エコロジー01/トヨタ 【1990〜2009】

世界初の本格量産ハイブリッドカーの登場



トヨタ自動車によるエコプロジェクトの推進

 地球温暖化による異常気象や生態系への悪影響などが世界規模で問題視され始めた1990年代の初頭。その対応策として自動車業界では、省エネルギーやCO2削減などが重要な克服課題となり、環境対策を施した原動機の開発を積極的に推進していた。

 日本の自動車メーカーのリーディングカンパニーであるトヨタ自動車は、リーンバーンエンジンや直噴ガソリンエンジンなどの低燃費ユニットを開発する一方、内燃機関のガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた「ハイブリッド(複合)」システムの動力源も鋭意、開発する。

 内燃機関とモーターの2種類の動力源を持つハイブリッドの歴史は古く、1896年にはフェルディナント・ポルシェが基礎技術を発表し、オーストリアのローナー社で「Mixte」を生み出した。1915年になるとアメリカのウッズ社でもハイブリッド車が製作される。ただし、この頃のハイブリッド車はガソリンエンジンのパワー不足を補うためにモーターを使用するというコンセプトで作られていたため、高出力エンジンが開発されるようになるとハイブリッドの動力源は廃れてしまった。

 ハイブリッド車が再び注目され始めたのは、石油ショックや大気汚染問題が深刻化した1970年代以降。このときは燃料消費率の削減と排出ガスのクリーン化の手段としてハイブリッド車が注目され、結果的に1970年代末から1980年代にかけて様々なメーカーから試作ハイブリッド車が発表される。しかし、これらのモデルはコストや重量増などの問題で量産化には至らなかった。

先進のハイブリッドシステムの開発

 数々の課題を抱えたハイブリッド車。一方、トヨタ自動車は持ち前の技術力を結集し、1995年10月開催の第31回東京モーターショーにおいて量産化を予感させる画期的なハイブリッド試作車の「プリウス」を参考出品する。1.5Lの直噴ガソリンエンジンにインダクションモーター、CVTのトランスミッションを組み合わせたハイブリッドシステムの“EMS”(エネルギー・マネジメント・システム)は、従来よりもコンパクトで、しかもコスト面にも優れた動力源に仕上がっていた。

 トヨタ自動車のハイブリッド車の開発は、ショーデビュー後も着実に進展を遂げていく。そして1997年3月になると、EMSを発展させた“THS”(トヨタ・ハイブリッド・システム)を技術発表した。
 新開発の高膨張比サイクル1.5L直列4気筒エンジンに交流同期電動機のモーターを組み合わせ、さらにニッケル水素電池を搭載したハイブリッドシステムは、動力分割制御による高効率運転を可能としていた。このシステムは、「シリーズ+パラレル併用式」と呼ばれる。ハイブリッドの方式は、エンジンとモーターが直列に連なり、エンジンで発電機を回し、そこで発生した電力を利用してモーターで駆動する「シリーズ式」と、エンジンとモーターを並列に配置し、双方を走行に使用する「パラレル式」に大別できる。この2つの方式のいいところを取り、パラレル式で使われるモーター(兼発電機)とシリーズ式で使用される発電機を備えたのが、THSの特徴だった。

世界初の量産ハイブリッド乗用車の市場デビュー

 THSの技術発表から約7カ月後の1997年10月、量産ハイブリッド車の「プリウス」(NHW10型)が満を持して市場デビューを果たす。高膨張比サイクルの1NZ-FXE型1496cc直4DOHCエンジン(58ps/10.4kg・m)に1CM型交流同期電動機モーター(30.0kW/31.1kg・m)、そしてニッケル水素(Ni-MH)バッテリーを組み合わせた動力源は、10・15モード走行燃費で28.0km/Lという従来の同クラスのガソリンエンジン車に比べて約2倍の燃費を実現。同時に、排出ガス中のCO、HC、NOxは規制値の約10分の1に抑え込んでいた。

 トヨタの開発陣は、内外装の演出についても徹底的に先進性を打ち出す。エクステリアはロングホイールベースにビッグキャビン、ショートオーバーハングの新しいプロポーションにより“新世代3BOXシルエット”を創出。さらに、ボディ回りの空気の流れをスムーズにするアッパーボディ形状と床下のフラット化により、Cd値(空気抵抗係数)0.30を実現した。インテリアに関しては、デジタルメーターを上面中央に配した新意匠のインスツルメントパネルにアート感覚あふれる各部品デザインなどを採用。また、THSのエネルギー使用・回収状況をビジュアルに表示するエネルギーモニターも設定した。

 「ハイブリッド車は電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に移行するまでの短期で過渡的な存在」と言われたが、その寿命は当初の予想以上に長く続く。EVやFCVにはコスト面や航続距離、リサイクル性、インフラの整備など、乗り越えなければならない課題が多かったからだ。そのため、環境対策車としてのハイブリッドカーの存在価値は2000年代に入っても高い状況を維持し、プリウスおよびTHSもさらなる進化を図っていくこととなったのである。