マーチ 【1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999,2000,2001,2002】

世界の自動車賞を独占した傑作ベーシック

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サイズは先代とほぼ共通。しかしすべてが進化

 日産自動車初のリッターカーとして、1982年10月に発売されたマーチは、マイナーチェンジにより改良とモデルレンジの拡大を果たしながら、9年3ヵ月という、国産小型車としては異例に長いライフスパンの後に、1992年1月に第2世代へとチェンジされる。車名であるマーチ(March)は、行進曲とか3月を意味する英語であり、サニーなどと同様、初代の発売に際して一般からの公募により決められたものだ。

 2代目マーチは、初代の持つ「1リッタークラスのエンジンによる前輪駆動方式を採用した小型車で、必要最小限の条件を満たすモデル」という基本的なコンセプトを受け継ぎながら、小型実用車としての要素をさらに発展させた。ボディサイズは初代のマーチに比べ、全長は40mm短縮され全幅は25mm拡がっている。サイズとしては旧型と大差ないが、ホイールベースは2360mmへと60mmも延長されていた。室内空間の拡大と走行安定性の向上を狙った変更だった。

Be-1にも似た愛らしいスタイリング

 スタイリングは旧型と同様に2ボックススタイルの5人乗りハッチバックだが、全体に角が取れて、曲面豊かなラインを持つものとなった。プレス技術の進歩を物語るものとともに好評を博したBe-1の影響もあった。ボディーバリエーションは3ドアと5ドアで、当初はコンバーチブルやワゴンの設定はなかった。2分割されたフロントグリルの意匠やウインドウの形などは日産車のアイデンティティを強く感じさせる。インテリアもシンプルなデザインだがチープさはなく、各部の仕上げも良い。特に後部座席からリアのホイールハウスがなくなっているので、実際的なスペースは格段に向上した。

 搭載されるエンジンは全くの新設計となっており、排気ガスの浄化に格段の配慮を盛り込んでいる。排気量は997ccと1274ccの2種があり、いずれも水冷直列4気筒DOHC16バルブと高度な設計を採用している。ターボは持たず、自然吸気型であることが特徴。出力は997cc仕様が58ps/6000rpm、1274cc仕様が79ps/6000rpmとなっていた。

 トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックとCVTを使った無段変速(いずれもフロアシフトのみの設定)となっていた。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット/コイルスプリング、リアが4リンク/コイルスプリング。ブレーキもフロントがディスク、リアがドラムの組み合わせでサーボ機構を備える。

ユーザーフレンドリーな装備を満載

 2代目マーチは、パワーステアリングやエアーコンディショナー、テールゲートのオープナー、電動ミラー、パワーウインドーをほぼ全車に標準装備されるという具合に、どこを採ってもきわめて良心的なコンパクトカーに仕上がっていた。装備は実用的なファミリーカーとして必要十分であり、完成度も高かった。マーチのようなモデルにとっては最も重要なポイントでもある。ちなみに、オプション設定される装備品はエアコンのフルオート機構、スライディングルーフ(電動)、ABSなどがあった。

 グレードは997cc仕様で3種、1274cc仕様に3種が設定されており、価格は85万円から141万円。
 2代目のマーチは日産の世界戦略車の一つとして、特にヨーロッパを中心に販売されることになる。ヨーロッパ市場向けは英国の生産工場であるNMUKでも年産10万台規模で量産し「マイクラ」のネーミングで販売された。

世界のアワードを独り占め! 欧州でも高い評価を獲得

 2代目のマーチは「1992-1993日本カーオブザイヤー」だけでなく、「1992-1993RJCニューカーオブザイヤー」を受賞するなど、卓越した完成度と骨太な設計思想が高く評価される。欧州でもそれは同様だった。

 日本車で初めて「1993欧州カーオブザイヤー」に輝いたのをはじめ、「ドイツ・ゴールデンステアリングホイール賞カテゴリー1(1500cc以下部門)最優秀賞」、「英国ベストカーズ8000ポンド以下クラス&オーバーオール最優秀賞」、「1992英国オートデザイン金賞」など、さまざまな自動車アワードを受賞した。

 多くの人が使うベーシックカーだからこそ各部に惜しみなく先進設計を与えた日産の英断が、正統に評価されたのである。日本の高い技術力とクルマへの深い愛情が結晶したベストカーが2代目マーチと言えた。