カペラ 【1978,1979,1980,1981.1981】

欧州基準で仕上げた国際派モデル

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マツダ期待のミドルモデル

 マツダのような中規模メーカーに於いて、一つのモデルの寿命は比較的長くなるのが普通だ。モデルチェンジには膨大なコストが掛かるからである。1978年に登場した2代目となる「カペラ」は、当時としても比較的長い4年8ヶ月のモデルライフを持った初代からバトンタッチされた期待のモデルだった。
 当時のマツダはパワープラントとして、ロータリー・エンジンと通常のレシプロ・エンジンをともに主力ユニットとして据えていた。そんな影響で極力車種を少なくして生産効率を上げる必要があった。新型となった「カペラ」は、ベーシックモデルである「ファミリア」と高級車である「ルーチェ」&「コスモ」の中間に位置するモデルであり、1.5リッターから1.8リッターの最も販売競争の激烈なクラスを幅広くカバーする車種であった。生産やサービスにコストのかかるロータリー・エンジンを採用せず、直列4気筒のレシプロ・エンジンのみを使っていたことは、マツダのコスト意識の表われであったと言える。

欧州市場を意識した光る設計

 モデル・バリェーションは3ボックス・スタイルの4ドアセダンと2ドア・ハードトップの二車種で、ワゴンやハッチバックの設定は無かった。スタイリングは、クロームメッキの飾り物や無用なアクセントを廃したヨーロッパ調の落ち着いた雰囲気を持つもので、ドイツ・フォードのグラナダなどの実用的なヨーロッパ車に近い雰囲気を感じさせる。事実、後にマツダは「マツダ626」の名でヨーロッパへの輸出を本格化させ、販売網の充実と共にヨーロッパでも高い評価を受けることになる。

 ボディ・サイズはホイールベース2510mm、全長4305mm、全幅1660mm、全高1380mmで、ライバルたちに比べても十分なアピアランスを持っていた。とくに幅を広めにしワイドトレッドに仕上げた点がポイントだった。スタイリングはこの時期のマツダ車に共通するスラントしたフロントエンドと直線を基調としたシンプルなものだ。一目でマツダのクルマだと分かるアイディンティティを持っているのは流石で、デザイナーの力量の確かさを示すものだ。
 駆動方式はコンベンショナルなフロント・エンジン、リア・ドライブ。サスペンションも前がマクファーソン・ストラット/コイル・スプリング、後がダブル・トレーリングアーム/コイル・スプリングと一般的な組み合わせである。しかし徹底した走行テストにより優れたステアリング特性とロードホールディングを獲得していた。いわば“足のいい”クルマだったのだ。

全身が合理主義の名車

 エンジンは2種でいずれも水冷直列4気筒SOHCを採用していた。排気量は1586cc(出力90ps/5700rpm、トルク13.0kg・m/3500rpm)と1769cc(100ps/5500rpm、15.2kg・m/3300rpm)がある。トランスミッションは4速(セダン&1600ハードトップ)および5速(1800ハードトップ)のフルシンクロ付きが標準装備され、3速オートマチックはセダンにオプション設定されていた。室内も国産のファミリーカーとしては上質な造りが特徴で、特に後部座席のシートバックは当時の国産車としては珍しい6対4の分割可倒式で、トランクスペース(セダン331L)と一体化することが出来、ワゴンに準ずる大きな積載スペースを生み出すことが可能となっていた。
 「カペラ」は、「RX—7」譲りのスポーツカー的な足回りと強力なブレーキを備え、高度で洗練されたハンドリングで人気を集めた。ヨーロッパでのマツダの評価は、このクルマで決定的となった。隠れた名車である。