セルボ 【1977,1978,1979,1980,1981,1982】

機敏さにあふれる小粋な軽ファンクーペ

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基本デザインはG・ジウジアーロ作

 1977年10月、スズキは生産を休止していたフロンテ・クーペを、新しい軽自動車の規格に合わせたひと回り大きなボディを持つ新型車として復活させた。それがセルボである。ちなみに、セルボ(CERVO)とは、イタリア語で「牡鹿」を意味する。エンジンは水冷2サイクル、並列3気筒とスズキ独特のものだが、排気量は拡大され、排気ガス規制も独特の2段型触媒を装備して、53年規制をクリアしている。

 オリジナルがG・ジウジアーロ作と言われるボディスタイルは、旧型フロンテ・クーペのころと大きくは変わらない。しかし、フロントのグリル周りは前方にわずかな張り出しが付けられ、ヘッドライトが円形になるなどの変更が加えられ、クルマとしてのバランスが視覚的にも良くなっている。フロンテ・クーペに比べてボディサイズは、全長で195mm、全幅で100mm、全高で10mm、ホイールベースでは20mmそれぞれ大きくなっている。リアエンジンの軽自動車とは思えない完成度の高いスタイリングといって良い。

スポーツカー的な内装の持ち主

 インテリアは、上質かつスポーティな雰囲気を持っていた。インスツルメンツパネルには独立したメーターナセルがあり、中央に大径の速度計とエンジン回転計を配置、その左右に燃料計と水温計が、さらにコンソール部には電流系と時計が装備される。ステアリングは変形4本スポーク形状。シートは前席がハイバックのバケットシート、後部には+2の緊急用シートがセットされていた。

水準を超えるハンドリングも魅力

 後車軸のさらに後部にオーバーハングして搭載されるエンジンは、排気量が539ccと当時の軽自動車の新基準に適合したもので、水冷2サイクルの並列3気筒。圧縮比7.0とトリプルキャブレターを装備して、28ps/5000rpmの最高出力と5.3kg-m/3000rpmの最大トルクを発揮する。トランスミッションは4速マニュアル、もちろんフロアシフトである。前輪がダブルウィッシュボーンとコイルスプリング、後輪がセミトレーリングアームとコイルスプリングによる4輪独立型で、タイヤはラジアルタイヤ(CXGグレード)が標準装備されるなど、走りの面でもさらにスポーティさを強調していた。

 スズキ・セルボの価格は60万8000円だったが、実際上2人乗りであることを考えれば、割高であったことは否めない。この当時、軽自動車にスペシャルティを求めるユーザーはそれほど多くはおらず、どちらかといえば、軽自動車メーカーであるスズキのイメージリーダーとしての存在が大きかった。しかし、これだけ密度が高くて、しかも魅力的な超小型車は、世界的にも珍しい存在であったことは間違いない。日本的な名車のひとつである。