セフィーロ 【1994,1995,1996,1997,1998,1999,2000】

ビッグキャビンの快適サルーン

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初代はスペシャルティ感覚で人気を獲得

 初代セフィーロがデビューしたのは1988年9月であった。トヨタのカムリや三菱 ディアマンテ、ホンダ・レジェンドなどのライバルが鎬を削る激戦区に、一足遅れて登場したセフィーロではあったが、初代モデルは日産らしい品質の高さと優れたハンドリング、造り込みの良さ、直列6気筒レイアウトの高性能エンジン(RB20系)などが大きな魅力となり、スペシャルティ感覚溢れるセダンとして、このセグメントでは一定の成功を収める。車名のセフィーロ(Cefiro)とは、そよ風とか春先の地中海に吹く西風を表すスペイン語である。

2代目はFFに変身しコンセプトを一新!

 初代のデビューから6年を経た1994年8月、セフィーロは第2世代へと進化した。2代目は、セフィーロとしての独自性は失われており、メカニズムは北米仕様のマキシマと同一のものが流用されていた。したがって駆動方式はフロントエンジンによる前輪駆動方式。ちなみに日本仕様のマキシマはセフィーロの登場により販売が中止となった。2代目セフィーロはマキシマのメカニズムを基本に、初代から継承したセフィーロのパーソナルなテーストを盛り込んだサルーンだった。

 アメリカ市場で大きな人気を得ていたマキシマを日本市場向けに仕立て直しただけあって、ボディサイズはかなり大きめになっていた。全長は4760mm、全幅1770mm、全高1410mm、そしてホイールベースは2700mm。アメリカ市場でも中型車クラスとして十分通用するサイズとなっている。同じ日産のセドリック/グロリアには及ばないが、ローレルやスカイラインをやや上回っていた。それも当然で、アメリカで要求されるファーストカーとしての広さ、大きさを追求した北米仕様のマキシマがベースになっているからだ。

シートは快適性を重視したエルゴノミックデザイン

 2代目セフィーロの魅力は広々とした室内スペースにあった。カタログでもその広さを分かりやすく説明していた。広さのポイントとして列記されたのは1170mmの室内高、2075mmの室内長、1480mmの室内幅、1770mmの全幅などの4つの数字。それぞれを丁寧に説明することでセフィーロの室内空間がライバルと違うことを実感させた。

 さらにシートも骨盤から腰椎にかけて連続的にサポートするエルゴノミック構造であることをイラストを用いて説明。広さだけでなく長距離ドライブでも疲労が少ない美点をアピールした。豊富な装備群だけでなく広さや快適性という価値を訴求したセフィーロは新世代の上級サルーンだった。実直なカタログもそれを証明していた。

新開発VQ型V6エンジン採用

 フロントに横置きされ、前輪を駆動するエンジンは、新開発のVQシリーズのV型6気筒DOHCで、当時としては最も進歩的な設計のエンジンだった。排気量は2495cc(190ps/6400rpm)と1995cc(155ps/6400rpm)の2種があった。
 VQシリーズのエンジンは、V型のシリンダー配置やオーバースクエアな燃焼室とするなどして全体をコンパクトに設計し、クルマに搭載したときに余計なスペースを取らないように考えられており、室内の広さをさらに拡げる効果もあった。

 サスペンションは基本的には北米仕様のマキシマと共通のものであり、前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後ろがマルチリンク/ビームアクスルとなっている。生産性の高いことやステーションワゴン仕様にも対応した設計である。トランスミッションは日産お得意のフルレンジ電子制御方式を採用した4速オートマチックが基本で、ベーシックモデルのみ5速マニュアル型が選べた。
 価格はローレルやスカイラインなどに比べると大分お買い得な設定になっていた。室内装備の違いはあるにしても、走りの性能などは実質的に同一のレベルにあったのだから、実用的な4ドアセダンとしては十分なものであった。ライバルの隙間を突いた巧妙なモデル展開と言えた。

 しかし、セフィーロはマキシマがそうであったように、日本のアッパーミドルクラスのマーケットでは期待されたほどの販売台数を実現することは出来なかった。セフィーロの持つ実用車としての魅力を、多くのユーザーは理解することができず、単にボディの大きな安価なモデルとしてしか見なかったのである。それこそが、日本の自動車マーケットの特殊性であった。今日でも魅力的なクルマではあるのだが。