歴代フェアレディ研究 【1960~2010】

オープンスポーツから快適GTスポーツに変身、そして進化

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当初は実用車のシャシーにオープンボディを架装

 日産だけでなく日本の宝物であるフェアレディは、スポーツカーとは夢を育む存在であるという事実を教えてくれる名車だ。フェアレディの前身は1952年に実用車のシャシーにスポーティなボディを架装したダットサン・スポーツDC-3型。エンジンは860cc(20ps)と非力でパフォーマンスはとても俊足とは言えなかったが、この時代にスポーツカールックのDC-3型を送り出したこと事態がニュースだった。日産のエンジニアにスポーツカーの心が分かるマニアが存在したことのなによりの証明である。

 その後、FRP製ボディを纏ったダットサン・スポーツS211型を経て、1960年に初代フェアレディとなるSPL212型がデビューする。SPL212型も実用車のシャシーにオープンボディを組み合わせたクルマで、いわばムード派だった。しかし1961年には1189ccユニットの最高出力を48psから60psに増強し走りを磨き上げる。ほとんどがアメリカ市場に輸出され、その1台は1962年4月にラスベガスで行われたUSSC(ユナイテッド・ステイツ・スポーツカー・クラブ)のレース・女性部門で見事に優勝を飾った。

本格スポーツに進化したSP310型の功績

 フェアレディが本格スポーツカーへと進化するのは1961年秋のこと。東京モーターショーに姿を現したSP310型は、低くスマートなオープンボディとパワフルな1488ccユニットで来場者を魅了する。翌1962年4月のニューヨークショーにも出品されアメリカでも大好評を博した。万を持して1962年10月に市販を開始したSP310型は国内外で好調な販売をマークし、フェアレディの名声を一挙に高めた。

レースでの活躍ぶりも印象的だった。1963年5月に鈴鹿サーキットで開催された第1回日本グランプリ(国内スポーツカー/1300〜2500ccクラス)では、トライアンフTR3&4、MGB、ポルシェ356などの強豪を寄せ付けず総合優勝を飾る。アメリカでもボブ・シャープの手でSCCA(スポーツカー・クラブ・オブ・アメリカ)のナショナルレースで優勝6回、2位と3位に2回、5位と6位に1回入り、Gクラスのナショナルチャンピオンをもぎ取った。

 SP310型の1488エンジンは当初71psのシングルキャブレター仕様だったが、1963年6月に80psのツインキャブレター仕様にリファイン。トップスピードは155km/hに達した。1965年5月にはシルビアのパワートレーンを採用した1600(SP311型)に進化。最高出力は90psに達し、トップスピードは165km/hを楽々とマークする。フェアレディの熟成はその後も積極的だった。1967年3月にはトップスピード205km/hを誇る究極のSR311型が登場する。SR311型は高度にチューンアップした1982ccの直列4気筒エンジンを搭載。145psの最高出力と5速ミッションの組み合わせで圧倒的な速さを誇った。パフォーマンスは世界の2シーターオープンのなかでクラストップに達していた。走り味はスパルタンで乗りこなすのには相応のテクニックを必要としたが、それだけ味わいの深い生粋の駿馬だった。

スポーツカーの新時代を切り開いたZ-CAR!

 SR311型でスポーツカー=オープン2シーターだった時代の究極を具現化したフェアレディは、自ら次世代のスポーツカー像を創造する。速く、快適でスタイリッシュなブランニューモデル、フェアレディZである。フェアレディZの開発にあたっては当時アメリカ日産のトップだった片山豊氏のアドバイスが大きな力となった。生粋のカーガイでありスポーツカーをこよなく愛する片山氏は、スポーツカーはレーシングカーとツーリングカーの中間に位置するもので、日常の足に仕える実用性とレーシングカーに近い性能を持つスタイリッシュなGTスポーツが理想である、という考え方を持っていた。フェアレディZは片山氏の想いを見事に実現した傑作だった。

 1969年10月にデビューした初代フェアレディZ(S30型)は、印象的なロングノーズのクローズドボディを持ち、心臓部はパワフル&スムーズな直列6気筒。精悍で快適な室内空間を持つ斬新なGTスポーツだった。輸出仕様240Zのパフォーマンスはポルシェ911に匹敵し、しかも価格はポルシェの半額以下の3256ドル(米国仕様)とリーズナブルなことも衝撃的だった。

 フェアレディZは、スポーツカーの基準を革新する。速さのためになにかを犠牲にすることが当たり前だった、かつてのスポーツカー像を一挙に過去のものにしたのだ。言うなれば現代のスポーツカーの基礎を築いたエポックモデルなのである。フェアレディZの登場以降、スポーツカーはモダンでスタイリッシュで速く快適なことが基準となった。

 アメリカを中心に世界じゅうで愛されたフェアレディZは1978年に2代目(S130型)、1983年に3代目(Z31型)、1989年に4代目(Z32型)に発展。スポーツカー人気低迷の影響を受け2000年以降、いったん空白期に入るがファンの強い要望に応えて2002年に5代目(Z33型)として復活。さらに2008年には大排気量&コンパクト化で一段とスポーツ性能を磨いた6代目(Z34型)へと発展。2020年秋には次世代モデルを公開した。時代を超えてスポーツカーの魅力を発信し続けるフェアレディは日産を代表する存在である。