センチュリー・ロイヤル 【2006、2007】

2代目となる国産御料車リムジン

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ニッサン・プリンス・ロイヤルの老朽化

 2004年の2月から3月にかけて、皇室の御料車に関する内容がマスコミ界で話題となる。宮内庁に対して、日産自動車が「ニッサン・プリンス・ロイヤル」の行事での使用中止を要請したというのだ。
 ニッサン・プリンス・ロイヤルは1967年にリムジンタイプの御料車として納入されて以来、定期的に整備を受けながら昭和と平成の2世代に渡って皇室に愛用され続けてきた。しかし、さすがの同車も経年変化には勝てず、一部では補修不能な部分も出始める。また、専用部品のストックも底をつきかけ、調達も困難な状況になっていた。もし、重要な行事で故障するようなことがあったら、大変な事態になる−−そんな心配をした日産は、ついに同車の使用中止を申し出たのである。

 後を担うリムジンタイプの御料車は、21世紀に入ってから更新が計画されていた。順当にいけば後継車も日産製になるはずだったが、残念ながら当時の日産には御料車を生産する最適のベース車両がなかった。さらにルノーと合併して経営の再建を図っていたため、御料車の新開発に当てる予算も十分にとれない。結果的に日産は、御料車の納入を辞退する。代わって手を挙げたのが、日本最大の自動車メーカーであり、すでにセダンタイプの御料車(センチュリー)を納入した経験を持つトヨタ自動車だった。

21世紀を担う次期御料車の開発

 新しいリムジンタイプの御料車を企画するに当たり、開発陣はベース車として同社の旗艦である「GZG50型センチュリー」を選択する。ボディサイズは既存の全長5270×全幅1890×全高1475mmから同6155×2050×1780mmにまで拡大。車重は2920kgとなる。搭載エンジンは基本的に1GZ-FE型4996cc・V12DOHCユニットを流用するが、パレードでの長時間低速走行などに備えて様々な改良を施した。また、排出ガスや燃料消費なども最大限に配慮し、低公害仕様に仕立てる。さらに、トラブル等を未然に防ぐために、組立の際にも細心の注意が払われた。

 居住空間に関しては、フロントとリアに3名掛けのベンチシート、後ろ向きに着座する2名分の補助シート(計8名乗り)がレイアウトされる。フロア面はフラットに設計。また、乗降ステップには御影石、天井には和紙葺き、アームレストやパネルには天然木(玄圃梨など)および漆仕上げ、後席シート表地にはウールなどの素材が組み込まれた。室内サイズは長2950×幅1605×高1250mm。従来のプリンス・ロイヤルに比べて、とくに高さ方向の余裕が際立っていた。

宮内庁に4両のロイヤルを納入

 宮内庁はリムジンタイプの次期型御料車を購入するために、まず2005年8月に1台分の5250万円の費用を概算要求に計上する。それが認められ、翌2006年7月になってついにトヨタ製のリムジンタイプの御料車、「センチュリー・ロイヤル」が納入された。
 新しい御料車の導入に際し、当時の宮内庁管理部からは「新御料車について」の事項が公表される。その文面は、「現在の御料車“ニッサン・プリンス・ロイヤル”5両は導入後40年近くを経過し、車両本体の老朽化、部品補充が困難となってきたこと等からその維持が限界に近づいており、運行に支障を来すおそれがあることから、去る7月7日に後継車として新御料車“センチュリー・ロイヤル”(トヨタ)1両を導入しました」というもの。クルマの数え方を“台”ではなく、“両”としているところに、馬車の流れが窺える。ちなみに、御料車を管理する部署は宮内庁管理部“車馬課”の自動車班だ。
 この公表事項では、センチュリー・ロイヤルの今後の納入台数も記載される。その数は、ニッサン・プリンス・ロイヤル時代よりも1両少ない計4両(8名乗り3両/寝台車1両)。その理由について、宮内庁は「国の財政事情が厳しい折から」と説明した。

 “皇1”のナンバーを付けたセンチュリー・ロイヤルは、2006年9月の第165臨時国会開会式ご臨席に当たり、天皇陛下をお乗せして公式デビューを果たす。その後、国賓接遇用の特装センチュリー・ロイヤル(価格は9450万円)も“皇3”“皇5”のナンバーを冠して登場した。
 トヨタ自動車の技術の粋と日本ならではの素材を結集して製造されたリムジンカーのセンチュリー・ロイヤル。今後も国産車の“象徴”として、活躍していくことだろう。