ルーチェ 【1986,1987,1988,1989,1990,1991】

ボディ骨格を徹底的に鍛えた5代目

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ハイソカー・ブームのなかで−−

 バブル景気の助走期となる1980年代中盤の日本の自動車市場。国内メーカーは人気上昇中だった高級オーナーカーの開発に力を入れ、後の“ハイソカー”ブームを創出しようとしていた。BD型FFファミリアの大ヒットなどで業績を回復していたマツダは、同社の旗艦モデルであるルーチェの次期型に、この高級化路線の役割を担わせようと計画する−−。
 開発陣は兄弟車であるコスモとの切り離しに着手し、独自の高級車に仕立てる決断を下す。さらに車格としては、トヨタのクラウンとマークII、日産のセドリックとローレルという高級車の2カテゴリーを網羅する車種ラインアップの実現を目指した。具体的には、ボディの大きさやホイールベースはクラウン・クラスに、エンジンバリエーションは新開発の2L・V6(JF型、NAとターボ付き)と既存の2L直4(FF型)のレシプロ、さらに13B型ロータリーを用意して多様なユーザーに対応しようとする。また開発中である3L・V6の搭載も念頭に置き、エンジンルームやシャシーなどに余裕を持たせた。

端正なルックスで勝負

 ロータリーエンジン車の生産累計台数が150万台を突破した約5カ月後の1986年9月、5代目となるHC型系のルーチェが満を持してデビューする。ボディタイプは後のハイソカーの定番となる4ドアHTとオーソドックスな4ドアセダンを設定。グレード展開は最上級仕様となるロイヤルクラシックを筆頭に、上級版のリミテッド、標準仕様のXV-X、ベーシックモデルのSG-Xをラインアップした。

 新型ルーチェには前述したV6エンジンのほかにも、多くの新機構が盛り込まれる。路面状況に応じてダンパー減衰力が自動的に切り替わる電子制御サスペンションのA.A.S.(オート・アジャスティング・サスペンション)、スイングピローを配したパワー調整機構付きセパレート式リアシート、オートライトシステム、電子メーター、フルオートデュアルエアコン(フロント+リア)など、フラッグシップモデルらしい先進のメカニズムを積極的に採用していた。高級車としての乗り味を確保するため、ボディ骨格をしっかりとさせた高剛性ボディを持つこともマツダらしい個性だった。

5代目が最後のルーチェに……

 5代目ルーチェは、デビュー後もその完成度を高めようと様々な車種追加や小規模変更を実施する。
 1987年8月には待望の3L・V6(JE型)モデルを設定し、クラウンやセドリックといったライバル車に対して追撃態勢をとる。1988年9月にはマイナーチェンジを敢行して内外装のイメージを一新。同時に3L・V6をDOHC化し、最高出力は200psにまで引き上がった。1989年3月に入ると人気カテゴリーの4ドアHT車のラインアップを強化し、3000リミテッドに本革仕様とヘリボーン柄ファブリック仕様を設定する。1990年1月には再び内外装の意匠を変更。さらに4ドアHTにリミテッド・グランツーリスモと称する豪華モデルを追加した。

 年を経るに連れてクルマとしての完成度と高級感を増していった5代目ルーチェ。そのキャラクターは中高年層のユーザーやタクシーのドライバーなどからは高い評価を受けたものの、肝心のハイソカー・ファンの支持は低いままだった。
 結果的に5代目ルーチェは、1991年に生産を終了(営業車向けの4ドアセダンは1995年まで生産を継続)し、後継車となるセンティアに跡を譲る。この時点で、「マツダの高級車=ルーチェ」の図式は、惜しまれながら終焉を迎えることになったのである。