トヨタ・カローラスパシオやホンダ・モビリオなど、コンパクトカークラスの3列シート車が注目を集めるなか、リバイバルプランによる経営再建を図っていた日産自動車は、このカテゴリーへの参入を計画する。ベース車として選んだのは、Z11の型式を付けて2002年10月にデビューすることになる2代目キューブ。開発コンセプトには、「コンパクトでありながら実用性の高い3列シート車」と掲げた。

　新開発3列シート車は、基本骨格に日産とルノーとで共同開発したBプラットフォームを使用し、キューブ比でホイールベースを170mm延長（2600mm）したロングボディを構築する。ロングといっても、ボディ長は4mを切る3900mmに抑え、日常域での使い勝手に配慮。また、サードシートへのアクセスを高める目的で、リアドア開口部を拡大した。パワートレインには低燃費／低排出ガス／高出力＆高トルク／低騒音／軽量コンパクトなどを高次元でバランスさせたCR14DE型1386cc直列4気筒DOHC16Vエンジン（98ps／14.0kg・m）と、電子制御4速AT（E-ATx）またはエクストロニックCVT-M6（6速マニュアルモード付き無段変速機）のトランスミッションを搭載。駆動レイアウトはFFの1タイプに絞った。

　エクステリアは、キューブと同様の“NEW CUBIC DESIGN”の考えのもと、温かさや柔らかさ、そして質感を表現する。フォルムはカドを丸めたシカクを基本とし、そのうえで安定感のあるプロポーションを実現。また、前後オーバーハングを可能な限り切り詰め、4.7mという扱いやすい最小回転半径を達成した。

　インテリアは、「使って楽しい機能的なデザイン」を念頭に開発。キューブの特徴であるソファーのようなシートにより快適性を追求した。2/3/2名掛けのシートは、前席は格納式アームレストを組み込んだベンチタイプ、2列目はリクライニング機構およびスライド機構、分割式ダブルフォールディング機構、格納式アームレストを装備、3列目には一体可倒機構を内蔵した。シートアレンジは多彩で、フルラゲッジモード／ハーフラゲッジモード／セカンドシートアクセスモード／オットマンモードなどを設定した。安全装備としては、運転席・助手席SRSエアバッグやアクティブヘッドレスト、EBD付ABS、ブレーキアシストを標準で、運転席・助手席SRSサイドエアバッグおよびカーテンエアバッグをオプションで採用した。

　7名乗りのロングボディ版キューブは、「キューブ・キュービック（cube3）」の車名で2003年9月に発売される。車名のキュービック（cube3）は、cubeの持つスペース効率の良さをさらに進化させ、より広い室内とより幅広い空間の使い方を実現したことを体積・容積を示す単位の「立方=3乗」（英語でキュービック）で表現。さらに「3」という数字は3列シート車であることも意味していた。キャッチフレーズはシート配列を強調して“sofa×sofa×sofa”と冠する。車種展開は標準グレードのSXと上級バーションのEXという2タイプで構成し、どちらでもATとCVTのトランスミッションが選択可能だった。

　キューブ・キュービックは、利便性に優れる3列式シートや広くて使いやすい室内空間、そしてオシャレな内外装の演出などが、とくに若いファミリー層から好評を博し、順調に受注を伸ばしていく。人気に応え、開発陣は精力的に改良や車種ラインアップの強化を実施していった。

　2003年12月には、オーテックジャパンが手がけた特別仕様車のキューブ・キュービック「トラビス」がデビュー。“週末の行動範囲をさらに広げるトレッキング・ボックス”をコンセプトとしたSUVテイストあふれる内外装の演出が脚光を浴びる。2004年5月には、英国系ブランドのCONRAN（コンラン）グループとコラボレートした期間限定車の「＋CONRAN」を発表。同年8月には専用フロントバンパー＆グリルや専用カーボンブラック内装色などを採用した「Agiactive」（アジャクティブ）をリリースした。

　2005年5月になると、キューブ・シリーズ全体のマイナーチェンジが実施される。最大の注目点はHR15DE型1498cc直列4気筒DOHC16Vエンジン（109ps／15.1kg・m）搭載車を追加したことで、これにより走りの余裕がいっそうアップ。また、e・4WD車を追加し、とくに降雪地帯などで受注を増やした。2007年1月には、環境性能を改良したグリーン税制適合車種を設定。合わせて、内外装の一部意匠を変更した。
　2008年11月になると、キューブがモデルチェンジし第3世代のZ12型系に移行する。これに伴い、キューブ・キュービックの販売は終了。日産製のコンパクト3列シート車は1代限りで姿を消すこととなった。