カリーナFF 【1984,1985,1986,1987,1988】

FFレイアウトに進化した“足のいい奴”

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人気サルーンのFFへの進化

 4世代目となるカリーナがデビューしたのは1984年4月のこと。この時代、小型乗用車は、フロントエンジン、フロントドライブ(FF)方式が主流になりつつあった。トヨタではすでに1977年8月発売のターセル/コルサでFF方式を採用していたが、コロナのFF方式採用に準ずる形で、主要なコンポーネンツを共用するカリーナにも前輪駆動方式を採用した。しかしながら、スポーツモデルとして旧来のリアドライブ(FR)方式の車種もカタログには残され、従来からのユーザーも抜かりなく留めて置くことになる。いかにもトヨタらしい手法である。

 FF仕様のカリーナの基本的なシャシーコンポーネンツは同クラスのコロナシリーズと共用している。モノコックボディの骨格やサスペンションなどはほとんど同じであり、異なるのはインテリアとボディ外板のデザインのみとなる。コロナシリーズには存在した5ドアハッチバック仕様はカリーナにはない。全体に角張った感じのスタイリングは、コロナ系とは全く趣を異にするもので、当時の流行をソツなく取り込んでいる。ウエストラインは低く、4隅のピラーも細いため運転席からの視界は優れる。

世界初の希薄燃焼システムを実現

 カリーナFFに搭載されるエンジンは、1832cc(105ps)、1587cc(100ps)、1452cc(83ps)のガソリン仕様と1974cc(72ps)のディーゼル仕様の4種があり、全て水冷直列4気筒OHCである。トランスミッションは4速/5速のマニュアルおよび3速/4速のオートマチックの4種がグレード別に設定された。これもコロナ系と基本的に同一のものが使われるが、主力ユニットに世界初の希薄燃焼制御システムを組み込んでいた。

 希薄燃焼制御システム(T-LCS)を採用したのは、1600シリーズに搭載した1587ccの4A-ELU型。ファインセラミックスを酸素センサーに利用し、燃費を約20%向上。クラストップの17km/L(10モード・1600G/5MT車)をマークした。T-LCSは燃費の向上と同時にNoxの低減を同時に実現したシステムで、空燃比23以上の希薄燃焼を実現したのが特徴だった。出力は100ps/5600rpmと目覚ましく、カタログでは「トヨタの代表的FFスポーティエンジン」を謳い、低燃費と同時に走りの良さも訴求していた。

 サスペンションはコロナ系と同じく、前がマクファーソンストラット/コイル・スプリング、後ろはデュアルリンクストラット・コイルスプリングの組み合わせ。ブレーキは前ディスク、後ドラムとなる。タイヤは13インチ・サイズのスチールラジアル・タイヤを標準装備していた。

絶妙なポジション設定で高い人気を獲得

 カリーナFFの価格は最廉価版の1500カスタム・デラックスの97万5千円から最上級の1800SEエクストラ(4速オートマチック)の165万6千円までとなる。ちなみに、ディーゼル仕様の2000ディーゼルSE(4速オートマチック)は158万9千円だった。やはり、ディーゼル仕様の割高感は否めない。

 ファミリー向けのスポーツセダンとして登場したカリーナは、前輪駆動化とボディサイズの拡大などにより、広い室内を持つ価格的にも魅力的な高性能セダンへとその性格を切り替えて行った。カローラ系ほど小型ではなく、コロナ系ほどファミリー向けでもないという、きわめて微妙なポジションを狙ったモデルであり、その狙いは見事に的中した。