アトラスH43 【2012〜】

ダイムラーAGとの戦略的協力関係が生みだしたエコトラック

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日本のディーゼル規制が連携のきっかけ

 自動車業界のグローバル化と、連携は非常に積極的だ。日産自動車の最大積載量2〜4㌧クラス・トラック、アトラスH43は、その象徴的な存在である。アトラスH43は、ルノー・日産アライアンスとメルセデス・ベンツを展開するダイムラーAGとの戦略的協力関係が生んだ商品だ。具体的には、ダイムラーAGの100%子会社である三菱ふそうトラック・バスと日産自動車との間で締結した商品相互供給に関する契約に基づく、三菱キャンターのOEM車両である。

 アトラスは、1956年10月に誕生した1.75㌧積みトラック、ジュニアをルーツとする日産を代表するトラック。1958年には2㌧積みキャブオーバータイプのジュニア・キャブオールに発展し、歴代モデルはいすゞエルフ、三菱キャンターと熾烈な販売競争を展開してきた。しかし、最新モデルはライバルからのOEM供給車である。

 OEM供給に踏み切った最大の要因は、世界一厳しい、日本のディーゼル車、排出ガス規制だった。この排出ガス規制をクリアーするために多大な研究開発費を投入するより、すでに排出ガス規制をクリアーした車両の供給を受け、販売したほうがメリットは大きいと日産は判断したのである。

OEM商品に難色を示さなくなったユーザー動向

 アトラスH43は、「平成22年排出ガス規制(ポスト新長期排出ガス規制)」に適合するだけでなく、同規制値よりも窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)を30%も低減したクリーンディーゼルを搭載。さらに平成27年度燃費基準を達成した、低燃費のエコトラックでもある。

 日産もディーゼル車の排出ガス規制には、積極的に取り組んでおり、1.5㌧積みトラック、アトラスF24は、独自技術で平成22年排出ガス規制をクリアーしている。当然ながらF24より重量級のH43に適合するクリーンディーゼルの開発も行っていた。しかし自社技術よりも三菱キャンターのOEM供給を優先したのは、経済的なメリットとともに、キャンターのメカニズムが非常に優れたものだったからだ。また背景としてユーザーがOEM供給車に対してネガティブなイメージを持たなくなってきたことも大きい。いまや軽自動車を中心として、OEM供給車は珍しい存在ではない。クルマとしての機能や商品性が優れているなら、ユーザーはOEM供給車の購入に二の足を踏むことはなくなっている。

3リッターディーゼルは高効率&クリーンエア設計

 アトラスH43のクリーンディーゼルは、排気量2998ccの直列4気筒ターボの4P10型だ。コモンレール式高圧燃料噴射システム、燃料噴射の精度を高めるピエゾインジェクター、クールドEGRシステム、VGターボなどの最新メカニズムを積極投入し、標準仕様で130ps/30・6kg・m、高出力仕様で150ps/37.7kg・mを発揮する。排出ガス対策としては、再生制御式DPSと尿素SCR機構を導入。燃費を悪化させることなくNoxとPMを大幅に低減した。

 燃費も優秀だ。全車にアイドリングストップ機構を装備し、通常ディーゼル車でクラストップの11km/L。発進をモーターが担当するハイブリッド仕様では12.8km/Lをマークする。

ツインクラッチ方式の6速ミッション採用

 トランスミッションも先進的である。ツインクラッチを採用した6速タイプの機械式AT「DUONIC(デュオニック)」を採用。クラッチ操作の不要な2ペダル方式により、ドライバーの疲労を軽減すると同時に、機械式ならではの高効率を実現した。湿式多板クラッチの採用により、スムーズな坂道発進や、アクセル操作なしのクリープ走行を実現したのもポイントになる。

 ちなみにエンジンやトランスミッションには、三菱ふそうトラック・バスの親会社であるダイムラーAGの技術が積極的に導入されている。アトラスNT450は、三菱キャンターのOEM車であると同時に、ダイムラーAGとの血縁も濃厚なトラックなのだ。

 アトラスNT450の内外装は、基本的に三菱キャンターと共通。エンブレムを除いて、敢えて日産車としての演出はしていない。その点で旧来からのアトラス・ユーザーは寂しさを感じるかもしれない。しかし優秀なメカニズムの持ち主であることは確かだ。国際的な協力関係が生み出した果実である。