ブルーバードADワゴン 【1979,1980,1981,1982,1983】

サブネームを付けて復活した快適ワゴン

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アウトドアレジャーの浸透に対応して−−

 1970年代中盤から徐々に浸透し始めた日本のアウトドアブーム。この状況に対して日産自動車は、排気ガス規制の対策が一段落した1979年以降、セダンモデルをベースにした“ステーションワゴン”を相次いでリリースする。
 まず1979年1月には、B310型系サニーに“カリフォルニア”と呼ぶ小型ワゴンを追加設定。同年6月には430型系にフルモデルチェンジしたセドリック/グロリアにワゴン仕様を用意する。同年8月にはC210型系スカイラインにもワゴンボディをラインアップした。

 残る日産の量販中核モデルの中で、ワゴン仕様がないのはブルーバードのみ。なぜブルーバード・ワゴンの設定が他モデルより遅れたかというと、ちょうど810型系からのフルモデルチェンジの時期を迎えていたからだった。
 新しいブルーバードを企画するに当たり、開発陣は“原点回帰”を試みる。ブルーバードの設計理念は「つねに先進的なクルマであること。そして、最高水準のメカニズムをもつこと」。これこそが本来の“ブルーバード・スピリット”であり、次期型はこれを具現化するものでなくてはならない−−。こうした開発方針のもと、「1980年代を代表する高性能、高品質の本格乗用車」の完成を目指した。この枠組みの中に、ワゴンモデルの開発も盛り込まれたのである。

サブネームの“AD”を付けてデビュー

 先々代の610型系の途中から姿を消していたブルーバードのワゴンモデルは、910型系の登場から1カ月ほどが経過した1979年12月に市場デビューを果たす。車名は“ブルーバードADワゴン”。ADのサブネームはAdvance(先進性)やAdventure(冒険)を意味し、ブルーバードが持つ先進性とワゴンが有する用途の広さを兼ね備えた事実を表現したものだった。

 ADワゴンの車種展開は、1800GSの1グレードのみで構成する。搭載エンジンはV字型配置の吸排気弁や1気筒当たり2本のプラグを配置したZ18型1770cc直4OHC(105ps/15.0kg・m)で、組み合わせるミッションには4速MT/5速MT/ニッサンマチック(3速AT)の3タイプを用意した。
 スタイリングに関しては、910型系ブルーバードの特徴であるシンプルかつクリーンなイメージを踏襲する。具体的には、低いベルトラインにブラックアウトしたドアサッシュ、ドラフタータイプのピラー、ボディと一体造形のスタイルドヘッドランプ&リアコンビネーションランプ、ADワゴンのシンボルマークを配したハニカム形状の黒色ラジエアターグリルなどを装着した。またオプションとして、ボディサイドのウッディパネルやアルミロードホイール+185/70SR14ラジアルタイヤ(標準タイヤは165SR14)といったスタイリッシュなアイテムを設定する。ボディカラーはホワイト/ブラウン・メタリック/ディープブラウン・メタリック/シルバー・メタリック/ディープブルー・メタリックの単色のほか、オレンジストライプ付きのグレーツートン・メタリックをラインアップした。

人気定番モデルに成長

 内装については、セダンの1800SSSをベースにスポーティで豪華な演出を施したうえで、リアシートには分割ホールディング機構と5段階リクライニング機構を内蔵する。また運転席にはランバーサポートとシートリフターを、ステアリングにはチルト機構を組み込んだ。
 サスペンション形式は基本的にセダンモデルと同様で、フロントがハイキャスター・ゼロスクラブのマクファーソンストラット式、リアがリンクダンパーを組み込んだ4リンク式を採用する。だたし、ダンパーやスプリング、ブッシュ類には専用チューニングを施した。ステアリング機構は応答性に優れたラック&ピニオン式。ブレーキにはフロントにベンチレーテッドディスクを装備するとともに、7.5インチのマスターバックを組み合わせて踏力の軽減を図った。

 ブルーバードとしては久々の乗用ワゴンとなったWPJ910型ADワゴンは、乱高下の少ない安定した販売成績を記録し続ける。開発陣もADワゴンが定番モデルに昇華するよう、地道な改良を実施。乗り心地の向上を図るためにリアサスペンションを4リンク式に変更したり、エンジンを小型・軽量・低燃費のCA18型系に換装するなどした。
 910型系ブルーバードの隠れた定番モデルに成長したADワゴン。このクラスのワゴン需要は確実にあるという確証を得た日産スタッフは、後継モデルとなるU11型系ブルーバードにもワゴン仕様を設定したのである。