ギャランΣ 【1983,1984,1985,1986,1987,1988,1989】

エアロフォルムに身を包んだ新世代FF

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FFレイアウトを採用した3代目

 三菱自動車のアッパーミドル・レンジに属するギャランΣ(シグマ)は、1983年8月にフルモデルチェンジして3代目に進化した。旧型との最も大きな違いは、全てのモデルが横置きエンジンによる前輪駆動方式を採用したことだった。モデルレンジは大幅に変えられ、同じシャシーを用いていた2ドアクーペ仕様のΛ(ラムダ)は、販売の縮小から生産中止となった。4ドアセダンに特化することで、ギャランΣはアッパーミドル・クラスとしての存在をさらに強めることになる。

Cd値=0.36を実現した先進エアロフォルム

 ギャランΣのデザインテーマは“光りと風の空間”。ロングホイールベースとワイドトレッドの大柄なボディを、空気力学の観点から徹底的にシェイプアップしていた。その結果誕生したのがエアロウェッジ・カプセルと呼ぶ独特のデザインである。

 空気抵抗を少なくし車体の浮き上がりを抑える大型エアダム一体バンパー、薄型ヘッドランプを備えるスラントノーズ、揚力を抑えたハイデッキ処理などが特徴で、Cd値は当時世界トップクラスの0.36。空気の流れを乱さないようサイドウィンドーのフラッシュサーフェス処理も徹底しており、高速走行時の風切り音も低く抑えていた。ちなみに100km/hクルージング時の騒音レベルは66dB。ひとクラス上の静粛性はギャランΣのエアロフォルムの成果と言えた。

便利なウイングコラム・スイッチ採用

 インテリアも斬新なものとなり、同時代のヨーロッパ車などに見られたヘッドライトをはじめ、フラッシャー、ワイパー、ヒーターおよびベンチレーターの操作コントロールをステアリングコラムに設けられたスイッチで集中的にコントロール出来るよう工夫されていた(三菱ではウィングコラム・スイッチと呼んだ)。後部座席は固定型でトランクスルー機構は備えられていないが、トランク容量はウェッジシェイプの採用により深さが100mm近く増加し、さらにスペアタイヤが床下に置かれるようになったことで大幅に増加している。

 エンジンは基本的には2種で、いずれも水冷直列4気筒OHCの仕様で、排気量1755ccと1997ccがある。グレードによって様々なチューニングが施され、ベーシックな1795cc電子制御キャブレター仕様105ps/5500rpmから、1997ccの電子制御インジェクション(ECI)にターボチャージャーを装備した145ps/5500rpmまで4種があった。遅れてディーゼルターボ仕様も登場する。

電子制御デバイスを積極投入!

 トランスミッションは4速および5速のマニュアル、3速および4速オートマチック、さらにスーパーシフトと呼ぶ4速×2速(サブミッション付き)のマニュアルシフトもあった。このスーパーシフトは、初代ミラージュに採用されおなじみになったもので、厳しさを増していた燃費規制をクリアするために設けられた燃費指向のトランスミッションであった。
 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトレーリングアーム&トーションビーム・アクスルの組み合わせで、最上級グレードのロイヤルにはエアー圧を使った自動車高調整装置を含んだ電子制御サスペンションが装備される。ブレーキがグレードによってディスク/ドラムと4輪ディスク仕様に使い分けられていたのは時代性であった。

 ギャランΣ(販売ディーラーが異なるだけで基本的には同じモデルのエテルナΣもあった)は、当時としても最も販売競争の熾烈な1.8〜2.0リッター・クラスに登場したわけだが、ライバルとの差別化を図るために、数々の電子制御デバイスやターボチャージャーの装備など、三菱の持てる自動車技術の全てを注ぎ込んだモデルでもあった。当時、これだけの電子制御デバイスを市販車に採用した例は少なかった。このギャランΣシリーズの登場で日本車は電子制御技術の拡大採用へと大きくステップアップすることになったのである。