セリカ(輸出仕様) 【1970,1971,1972,1973,1974,1975,1976,1977】

トヨタのイメージを刷新した華麗なるスペシャルティ

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


好評を博した初代セリカのアメリカ進出

 アメリカにおけるトヨタのブランドイメージを変えた立役者が初代セリカだった。1970年12月に日本初のスペシャルティカーとして誕生したセリカは、デビュー後すぐにアメリカへの輸出を開始する。セリカは1964年に登場したフォード・マスタングのコンセプトを参考に開発したブランニューモデルだった。メカニカルコンポーネンツは基本的にセダンのカリーナと共通だったが、血縁関係を感じさせない伸びやかでスポーティなスタイリングが自慢だった。まさにスポーツカーの輝きを持った2ドアクーペだった。

 1970年当時のアメリカは、スペシャルティカーの第二次ブームの真っ只中。超人気モデルのフォード・マスタングとシボレー・カマロが第2世代にモデルチェンジしたばかりで、クライスラーからリリースされたダッジ・チャレンジャー、プリムス・バラクーダも高い人気を獲得していた。若者の話題の中心にはスペシャルティカーがつねにあった。スタイリッシュなボディとパワフルなV8モーターを組み合わせたスペシャルティカーは“アメリカン・マッスル”と呼ばれ、強いアメリカを体現したのだ。

 しかしマスタングやカマロなどのアメリカン・スペシャルティは、いささか男っぽく、骨太なクルマでもあった。女性ユーザーやビギナーには手に余る存在だった。スペシャルティカーに強い憧れを抱いているものの、乗りこなせそうにないと二の足を踏んでいた潜在層は少なくなかった。そんなユーザーにとって、初代セリカの登場は朗報だった。

アメリカ仕様はトルクフルな1.8Lユニット搭載

 セリカは美しく未来的なスタイリングと、運転のしやすさを両立したコンパクト・スペシャルティだった。日本ではミドルクラスだったが、アメリカの尺度ではあくまでコンパクトクラス。運転がしやすく手軽な存在に映った。

 アメリカ輸出仕様のセリカは1858ccの直列4気筒OHCエンジン(108ps)を搭載しており、トランスミッションは4速マニュアルが標準だった。足回りはフロントがストラット式、リアは4リンク式と日本仕様と変わらない。スタイリングも日本仕様そのままだったが、日本ではGTグレード専用となるボディストライプが標準装備され、フェンダーミラーがドアミラーへと変更されていた、一段とスタイリッシュさに磨きをかけていたわけだ。アメリカ輸出仕様のグレード名はSTである。

トヨタのイメージを変えたセリカの高い実力

 セリカは、従来の「壊れなくて頑丈だが、まじめ過ぎて遊びゴコロが足りない」というトヨタのイメージを着実に変えていく。そのお洒落なスタイリングと、アメリカン・スペシャルティを凌ぐほどの軽快な走りで「スポーティで斬新」という新たなイメージをユーザーに浸透させたのだ。

 セリカのトップスピードは110mph(176km/h)に達し、89mph(140km/h)で楽々とクルージングが楽しめた。しかもタコメーター、高級オーディオ、木目ステアリング、強制ベンチレーター、ラジアルタイヤ、ディスクブレーキなどの豊富なアクセサリーが標準で装備され、熱線リアウィンドーや3点式シートベルト、衝撃吸収ステアリングなどの安全装備も充実していた。スタイリング、走り、装備の3要素が高い次元で両立した逸材だったのである。

 日本では同時期に登場したフェアレディZのアメリカ仕様、ダットサン240Zの高い人気の影に隠れてしまったため、セリカのアメリカでの躍進はそれほど知られていない。しかしセリカの人気は本物だった。厳しくなった排気ガス対策や安全基準の影響を受け、アメリカン・スペシャルティ各車が急速に販売を落としていくのとは反対に販売台数を増加させ、アメリカ市場でのトヨタの主力モデルの1台に成長した。