カローラ・ワゴン 【1982,1983,1984,1985,1986,1987】

ベストセラーバンをリファインした乗用ワゴン

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シンプルなラインアップで登場した新顔

 1982年5月に4代目カローラのラインアップに加わったワゴンは、優れたユーティリティを追求した実用派モデルだった。カローラ・ワゴンが登場した当時、日本でワゴンは乗用車として市民権を得ていなかった。乗用車と言えば3ボックス・デザインのセダンを指し、遊びゴコロを取り込んだモデルの代表はスタイリッシュなクーペだった。セダンの居住性と、使い勝手に優れたフリースペースを組み合わせたワゴンを愛するユーザーは完全な少数派にすぎなかった。

 カローラ・ワゴンはブランニューモデルとは言え、商用車のバンの派生モデルに過ぎなかった。バリエーション構成は、充実装備のGLとベーシックなDXの2グレードで、エンジンは1290ccの排気量から74ps/5600rpm、10.7kg・m/3600rpmのパワー&トルクを生み出す4K-U型の1種。トランスミッションもマニュアル型のみでGLが5速、DXは4速タイプを組み合わせていた。

 ベースとなったバンが排気量1290cc(72ps/5200rpm)と1588cc(86ps/5600rpm)のガソリンユニットに加え、1839cc(65ps/4500rpm)のディーゼルユニットを設定し、グレードによって3速オートマチックも選べたのと比較するとワゴンはいささかシンプルに過ぎる車種構成だった。ボディタイプにしても、バンは2ドアと4ドアの2種を設定していたのに対し、ワゴンは4ドアのみ。初代カローラ・ワゴンは、その魅力を理解する限られたユーザーに向けたモデルだった。事実、ワゴンの販売目標台数は500台。この数値目標はベストセラーカーであるカローラのなかでとび抜けて少なかった。

コマーシャルカー王者の挑戦!

 カローラはコマーシャルカーの分野でも王者だった。ワゴンのベースとなった商用バンは1982年の時点で、すでに13年連続で国内大衆コマーシャルカー販売台数トップの座に君臨していた。乗用車登録のワゴンを追加したのは、実用性を重視するユーザーニーズの高まりに応えたからだった。それだけではない。ライバルの動向も大いに影響していた。

 サニーは1979年にワゴン専用設計のスタイリッシュなカリフォルニアを登場させ、ホンダのシビックも1980年にワゴン版のカントリーをラインアップに加えた。ともに販売台数はそれほど多くはなかったが、ライバルにあるワゴンが、王者のカローラにないのは大きな問題と言えた。そこで急遽開発されたのが商用バンをリファインしたワゴンだったのである。

優れたユーティリティが魅力の源泉

 ワゴンの魅力は、後席を倒すと最大荷室長1535mm×荷室幅1315mm×荷室高830mmのラゲッジスペースが出現するユーティリティと、セダンと同等の快適性を実現したことにあった。

 ダブルホールディング機構付きの後席は、シートバックの傾斜角をバンより大きく取り、しかもクッション位置を後方に設置することで長距離ドライブでも快適なスペース性を実現していた。上級グレードのGLではドアや荷室部がフルトリム化され質感も向上していた。

 車検有効期限がバンの1年から2年に延長されていたのもワゴンのメリットだった。過酷な使用を想定したバンに対し、ワゴンはあくまでも乗用車として作られていた。しかしクルマの基本はヘビーデューティ設計のバンと同様なので信頼性は抜群。リアサスペンションは4リンク式のコイルバネを採用したセダンに対し、バンと共通の一段とシンプルな半楕円リーフ式を採用していた。

 半楕円リーフ式は、重い荷物を積んでも姿勢変化が少なく、しかも耐久性に優れたサスペンションだった。タイヤはバンのクロスプライ仕様に対して、グリップに優れたラジアル仕様を標準装備。正確な反応を示すラック&ピニオン式ステアリングと相まって、走りはカローラ・シリーズのなかでも安全でしっかりとした味わいを持っていた。エンジンが74psとマイルドだったから速さの面では光るところがなかったが、町中はもちろん、高速道路やワインディングロードでも、ドライバーを飽きさせない自然なドライバビリティを披露した。

実用派に愛された隠れた名車

 GLグレードでは大型ウレタンバンパーやサイドプロテクションモール、サイドテープストライプを採用し、ドアサッシュをブラック仕上げとするなどエクステリアをワゴンらしくお洒落に仕上げていたが、DXグレードではバンのDXグレード変わるところはなくビジネスライクな印象だった。

 しかしそれも見方を変えれば、バンのタフさとユーティリティを持つ乗用ワゴンというカローラ・ワゴンの本質を見事に表現していた。カローラ・ワゴンは少数派だったが、膨大なカローラのラインアップのなかで、最も便利なクルマでもあった。実用派にとって隠れた名車だった。