シビック 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】

4つの新価値で時代をリードしたミラクルな6代目

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先進性こそシビックの価値

 6代目シビックは、シビックの世界累計生産台数が1000万台を超えた4ヵ月後の1995年9月に登場した。シビックはVWゴルフ、トヨタ・カローラと並ぶ世界有数のベストセラーモデルである。

 だがシビックには、ベストセラーと言う言葉から連想する保守的なイメージは微塵もない。シビックはつねに時代を先駆ける先進性で自らの道を切り開いてきた。それが伝統であり価値なのである。6代目もその姿勢は同様だった。ちなみに通称名は“ミラクルシビック”を名乗った。

3ステージVTEC+マルチマチックCVT=新時代の走り

 6代目が提唱した新価値は4点あった。1点目は「誰もが体感できる、新時代の走行性能」。新世代に相応しく、単にパワフルなだけでなく、燃費性能を含め気持ちのいい走りを追求した点が新しかった。その象徴が主力グレードのVTi&Viグレードに搭載した新開発3ステージVTECエンジンとホンダマルチマチックCVTミッションである。

 3ステージVTECエンジンは、低回転/中回転/高回転域の3つのステージで適切なバルブタイミング・リフトの切り替えを行うホンダ独創のVTEC機構と、低燃費を実現するリーンバーン(希薄燃焼)システムを組み合わせたユニット。1493ccの排気量から130ps/7000rpm、14.2kg・m/5300rpmの爽快なパワーを生み出すとともに、クラストップの17.2km/Lの10・15モード燃費(CVT)を実現していた。

 低回転域では2個ある吸気バルブのひとつを休止させ、実用トルクを太らせる一方、吸気バルブ2個が作動する中&高回転域ではそれぞれ最適なバルブタイミングに切り替えることで全域でのパワフルさを実現した。しかも空気量に対してガソリン噴射量をしぼったリーンバーンシステムと、つねに効率に優れたエンジン回転ゾーンを使用する無段変速ホンダマルチマチックCVTにより優れた燃費性能も手に入れた。二律背反の関係にある走りと燃費を、ともにハイレベルに引き上げた6代目シビックの走行性能は確かに新時代のものだった。

高品質、安全、快適も高次元でバランス

 新価値の2点目は「見えない部分まで徹底した高品質」。単に装備を充実させるだけでなく、曲げやねじれに強いフレームと、リアピラー接合部の剛性をアップした高剛性ボディを全車に採用。しかもボディとサイドパネルを一体成形し、がっしりと安定感のある走りを実現したのだ。合わせて、さまざまな静粛性向上策を導入することで、乗るほどに愛着の湧く快適性も身に付けていた。6代目シビックの高品質は、基本骨格そのものの磨き込みによって実現していた。

 新価値の3点目は「グローバルに見つめた総合的な安全性」。1990年代は日本車の安全性が飛躍的に向上した時期だったが、シビックも例外ではなかった。高効率クラッシャブル設計を導入した安全ボディを基本に、衝撃吸収パッドやドアビームを用いることでアメリカの側面衝突基準をクリアーする安全性を実現。さらに全車にデュアルエアバッグを標準装備するとともに、ABSやLSDの設定でパッシブセーフティだけでなく、危険を未然に防ぐアクティブセーフティの点でも磨きを掛けていた。

最後の世界共通設計シビック

 新価値の4点目は「さまざまな人の快適を考えた空間設計」。3ドアとフェリオを名乗る4ドアセダンのホイールベースを2620mmで統一しゆったりとした室内スペースを稼ぎ出したのだ。さらに長距離クルーズでも疲れの少ない上質なシート、冷房効率を高めた高熱線吸収ガラス、大小さまざまな収納ポケットで使い勝手を計算。材質マーキング等によるリサイクル性の向上、大気汚染を防止した新塗装システムも導入し、ユーザーだけでなく、地球環境にも快適なシビックへと成長していた。

 6代目シビックは、日本市場以上に、アメリカを中心としたグローバル市場で愛された日本車の代表だった。全身にみなぎる進取の気性がホンダの主力モデルであることを実感させた。ちなみに7代目からシビックはマーケット別の最適設計を導入し、ブランドネームこそ同一ながら、さまざまな性格とスタイルを持つワールドカーに進化する。その意味で6代目は世界共通設計で勝利を収めた最後のモデルだった。

マニアの期待に応え、タイプRが誕生!

 スポーツマインド旺盛の開発陣は1997年秋、サーキットでいい汗がかけるホットマシン、タイプRを送り出す。シビック・タイプRは究極のリアルスポーツだった。

 エンジンをファインチューニングし、足回りを固めるとともに各部の贅肉を徹底的にそぎす手法はNSXやインテグラのタイプRと共通。排気量1595ccのB16B型ユニットは圧縮比を10.8に高め、エンジン内部のフリクションを低減しながら吸排気系の改良やバルブスプリングの強化/バルブステムの細軸化が実施され185ps/8200rpmのピークパワーを実現した。

 リッター当たり出力は驚異の116psである。シャシーの補強も入念でストラットタワーバーだけでなく、モノコックメンバーへのパフォーマンスロッド追加で剛性をアップ。ばねレートやダンパーも徹底的に強化された。ホワイト塗装の7本スポークアルミや、深紅のレカロシートなど専用アイテムでホットなキャラクターを表現したタイプRの走りは超鮮烈。まさにミラクルなスポーツマシンだった。