グランドファミリア 【1971,1972,1973,1974,1975,1976】
マツダのレシプロ搭載車代表
1970年代に入って、マツダは高性能をセールスポイントにしたロータリー・エンジン車を主力モデルに位置づける。しかし、その高性能と引き換えに、燃費の悪さもクローズアップする。当時は迫力たっぷりのスタイリングは好むが、手に余る高性能と燃費の悪さはどうも……と言うユーザーが結構多かったのだ。マツダとしても、レシプロエンジン開発を軽々に中止するわけには行かなかった。
1971年9月に発売された「グランドファミリア」は、同時に発売されたロータリー・エンジン搭載のスポーツシリーズである「サバンナ」のレシプロエンジン仕様であった。ボディバリェーションは2ドアクーペと4ドアセダン、5ドアバンの3種。搭載されるエンジンは、「プレスト1300」にも搭載されていた水冷直列4気筒SOHCの排気量1272ccのユニットで、最高出力87ps/6000rpm、最大トルク11.0kg・m/3500rpmと標準的なもの。充実した装備と豊かな居住性が特徴で、走りもなかなか良かった。
基本的なボディースタイリングは、「サバンナ」と同一で、フロント・エンドとリア・エンドのデザインを変更して特長を出していた。例えば、フロント部分ではヘッドライトを角形2灯式(サバンナは丸型4灯)とし、グリルの形状を変更、エンブレムも専用としマイルド基調に仕上げてある。リア部分はテールライトの形状を角形に変更しクロームメッキのトリミングを変えていた。
レシプロエンジンを搭載した「グランドファミリア」は、表現は悪いが、ロータリーエンジン搭載のモデルに対する保険として併売されていたイメージが強かった。しかし、この手法は当時のマツダのほとんどのモデルで用いられていた。「ファミリア・ロータリークーペ」に対する「ファミリア・プレスト1300クーペ」、「カペラ・ロータリー」に対しては「カペラ1600」を用意していたのである。マーケットに対しての用意周到なモデル展開は、やがて1970年代初頭に起こったオイル・ショックに端を発する、販売不振の絶望的な状況に際し、屋台骨を支え会社存続の危機を見事に乗り越えることにつながる。ヒステリックな省エネルギーの波がマツダを襲い、燃費の悪さ故のロータリーエンジン・クライシスとも言うべき状況で、レシプロエンジン車は健闘しマツダ・ブランドを見事に守ったのである。