サンバー 【1966,1967,1968,1969,1970,1971,1972,1973】

使いやすさと居住性に磨きをかけた働き者

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ニーズに合わせ荷台が選べたトラック

 SUBARU360ベースのコマーシャルカーとして高い人気を誇ったサンバーは、セダンの360に先駆けて1966年1月に2代目に進化した(360セダンがR2にモデルチェンジしたのは1969年8月)。2代目サンバーは、基本メカニズム面では従来どおりSUBARU360用を踏襲。内外装を一新し使い勝手と居住性をリファインしたのが注目ポイントだった。

 リアエンジン・レイアウトを持つ2代目サンバーのボディバリエーションは、初代と同様にトラックとバンの2種である。トラックは、低床設計が最大の特徴だった。なにしろ荷室地上高はボディサイドでは355mmにすぎないのだ。重い荷物でも積み込みは容易で、しかも荷物積載時も重心が低いので抜群の安定性を誇った。しかしエンジン搭載部分の出っ張りのため、長尺物の積み込みが苦手なことも事実だった。エンジン搭載部分を含んだ荷台長は1765mmもあったのだが、それはフラットスペースではなかったからだ。

 しかし2代目は段差のある荷台スペースというサンバーの弱点を魅力に替えたタイプを用意していた。二段広床式トラックである。荷台フロアをエンジン搭載部分を基準としたフラット形状に仕上げ、その下の荷台中央部にキー付きのロッカーを備えた便利な仕様だ。フラットな荷台までの高さは725mmとやや高めだったが、それでも小型車のトラックと比較すると低く実用的。それ以上に荷台サイドに第二の荷物スペースを確保していたことが魅力だった。第二の荷物スペースは鍵がかかるフタ付きだったから、貴重品の運搬にも重宝した。ユーザーのニーズに応じて2タイプの荷台が選べたサンバー・トラックは初代以上に魅力的な存在だったのである。

フレンドリーで愛らしいスタイルを採用

 平日は仕事の足として重宝し、休日はマルチワゴンとしてドライブに連れ出せるバンも実力がアップしていた。サイドドアの幅が初代より80mmも大きくなり荷物の積み下ろしがいっそう楽になったからだ。荷室スペースそのものも10%拡大していた。ベーシックなスタンダードと、ボディ各部のモール、室内マット、ホーンリング、自動戻り式方向指示器、鍵付き燃料リッドなどを備えたデラックスの2グレードから選べるのは初代と同様。2代目ではデラックスの人気が一段と高くなりバンの主力モデルに成長した。

 2代目サンバーで、最も進化を果たしたポイントはスタイリングだった。機能重視で、いささかプリミティブな印象が強かった初代からイメージを一新。柔らかな曲面で仕上げたフレンドリーな造形は誰からも愛された。スタイリングは、ちょうどフォルクスワーゲン・ビートルのコマーシャルカーであるタイプIIと同様の愛らしさに溢れていた。窓面積が約20%拡大されたメリットで開放感を増したのも好印象を加速した。

ソフトな乗り心地。最高速は85km/h!

 リアオーバーハングに強制空冷方式の356ccの強制空冷2サイクル2気筒エンジンを積み、フロントがトレーリングアーム式、リアがスイングアクスル式の4輪独立サスペンションを持つメカニズムは、基本的に初代譲りだった。エンジンスペックは20ps/5000rpm、3.2kg・m/3000rpm。最高速度はトラックが85km.h、バンは80km/hと当時としても目覚ましいレベルではなかったが、実用上は十分。2代目は初代より80mmもホイールベースが伸びたことで乗り心地、ロードホールディングともにアップしていたのがセールスポイントだった。

 2代目サンバーは1966年11月にバン・デラックスにオーバートップ付き4速ミッション仕様(最高速度85km/h)を追加し、1967年9月にはヒーターを全車に標準装備。1968年11月にエンジン出力を25psにアップし走りを逞しくするなどのリファインを繰り返した。1973年2月に3代目モデルにバトンタッチするまで高い人気を誇ったのは、メーカーが積極的に改良を施し機能をアップデートしていたからだった。

使いやすさ追求から生まれたフラット・トラックの実力

 1968年11月にマイナーチェンジのタイミングでトラックに魅力的な新タイプが登場する。新たなバリエーションとなるフラットだ。フラットはその名のとおり荷台をフラットに仕上げたモデルだった。従来からの二段広床トラックもフラットな荷台を実現していたが、荷台の基準面がエンジンリッドだったため、ライバル各車と比較して荷室地上高が高いのが欠点だった。フラットではエンジンをほぼ90度後方に傾け、水平配置とすることでエンジン高そのものを抑制。ライバルと同等の低い荷室地上高を実現した。2段広床式に設定されていた荷台サイドの荷物スペースこそ失われたが、日常的に大きな荷物を積むユーザーにとってフラットは便利な存在だった。瞬く間にフラットはサンバー・トラックの主力の座を確立する。それは高い実力の証明だった。