サニー・ルキノ 【1994,1995,1996,1997,1998,1999】
女神の名前を持つスタイリッシュクーペ
1966年にデビューを飾り、カローラとともに日本のモータリーゼーションを牽引した日産サニー(当初はダットサン・サニー)も、1980年代から1990年代にかけて、販売系列の増加やモデルレンジの拡大などにより、派生車種が順次増えて行くことになる。
サニー系のスペシャルティークーペとして、1994年5月に新しく登場したモデルのルキノ(LICINO)シリーズはその1台である。同じサニー系のスペシャルティークーペとして人気の高かったNXクーペの後継モデルと位置付けられていた。車名のルキノとは、古代ギリシャ神話に出てくる誕生を司る女神のルキナ(Lucina)に由来する造語だ。
ルキノの基本的なシャシーコンポーネンツは、セダンであるサニーおよび兄弟車の関係にあったパルサーと共通するものであり、ボディー後半のデザインをルキノ固有のものとしている。
スタイルは3ボックスの2ドアクーペで、乗車定員は5名。このクラスとしては十分に長い2535mmのホイールベースの賜物で室内は十分に広かった。前輪駆動方式のメリットである低い床面とともに、後部座席のヘッドスペースの大きなことも特徴となっていた。
国産車初のフルファストバック・スタイルで登場した初代以来、サニーのクーペモデルは斬新なスタイリングが大きな個性となっていたが、ルキノはジェントルさを前面に押し出していたのだ。広い室内空間を持つ、ちょっぴりお洒落な2ドアセダンと表現しても不自然さがない存在だった。
車種構成は4グレードとなっていたが、基本的なスタイルに違いはない。フロント部分に横置きで搭載されて、前輪を駆動するエンジンは2種でいずれも水冷直列4気筒DOH16VCとなっていた。
トップエンジンは、最高出力140ps/6400rpmを発揮する1838ccのSR18DE型で、他に105ps/6000rpmwを発揮する1497ccのGA15DE型があった。販売の主力となったのは1.5リッター仕様。トランスミッションは5速マニュアルおよびオーバードライブ付き4速オートマチックが選択可能だった。4輪駆動仕様の設定がないのは時代性の表れといえる。
日産は主要な輸出先であったアメリカ市場に向けて、ルキノのエンジン排気量を拡大したモデルを生産する。アメリカ市場では国内で使用していたルキノの車名を使わず、エンジン排気量の10分の1の3桁の数字とグレードを示すSXを組み合わせて200SXとしていた。
アメリカでは4ドアセダンのサニー セントラのスペシャルティーモデルと受け取られており、クーペスタイルとボディーサイズが適当であったことから、主に独身女性に好まれる傾向に在ったといわれる。住宅事情などにより、2ドアクーペがそのマーケットをほとんど失っていた日本とは大きく異なる点だ。日本国内向けモデルとの相違点は、外観では前後バンパーが大型化され、フラッシャーライトが大型化されていることだった。。
ルキノは新規バリエーションとして、1995年1月にパルサー・セリエのサニー版となる3ドアハッチバックを追加。1996年5月にはレジャー指向の高まりに対応してパルサー5ドアハッチバックをRVイメージに仕上げたルキノS-RVをシリーズに加えた。ルキノS-RVは、スポーツワゴンといえるモデルであり、大量のラゲッジと3〜4名の人員を無理なく移動させることができた。スタイリングもヨーロッパ的な雰囲気を感じさせる。