レオーネ 【1984,1985,1986,1987,1988,1989,1990,1991】

飛行機屋の気概あふれる先進モデル

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3代目は航空機設計の伝統を継承

 1984年10月、富士重工(現SUBARU)のレオーネ・シリーズが5年振りにフル・モデルチェンジして「ニュー・レオーネ」となり、第三世代に移行した。オンロード向けの本格的な4WD(4輪駆動)システムを持つ乗用車として、日本のパイオニアとなった1972年8月に登場したレオーネ4WDバンから数えると13年目となる進化モデルである。スバルの大きな特徴となった縦置き水平対向4気筒エンジン、4輪駆動システムなどは旧型からのキャリーオーバーであったが、ボディースタイリングは全面的にチェンジされ、直線を基調としたシャープなものに生まれ変わった。全体としてはボクシーな感じだが、空気抵抗係数Cd値 =0.35と、当時の標準的な4ドアセダンとしては優れた値となっていた。この辺りは、旧・中島飛行機譲りの航空機設計の技術的な伝統を巧みに生かしたところであった。

 搭載されるエンジンは排気量の違いで2種あり、いずれも水平対向4気筒のボクサーユニットである。排気量はOHV仕様の1595ccとOHC仕様の1781ccの2種で、1800系にはターボチャージャー版が設定され、135ps/5600rpmのハイパワーを実現していた。ちなみに、1966年のスバル1000以来の富士重工製の水平対向型ボクサーエンジンは、イタリアのアルファロメオが1972年に発表した前輪駆動の小型車、アルファ・スッドが参考にしたことでも知られている。国際的にもかなり注目されたエンジンだった。

4WDで優れた走りをアピール

 ニュー・レオーネには前輪駆動と4輪駆動の2バリェーションがあったが、主力は当然4輪駆動モデルに置かれていた。ただしこの当時、4輪駆動の有用性については広く知られるまでには至っておらず、4輪駆動化に伴う重量増加と価格的な高騰を嫌うユーザーのために、2輪駆動モデルも併売していた。4輪駆動モデルのシステムが、フルタイム4WDではなく、ドライバーの操作によるパートタイム4WDであったことも時代を物語る。しかし、2輪駆動と4輪駆動の切り替えは、レバー操作ではなくプッシュボタンによる簡単な操作で可能になっている。さらに、オートマチック・トランスミッション装備のモデルでは、ある条件になると自動的に4輪駆動へ切り替えられる装置も加えられた。フルタイム4WDへの過渡期的なシステムとして考案されたものだ。サスペンションも、それまでの縦置きトーションバー方式から、より本格的な前・マクファーソンストラット/コイルスプリング、後・セミトレーリングアーム/コイルスプリングとなり、ブレーキもターボチャージャー・モデルでは4輪ディスク・ブレーキとなった。

使いやすさを徹底した室内

 インテリアも新型となって面目を一新し、セダンの後部座席にはトランクスルー機構が採用し使いやすさを大幅に向上させている。また従来から人気の高かったワゴンボディはさらに使い勝手の磨き込みが行われ、独自のポジションを築くにいたった。新型レオーネはスバルの基幹車種として、確実な進化を遂げていたのだ。凝ったメカニズムを積極的に採用したため車両価格はライバルたちと比べて割高だったが、先進的な4輪駆動システムや水平対向エンジンはそれを補うに十分なものがあった。技術力で自らのプレミアム・イメージを鮮明にするクルマ作りは、ニュー・レオーネで一段と鮮明になったのだ。
 ニュー・レオーネは国際ラリーでも活躍する。190psにチューンアップされたラリー仕様は、4WDによる優れたハンドリングの後押しもあり戦闘力は抜群だった。1986年、87年のサファリ・ラリーではグループA優勝を飾り、その他のWRCでもクラストップ級の速さを見せつけた。とくにニュー・レオーネで活躍したドライバーは後にアジア・パシフィック地区ドライバーズチャンピオンに成長するニュージーランドのP・ボーン選手である。当時は本格ワークス活動ではなかったが、価格の割に高性能なことが評価され多くのプライベーターに支持され、多くのレオーネがラリーを闘った。スバルの積極的なラリー参戦は、この時代の活躍が礎になっている。