リーフ 【2017〜】

自動運転技術の進化や航続距離のアップを果たした第2世代

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次世代EVの方向性を示すコンセプトカーを披露

 地球温暖化の主要因とされるCO2の排出量削減は、世界中の自動車業界が取り組まなければならない緊急課題となっている。その具体策として日産自動車は、ゼロエミッションビークル(ZERO EMISSION Vehicle)となる電気自動車(EV)の研究・開発を推進。2010年12月には、初の量産型EVとなる「リーフ」を発売した。今後、EVは間違いなく自動車の主流になる。さらに、次世代の自動車のあるべき姿として自動運転技術のレベルアップも欠かせない要素だ−−そういう結論を導き出した日産の開発陣は、EVの進化と同時に自動運転技術の高規格化に注力する。そして、2015年10月開催の第44回東京モーターショーにおいて、次期型リーフの方向性を示す「IDSコンセプト」を発表した。

 IDSコンセプトには、日産が目指す自動運転コンセプトの“ニッサンインテリジェントドライビング”が目一杯に盛り込まれていた。フルカーボン製のボディは軽量化と同時に空力特性を徹底追求。パワートレインには60kWhという大容量のリチウムイオン電池を搭載し、空力ボディの採用などと合わせて一充電走行距離の引き上げを成し遂げる。一方で自動運転技術については、ドライバーの意思に応じて室内全体が“マニュアルドライブ(MD)モード”または“パイロットドライブ(PD)モード”にトランスフォームする新機構を設定。最先端のセンサーとAI技術を用いた各種電動アシストシステムを装備した。

 IDSコンセプトで示されたEVと自動運転技術のコンセプトは、ショーデビュー後も開発現場で着実に改良を重ねていき、やがて日産の新ブランド戦略“ニッサンインテリジェントモビリティ”の骨格に位置づけられる。そして、同戦略のイメージリーダーとして次期型リーフを据え、開発を鋭意推し進めていった。

3カ月半に渡るティーザーキャンペーンを経て2代目を発売

 2017年6月になると、日産は2代目となる新型リーフのティーザーキャンペーンの開始を発表する。最初にお披露目されたのは、一部のインテリア写真とイメージアニメーション。1週間後には、フロントグリルの写真とともに初公開日を9月6日とアナウンスした。さらに、7月中には自動運転技術の“プロパイロットパーキング”や“e-Pedal”の概要およびイメージアニメーションを公開。8月には“エアロダイナミック”を謳う車両デザインのイメージアニメーションを披露した。

 予定通り、2代目リーフは2017年9月6日に初公開され、10月2日より販売をスタートする。折しも当時は、イギリスやフランス、オランダ、ノルウェー等の欧州政府、中国やインドといったアジア政府などによる内燃機関自動車の将来的な販売停止の発表が相次いでおり、新世代EVである2代目リーフにとっては紛うことなき追い風が吹いていた。

一充電走行距離は400kmにまでアップ

 型式をZE1とした2代目リーフは、基本骨格に従来の進化版であるEV専用プラットフォームと高強度安全ボディを採用する。バッテリーなどの重量物は重心近くに配置し、ヨー慣性モーメントを低減して操縦性を向上。また、電動パワーステアリングシステムにはステアリングアングルセンサーと連動した新制御ロジックを組み込み、同時にステアリングトーションバー剛性を約10%引き上げることで、リニアな操舵感と安心感を達成した。懸架機構は従来と同様に前ストラット/後トーションビームのレイアウトを採用するが、モーターおよびインバーターの出力アップに合わせてセッティングを最適化。また、リア側のバンプストッパーをゴムからウレタンに変更して段差を乗り越えた際の突き上げショックを軽減する。エンジンとブレーキを制御することで上屋の不快な動きを抑制するインテリジェントライドコントロールにも改良を施し、より快適な乗り心地と舵の効きを実現した。

 “ニッサンインテリジェントパワー”を謳うe-パワートレインの動力源には、エネルギー効率を向上させてパワー&トルク値を110kW/320N・mにまで引き上げたEM57型交流同期モーターや最新の制御技術を導入した新型プロセッサーを搭載し、加速性能やアクセルレスポンスの向上を成し遂げる。床下配置のリチウムイオンバッテリーは、バッテリーセル内の単位体積あたりのリチウムイオン高密度化とバッテリーモジュールおよびパックの内部構造の見直しを実施し、サイズを従来と同レベルに抑えながら容量を40kWhへとアップ。航続距離はJC08モード走行で400kmにまで延長した。

Cd値0.28を誇る先進エアロフォルム採用

 エクステリアについては“COOL&TEC”をキーワードに、EVらしい爽快な走りをイメージさせるダイナミックさとともに、クールでハイテック(理性的で高機能)かつスリークなシルエットを構築する。ボディサイズは全長4480×全幅1790×全高1540mmと、従来よりもロング&ワイド化。2700mmのホイールベースは共通で、空気抵抗係数(Cd値)は0.28と優秀な数値を実現した。

 インテリアはくつろぎ感と質感の演出にこだわってデザインする。インパネはグライディングウィング形状で構成し、操作性および機能性を向上させながら広々感や上質感を創出。EVアイコンとして、ブルーに発光するスタータースイッチやスタートアップ動画も装備した。また、スマートオペレーションと称してアドバンスドドライブアシストディスプレイ(7インチTFTカラーディスプレイ)やITモニターをセット。内装色にはエアリーグレーとブラックを用意した。

進化した自動運転技術を精力的に導入

 “ニッサンインテリジェントドライビング”と総称する自動運転技術の積極採用も訴求点で、2代目リーフにはプロパイロット、プロパイロットパーキング、e-Pedalなどが組み込まれる。
 プロパイロットは高速道路における渋滞走行と長時間の巡航走行の2つのシーンでアクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動的に制御し、ドライバーの負担を軽減する新技術で、基本システムは先進の画像処理ソフトウェアを組み込んだ単眼カメラのほか、スロットル制御のECM、ステアリング制御のEPS、ブレーキ制御のVDC、停止保持制御の電動PKB、そしてカメラの情報をもとに各ユニットをコントロールするADAS ECUで構成する。システム作動時は、ドライバーが設定した車速内で先行車両との車間距離を一定に保つよう制御することに加え、車線中央を走行するようにステアリング操作を支援。また、先行車両が停車した場合は、システムが自動的にブレーキをかけて停車、車両が完全に停止した際はドライバーがブレーキを踏むことなく停止状態を保持、先行車両が発進した際はドライバーがレジュームスイッチを押すかアクセルペダルを軽く踏むだけで追従走行を再開、という一連の動作を行った。

 プロパイロットパーキングはアクセル、ブレーキ、ステアリング、シフトチェンジ、さらにパーキングブレーキまで自動で制御する本格的な自動駐車システム。4つの高解像度カメラを用いた高度なリアルタイム画像処理技術と、車両周囲に配置した12個の超音波センサー情報とを組み合わせ、安全で正確な自動駐車を行う。並列、縦列などの多様な駐車シーンや何度も切り返しが必要な場所でもドライバーの代わりに駐車操作を実施し、また周囲の駐車スペースを自動検知するため駐車位置の設定操作も不要。わずか3操作で駐車完了までアシストする革新機構だ。

 e-Pedalはドライバーがブレーキペダルに踏みかえることなく、アクセルペダルを戻した時に一般的なブレーキングと同等の減速(最大0.2G)を発生し、スムーズに車両を停止させ、かつ停止保持することができる先進システムである。この機構によって、ドライバーは減速や停止のためにアクセルとブレーキのペダルを踏みかえる頻度が低減。運転時の疲労感が軽くなり、より運転を楽しむことができるようになった。

 2代目リーフにはほかにもインテリジェント LI(車線逸脱防止支援システム)、LDW(車線逸脱警報)、インテリジェントエマージェンシーブレーキ、BSW(後側方車両検知警報)、進入禁止標識検知、RCTA(後退時車両検知警報)、インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付)、踏み間違い衝突防止アシストなどの先進安全装備を設定する。さらに、ドライバーと車両、コミュニティをつないで新しい価値を生み出す“ニッサンインテリジェントインテグレーション”も搭載可能とした。

市販開始からいきなり出荷停止の困難

 上位からG、X、Sという3グレード構成で展開した2代目リーフは、発表から2週間ほどで4000台を超える受注を記録するなど、好調なスタートを切る。販売増を目指して日産社内では生産体制の強化も計画されたが、この状況に水をかける事件が発生した。生産工場における完成検査不正問題の発覚だ。事態を収拾するために、リーフは一時出荷を停止。また、ディーラーには受注の一部キャンセルも舞い込んだ。
 出荷を再開したのは2017年11月7日から。日産のブランドイメージ悪化の影響を受けながらも、2代目リーフは他車種に比べて健闘し、10月が出荷停止前までで3629台、11月が1912台、12月が2306台の販売台数を記録した。

 新世代EVのイメージ回復を狙って、日産はリーフのスペシャルモデルを相次いで発表する。2017年10月開催の第45回東京モーターショーでは、スポーティモデルの「NISMOコンセプト」とEVクロスオーバーコンセプトカーの「NISSAN IMx」を発表。2018年1月開催の東京オートサロンでは、NISMOコンセプトのほかにGTカーのエッセンスを加えた「Grand Touring Concept」を披露する。また、リーフを活用した充電遠隔実証実験や新交通サービスなども始動。さらに、北米では2018年1月から、欧州では2月から2代目リーフのデリバリーを開始した。
 ニッサンインテリジェントモビリティの取り組みのもと、進化・発展を続ける日産リーフ。EV時代の旗手として、自動車史に名を刻むことが確約された“近未来の国産名車”である。