日本カー・オブ・ザ・イヤーの歴史05 【1994,1995,1996,1997】

先進技術で世界をリードする日本車



心躍るクーペがイヤーカー獲得

 心躍るクルマの条件は、スタイリッシュなスタイリングとパフォーマンス、そして先進のメカニズムというのが一時代前の常識だった。最近はミニバンに代表される多機能ぶりと、経済性がもてはやされているが、かつてはスポーティなクルマが注目の的だった。

 1995-96年日本カーオブザイヤーに輝いた三菱FTOは、いわばラストヒーローだった。FTOは、1973年に登場したコンパクト・スペシャルティの復活版である。ひと足先にデビューしていた2代目GTOの弟分的なキャラクターで、メカニズムは当時のランサーがベース。セリカやシルビア、プレリュードといったクルマのライバルとして誕生した。実は1994年は、すでにスペシャルティクーペの市場規模が大幅にシュリンキングしていた。そんな中で FTOを送り出した三菱の狙いは、絶対的な販売台数以上に、三菱というメーカー自体のイメージ向上にあった。

FTOは三菱のイメージリーダー!?

 1980年代後半から1990年代の前半にかけ、三菱はパジェロを筆頭に数々のRV(レクリエーションビークル)を送り出し、一躍人気メーカーに躍進する。しかしRVの販売が好調になればなるほど、先進さやスポーティなイメージは希薄になっていく。
 三菱自動車は、もともと先進技術の追求に積極的な企業風土である。経営陣はRVメーカーの色彩が濃くなっていくことを潔しとしなかったらしい。その回答として送り出されたのがFTOだった。

 FTOの先進ぶりはメカニズムからスタイリングまで、すべてに漲っていた。スタイリングは塊感と抑揚を強調した彫刻的なクーペフォルムで。パワーユニットも、自然吸気エンジンとしては当時クラス最強スペックの可変吸気システム付きのV6DOHC24V(200ps)である。しかしなにより強いインパクトを与えたのは先進のトランスミッションだった。

多人数乗車、オデッセイの価値

 INVECS-IIを名乗るFTOの新開発の電子制御4速ATは、マニュアルシフトの俊敏さと、AT本来のイージードライブ性を高度に磨き上げた新システムだった。通常のDレンジでは滑らかなAT走行を約束し、左側にシフトを倒すとドライバーの意志どおりのマニュアルシフトが楽しめた。ポルシェのティプトロニックと思想を同じくするスポーツトランスミッションながら、各種制御は一段と緻密でまさに未来のトランスミッションといえた。FTOが登場する以前からスポーツモデルでもマニュアルミッションは過去のものになりつつあった。しかし流れを決定的にしたのはFTOの功績である。

 FTOは三菱の企業イメージをRV一色から、スポーティなものへと変えるのに大きな効果を発揮した。ただし予想どおり販売成績はさほど芳しくなかった。自動車界全体に与えた影響という意味では、特別賞を受賞したオデッセイのほうが上と言えた。なにしろオデッセイ以降、多人数乗車のミニバンが日本のファミリーカーの基本になったのだから……

クラスレス思想が生んだ新たな価値

 1995-96年のイヤーカーには再びシビック・シリーズが選出された。1991-92年に続く受賞で、モデルチェンジによる進化が認められたカタチとなった。“クラスを超えた高い価値の創造”を目指した5代目シビックの新しさは、経済的なエンジン、それを支えるトランスミッション、そして先進ナビゲーションの3点に要約できた。

 経済的なエンジンは、新開発の3ステージVTEC機構がメイン技術だ。ホンダ独自の可変バルブタイミング・リフト機構であるVTECシステムは、当初はスポーツ性能を高める技術として導入された。だが5代目シビックでは“全域高性能”を実現するメカニズムとして成熟されていた。低回転/中回転/高回転の3つの領域それぞれでバルブタイミングとリフト量を最適に切り替えることで、1.5Lながら130psの最高出力を実現、同時に20km/L(VTi/MT)の実用燃費を実現したのだ。

 トランスミッションは、現代のコンパクトカーの主流となるCVTをいち早く採用。CVTならではの途切れのない滑らかな加速フィールが先進の走りを演出した。通常の4速ATにもファジー制御の変速パターンを組み込み、一段とドライバーの意志に仕上げていた。

本格パッセンジャーカー、テラノの評価

 ナビゲーションにはGPSと自立航法を併用した現在のスタンダード・スタイルをいち早く採用。しかも助手席や後席からも操作が容易なリモコンを備えていた。歴代シビックは、どの世代もライバルを凌駕する高い基本性能と、ニューモデルらしい新しさで人気を獲得したが、5代目も例外ではなかった。シビックに採用された数々の新技術は、いずれも現代に続くコア技術を提案したもので、その先進性が評価されたのである。基本シャシーを共用するCR-Vも10ベストカーに選ばれるなど、この年のホンダは冴えていた。

 ちなみに特別賞は2代目テラノが獲得した。本格SUVながらビルトイン式フレームの採用で、モノコックボディに匹敵する剛性と軽量さを実現。同時に乗用車レベルの快適性を実現したことが評価の理由だった。テラノの受賞はSUVがトラック派生ではなく、本格パッセンジャーカーとして進化していることを証明した。SUVがニッチなクルマではなく、市場のメインストリームとして認識されたのはこの頃からである。