セドリック 【1979,1980,1981,1982,1983】

先進技術と快適装備で魅了したフラッグシップ

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先進性と技術力でアピールしたセドリック

 セドリックは伝統的に、ライバルであるトヨタのクラウンに対しては技術力の優秀性をアピールしていた。当時考え得る先進の電子制御方式を積極的に採用したことやクラウンとは価値観の異なる先鋭的なスタイリングを持ったことなど、クラウンとは異なるポジションを築き上げようとする姿勢が強かった。また、クラウンがペリメーター・フレームと呼ばれる強固なシャシーフレームを持つボディ構造であったのに対して、セドリックは完全なモノコック構造を採用するといった違いがあった。オーソドックスな成り立ちを持ったクラウンに対して、アバンギャルドなセドリックというイメージ付けであった。

 1979年6月にデビューした5世代目のセドリックは、ボデイースタイルの変更、リアサスペンションの変更、エンジンに電子制御方式を導入したことなどが主な変更点である。車種構成は5人乗りの4ドアセダン、4ドアハードトップ、ステーションワゴン/バンの3車種である。旧型に存在したパーソナルカー的な要素があった2ドアハードトップはカタログから落とされ、そのユーザーは4ドアハードトップが吸収することになった。また、旧型にはなかったステーションワゴンが復活設定された。

アメリカンタッチのスタイリングは直線的なラインで構成

 全面的に変更されたスタイリングは、ボディ全面に渡って平面と直線的なラインで構成されている。わずかに前傾したフロント部分と同様に前傾した平面のリアエンドによって、ボディーを見た目にはかなり大きく感じさせる。セダン系はリアドアの後ろのCピラーに長台形の小さなウインドウを持ち、軽快感を演出している。また、全車種に採用されたハロゲン・ヘッドライトは角形のものとなり、セダン系とステーションワゴン/バン系は4灯式、ハードトップは横長の大型2灯式となっている。

 ホイールとタイヤ以外には曲線部分は一切なく、クロームメッキされたモールディングやガーニッシュ(飾り板)を含め、すべて直線で構成されている。同じ時期のアメリカ車、特にGM系のデザインと言えるものだ。モデル・バリエーションは4ドアセダンが4車種、4ドアハードトップが3車種、さらにステーションワゴンとバンが加わる。

キャッチコピーは“快適ローデシベル空間”

 5代目となる430型系セドリックは“快適ローデシベル空間”のキャッチコピーが冠された。ボディー各部の接合部やサスペンション取り付け部の剛性アップ、さらにダッシュボードなどの内装パーツの取り付け方法見直し、各部の遮音材アップによって実現した卓越した卓越した静粛性を積極的に訴求したのである。セドリックの静粛性は確かに見事なものだった。

 騒音対策では有利なフレーム付きシャシーを採用していたライバルのクラウンより確実に静かだったのである。振動も少なかった。市場デビューを果たしたセドリックは、静粛性の高さと端正なスタイリング、巧みなラグジュアリー感の創出などがプラスとなり高い人気を確立。とくに上級モデルほど売れるメーカーにとっては嬉しいクルマだった。

直列6気筒が主流。後に国産初のターボを設定

 5代目セドリックはインテリアも直線を基調としたもので、ステアリング以外はメータークラスターやダッシュボード、一部車種に装備されるセンター・コンソールも直線構成となっていた。フロントシートはセパレートタイプとベンチタイプの2種、後部座席は一部グレードを除きセンターアームレスト付きのベンチタイプとなる。

 搭載されるエンジンはデビュー当時5種あり、ガソリン仕様はベーシックな排気量1988ccのキャブレター装備の直列6気筒SOHC(L20型・115ps/5600rpm)と電子制御燃料噴射装置付き(L20E型・130ps/6000rpm)、および排気量2753ccの直列6気筒SOHC、電子制御燃料噴射装置付き(L28E型・145ps/5200rpm)の3種だった。ディーゼル仕様は2種あり、いずれも直列4気筒OHVで排気量2164cc(SD22型・65ps/4000rpm)および1991cc(SD20型・60ps/4000rpm)があった。ちなみにエンジンライアップには、後に国産初の1998Cccの直列6気筒ガソリンOHCターボ(L20ET型・145ps/5600rpm)と、2792ccの直列6気筒OHCディーゼル(LD28型・91ps/4600rpm)が追加された。

 トランスミッションは3速オートマチックと4速/5速のマニュアル仕様が選べた。駆動方式は縦置きフロント・エンジンによる後ろ2輪駆動、4輪駆動仕様はない。サスペンションは前が旧型と同じダブルウイッシュボーン/コイル・スプリングだが、後ろは縦置き半楕円リーフ・スプリングの固定軸から、5リンク式/コイル・スプリングに変わった。これにより乗り心地はぐっと洗練されたものになった。ただし、ステーションワゴン/バン系は過荷重に対応するために旧型と同じ縦置きリーフ・スプリングのままとなっていた。

エアコンは3種。至れり尽くせりの快適装備を設定

 今日ではあたり前となっている装備が、この時代から装着されるようになる。たとえばエアーコンディショナーだけでも3種が用意されていた。それらの相違点は、単に前席のみ冷やすものから、後部座席にもアウトレットを設けたもの、さらに風量や湿度の設定までも自動的に行えるものまでがあった。

 オーディオ装置もAM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ、6スピーカーを備えるドルビー付きカセットデッキ、さらにTVチューナーまでが装備可能だった。また、表示する情報量は極めて限られたものであったが、車載用のトリップ・コンピューターも用意されていた。シートはパワーシート仕様も選べ(ブロアムのみ)、後席ヘッドレストは高さ調節式(SGL以上)といった具合だ。

 価格レンジは、最高級の2.8リッターエンジン装備の4ドアハードトップ ブロアム仕様(3速オートマチック)が285万円、最廉価版の4ドアセダン200Eデラックスが140万2千円となっていた。今日の感覚でいえば、レクサスLSなど、800〜1000万円オーバーのクルマに匹敵する存在だったはずである。国産高級車の変遷は、社会そのものの発展過程を見るようで興味深い。