セルボ 【1988,1989,1990】

全身に個性をちりばめたスペシャルティKカー

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アルトがベースのスペシャルティ

 1988年1月に登場した3代目セルボ。それまでのクーペから一新し、ハッチバックへと生まれ変わってデビューした。開発のキーワードは、「パーソナルベスト」。アルトの主要コンポーネンツを活用して、ディテールを磨き上げての誕生であった。

 フロントセクションは、アルトのイメージが漂うルックス。向かって右側に大きな開口部を設置したグリル形状がユニークだ。リア回りでも、スタイリングコンシャスモデルである初代および2代目の従来モデル同様、個性あふれるデザインが施された。なかでもリアのCピラー部分の処理は、他にない独自性の強い意匠だった。

 圧巻とも言える太さのCピラーで、そのためにリアサイドウィンドウは小さな面積に抑えられた。またウエストラインから羽を広げるかのように繋がるリアスポイラーの形状など、斬新な試みに満ちていた。

Cd値0.35。開放的なグラスルーフ採用

 ボディサイズは、全長3195mm×全幅1395mm×全高1330mm。アルトと比較すると、全長と全幅は共通ながら、全高が70mmも低いアピアランス。Cd値は0.35をマークした。
 ルーフ部分がまた独特だ。ルーフの前半分はスモークガラスで仕立てたグラスルーフ。フロントシート上部がまるごとガラスなのだから、その開放感は抜群だった。グラスルーフは全車に標準装備された。どこから眺めても、オリジナリティの強い個性的なエクステリア。それが3代目セルボである。

 インテリアでも、個性的なルックスのバケット形状のシートが目を引く。スペシャリティーKカーらしく、上質なファブリックで仕立てられた。その一方でリアシートは簡易でシンプルなもの。税金面で有利なバンタイプ(商用車扱い)で、当時の軽自動車の流れに即したものとなっていた。

 インパネではメーターパネルが実にユニークだ。半月のように形作られたタコメーターを中央に、スピード計をその左にレイアウトしたホワイトメーターは、走りを意識したモデルであることを明示している。

4バルブの新開発ユニットを搭載

 搭載エンジンは、OHCながら各シリンダーに4バルブを奢った547cc直列3気筒SOHC12Vの新開発ユニット(F5B型)。40ps/7500rpmの最高出力と、4.2kg-m/4500rpmの最大トルクを発揮する。従来に比べ、10ps/0.2kg-mのパワーアップを果たした。トランスミッションは、5速MTと、クラス初のロックアップ機構付き3速ATを用意。駆動方式は、FFのほか4WDもラインアップした。

 サスペンションは、フロントがストラット式、リアがITL(アイソレーティッド トレーリングリンク)式。スプリング、ダンパーともにしっかりとした味付けに調律されている。

 スタイリングそして走りに至るまでスポーティーで個性的なモデルとして進化した3代目セルボだが、1990年5月のKカーの新規格化に合わせて生産を終了。7月にデビューを果たすセルボモードがそのあとを引き継いだ。短命だったが、その独自の存在感はクルマ好きの記憶に深く刻まれている。

キャッチコピーは“横丁小町”女性をターゲットに開発

 3代目セルボのターゲットユーザーは女性。しかもタウンユースの気軽なスペシャルティモデルを目指していた。それはキャッチコピーに“横丁小町”と言う表現が象徴している。

 絶対的なパフォーマンスよりも、取り回しのよさや快適性を重視しており、世界初の電動パワーステアリングを採用。オプションのオーディオは30W+30Wのイコライザー付きで、16cmウーハーと7cmツィーターを組み合わせた本格派だった。レモンイエローとグレーの明るい配色のシートやキャビンを開放的に仕上げるグラスルーフも女性の好みを反映した結果だったという。

 3代目セルボの販売セールスは、残念ながらメーカーの期待値に届かなかった。原因はいろいろ考えられるが、そのコンセプトが時代の数歩先を走っていたことも要因かもしれない。1988年当時、確かにKカーの主要ユーザーは女性だった。しかし適度なおしゃれ感覚は求められたものの、セルボのような明確な個性の持ち主は、まだまだ理解されなかったのである。