スカイラインRS 【1981,1982,1983,1984,1985】

走り鮮烈。復活したDOHCエンジンの“赤バッジ”

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日本中のファンが歓喜した「神話」の誕生

 スカイラインGTが、一躍有名になったのは、1964年5月に鈴鹿サーキットで開催された第2回日本グランプリのGT-Ⅱクラスのレースだった。当時最新鋭だったドイツのポルシェ904とデッドヒートを演じ、7周目にポルシェを抜いてトップに立ったのだ。多分にフロック(幸運)の要素はあったが、たとえ一時的にせよ、純国産のスカGが外国製のレーシングマシンを抑えることができたのだから、サーキットの観客のみならず、日本中の自動車ファンが歓喜したことは想像に難くない。いわゆる「スカイライン伝説」の誕生である。

 日本グランプリのために急きょ開発されたスカイラインGTは、以後日本を代表するスポーツ/GTマシンの代名詞的存在になる。当時スカイラインGTは、第二次世界大戦中に軍用機の生産に携わっていた旧・立川飛行機が、敗戦後に改組されて自動車生産に転身した東京電気自動車を経て、プリンス自動車となったメーカーで開発されたモデルであり、量産モデルのスカイライン1500をベースに、ホイールベースを200㎜延長し、エンジンルームを拡大、そこにサイドドラフト型のウェーバーキャブレターを3基装備し、圧縮比を上げるなどのチューンアップを施したグロリア用の排気量1998㏄直列6気筒SOHC(G7型、出力125ps/5600rpm)を組み込んでいた。

 小型車に排気量の大きなエンジンを組み合わせるという、性能向上には最もお手軽な手法を採ったことになる。レース直前にホモロゲーションの取得に必要な100台を生産、レース出場を認められた。量産が本格化した1965年以降はプリンス スカイライン2000GT(S-54B)の名で販売された。

GT-RのDNAを受け継ぐRS

 スカイライン2000GTは極めて特殊な成り立ちを持ったモデルだったが、以後、1966年8月にプリンス自動車が日産自動車と合併した後も日産プリンス スカイラインとなっても継続生産され、1969年2月に発売されたスカイライン2000GT-Rを頂点に、モータースポーツでの圧倒的な強さも手伝って、日本車の本格的なGTとしての地位を確実なものとした。

 1981年10月に登場したニッサン スカイラインRSは、1970年代初頭に起こったオイルショックや省エネルギー指向の高まりなどの社会的な要因から、生産を中止したGT-Rのイメージを受け継ぐモデルとして登場した。このRSに先立つ2カ月前の1981年8月にデビューしていた6代目スカイライン(R30系)をベースとして造り上げられたスペシャルモデルであり、シャシーやボディなど基本的には標準型のR30スカイラインと共通だったが、エンジンを始めとする各部はモータースポーツへの参加を前提に開発されていた。いわば、エボリューションモデルに近い。ボディバリエーションは、5人乗りでノッチバックスタイルを持つ4ドアセダンと2ドアハードトップの2種を設定した。

DOHC16Vの珠玉の高性能ユニットを搭載

 RSの要となるエンジンは、フロントに縦置きとされ、後2輪を駆動する。日産の伝統的な直列6気筒DOHCではなく、直列4気筒DOHC16Vのレイアウトで、多くの量産型高性能エンジンが在来の実用車のエンジンをベースに、シリンダーヘッドのDOHC化や高圧縮比化と言った高度なチューンアップを加え、コストを抑えると言ったものではなく、RSのためにエンジンブロックから全く新しく設計されたものとなっていた。FJ20E型と呼ばれる4気筒エンジンのシリンダーブロックは、耐久性を考慮して鋳鉄製とされ、冷却水を通すウォータージャケットはシリンダーブロックの全長に及ぶ。

 FJ20E型のシリンダーヘッドは熱伝導性に優れるアルミニウム合金製で、ここにも冷却に対する配慮が見られる。カムシャフトの駆動は、ダブルローラーチェーンによる2段階方式で吸排気バルブは各2個の4バルブ形式を採る。2本のカムシャフトからはタペットやロッカーなどを介さず、直接駆動される。高回転時での正確なバルブ駆動を実現するためだ。また、燃料供給システムは電子制御燃料噴射だが、エンジンのスロットルレスポンスを向上させるために、シリンダーごとに理想的なタイミングで燃料を噴射する気筒別噴射システムが導入された。

 燃焼室形状は理想形に近いペントルーフ形状とされ、高出力化に貢献している。こうした高回転対策のため、ノーマル仕様のままでも回転限界は7500rpmとなっていた。量産型の2リッターエンジンとして驚異的な高性能と言っていい。ちなみに、FJ-20E型エンジンの圧縮比は9.1、最高出力は150ps/6000rpm、最大トルクは18.5㎏-m/4800rpmとなっていた。もちろん、当時の国産2リッターエンジンとしては最強の性能であった。

足回りはハード仕様。2段調整式ダンパーを採用

 トランスミッションはフルシンクロメッシュ機構を持つマニュアル5速型のみの設定で当初オートマチック仕様は設定されていない。後車軸に置かれたデファレンシャルギアには、ノンスリップデフを標準で装備していた。

 サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後ろがセミトレーリングアーム/コイルスプリングで前後にスタビライザーを持つ。ショックアブソーバーは2段階調節式を装備。ブレーキはサーボ機構付きの4輪ディスクで、前輪用は冷却効果に優れたベンチレーテッドタイプとなっていた。ステアリングギアはボール循環式。1982年には60偏平タイヤを採用し、アルミホイールを標準装備する。

軽い車重も高い運動性能の源泉

 性能向上と競技車両への転用を前提としているため、軽量化は徹底しており、従来の最高性能エンジンである直列6気筒SOHCにターボチャージャーを装備したL20ET型に比べて40㎏も軽くなっている。その他、室内装備ではオーディオシステムはもちろん、ラジオさえも装備されず、後部トランクの床部分に収められるスペアタイヤも重量の軽いテンパータイヤとされた。こうした軽量化により、RSの車両重量はセダンで1105㎏、ハードトップで1115㎏となっていた。価格は4ドアセダンが212万1000円、ハードトップが217万6000円で、例えば従来のモデルであるハードトップ ターボGT・ESの196万2000円よりもいくぶん高価に設定されていた。

 スカイライン久々のレーシングカーライクなRSは、ターボそして1984年2月にインタークーラー付きターボチャージャーを装備したターボRSを加えて発展。6気筒エンジンのGTシリーズとは別種のマニアックな存在として高い人気を誇った。

3種のエンジンが用意されたRSモデル

 4気筒DOHC16VユニットのFJ20系エンジンを搭載したRSモデルは、3つのタイプが存在した。NA仕様、ターボ仕様、インタークーラーターボ仕様の3種で、いずれも6代目R30型スカイラインが積む。7代目スカイラインからは6気筒のDOHC24Vユニットが誕生したこともあり、RS系スカイラインは6代目のみで消滅した。その意味でRSは希少性が高い。

 3タイプそれぞれのパワースペックをまとめてみよう。1981年10月に登場したNA仕様は最高出力150ps/6000rpm、最大トルク18.5kg-m/4800rpmで、パワーウェイトレシオ7.43kg/ps(ハードトップ)。1983年2月にデビューのターボ仕様は、最高出力190ps/6400rpm、最大トルク23.0kg-m/4800rpmで、パワーウェイトレシオ6.18kg/ps。そして1984年2月に誕生のインタークーラーターボ仕様は、最高出力205ps/6400rpm、最大トルク25.0kg-m/4400rpmで、パワーウェイトレシオ5.73kg/psを誇った。