.4kg・m)を設定した。トランスミッションには5速MTと4速AT(上位モデルはEC-AT)をラインアップ。駆動機構にはFFのほか、プラネタリーギアードセンターデフとリアビスカスLSDを組み合わせるフルタイム4WDを採用した。

風が磨いた先進のエアロフォルム

 エクステリアに関しては、滑らかな曲線を多用した欧州調のスタイリッシュなデザインで構成する。空力特性も重視し、国産車初のインナーサッシュドアを採用するなど優れたフラッシュサーフェスボディを実現した。ボディタイプは6ライトウィンドウを組み込んだ5ドアハッチバックと4ドアセダン、スポーティな2ドアクーペを用意。また、時期を遅らせて発売する5ドアワゴン/バンの開発も着々と進めた。

 インテリアについては、外装と同様にラウンディッシュな造形のインパネやドアパネルなどを採用して上質かつスポーティなデザインで仕立てる。また、新装備として電子制御車速感応式パワーステリアングや電動式のスイングルーバーなどを設定した。シートの演出にも凝り、グレードごとにラグジュアリー/高級ルースクッション/スポーティといった仕様を用意する。ワゴンについては5名乗りの2列式シートのほかに、格納式サードシート(進行方向とは逆向きに着座)をラゲッジ部に備えた7名乗りをラインアップした。

第5世代はワイドバリエーションで市場デビュー

 第5世代となるカペラは、GDの型式を付けて1987年5月に市場デビューを果たす。当初のボディタイプは3種類で、市販時は5ドアハッチバックがCG(City Gearの略)、2ドアクーペがC2(Composite Coupeの略)のネーミングを冠した。注目の新メカである4WSは、CGのFE型エンジンの搭載モデルに装着車が用意される。また、上位グレードには電子制御サスペンション(A.A.S.)も設定した。

 市場に放たれたGD型系カペラは“ベーシック&アドバンス”のキャッチフレーズの下、斬新なメカニズムやヨーロッパ調のスタイリッシュなルックスなどで好評を博す。4WSの走りに関しては、コーナリング中にややクセの強い動きが出たものの、その先進的な走りは大きな注目を集めた。

欧州市場では「Mazda 626」として人気モデルに発展

 マツダの新世代ミディアム車として市場から認知されたGD型系カペラは、デビュー後も着々と進化する。
 1988年2月にはC2やセダンにも4WS装着車をラインアップ。同年3月には、ステーションワゴン/バン仕様のGV型系カペラ・カーゴを追加設定し、アウトドア志向のユーザーの人気を獲得する。同年6月にはC2をベースにチューンアップを図った「∞(アンフィニ)」を300台限定でリリースした。1989年6月にはマイナーチェンジを実施。FE型エンジンは使用燃料のハイオク化および圧縮比の引き上げ(9.2→10.0)を行い、パワー&トルクがMT150ps/18.8kg・m、AT145ps/19.0kg・mへとアップし、F8型エンジンはDOHC16Vヘッドやシーケンシャルインジェクションの採用などによってパワー&トルクが115ps/16.0kg・mへと向上した。

 国内市場で意欲的に改良を施す一方、5代目カペラは海外マーケットでも重要な役割を果たした。アメリカでは竣工したばかりのMMUC(マツダ・モーター・マニュファクチャリング・USA・コーポレーション。現AAI=オート・アライアンス・インターナショナル)でカペラC2=「MX-6」を生産し、市場での売れ行きも好調に推移する。また欧州市場、とくに西ドイツ(現ドイツ)ではカペラ=「Mazda 626」がミディアムクラスの人気モデルに成長。アウトモーター・ウント・シュポルト(auto motor und sport)誌が行った読者が選ぶインポート・カー・オブ・ザ・イヤーでは連続選出され、これに驚いた日本の販社らがツアーを組んで現地に赴き、ドイツの道を走るカペラの多さに感心したというエピソードが残っている。

日本では市場のRV人気に即してカーゴのみの設定に−−

 1990年10月になると、市場の高性能4WDワゴン人気に即したカーゴGT-4WDを設定する。FE型エンジンにセンターデフ&リアビスカスLSD式のフルタイム4WD、セッティングを見直した4輪ストラットサスペンション、フルカラーのバンパーおよびブラック塗装のウィンドウモール、バケットタイプのフロントシートなどを組み込んだハイパフォーマンス版のGT-4WDは、リゾート型スポーティワゴンとしてRV志向のユーザーから好評を博した。

 その後も特別仕様車の発売などを敢行した5代目カペラだったが、1991年10月になると車種ラインアップの大変更が行われる。マツダの販売網の拡大および同クラスの新型車の増強(クロノス/アンフィニMS-6/MX-6など)により、GD型系カペラのCG/C2/セダンがカタログから外れたのである。残ったのは、当時大ブームに発展していたステーションワゴン人気に対応するためのGV型系カペラ・カーゴだけだった。

セダンの復活とカーゴの改称を経て長寿命車に

 1994年8月になると、バブル景気崩壊後のマツダの車種戦略の見直しによってカペラのセダン(CG型系)が復活する。一方、カーゴに関しては従来型を継続生産。1994年10月にはマイナーチェンジを実施し、車名を「カペラ・ワゴン」に改称する。そして、カペラ・シリーズ全体がフルモデルチェンジする1997年11月まで、細かな改良を加えながら販売が続けられた。

 1980年代終盤から1990年代初頭にかけてのマツダの躍進を支え、欧州市場でも“Mazda”ブランドの知名度を大いに高めた第5世代のカペラおよび626。その存在意義は、いまもなおマツダ史に燦然と輝いているのである。