スカイライン2000GTターボ 【1980,1981】

先進技術で走りを磨いた“ジャパン”の真打ち

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スポーティ路線に転じた第5世代のスカG

 日産自動車は1977年8月にスカイラインのフルモデルチェンジを実施し、第5世代となるC210型系を発売する。キャッチフレーズには「日本の風土が生んだクルマ」であることを象徴して“スカイライン・ジャパン”と冠した。開発コンセプトは「伝統のスカイラインイメージを継承しつつ、さらに新しい時代の要請にマッチしたクルマ」の創出。具体的には、走りのイメージを強調した“ハコスカ”路線に回帰するとともに、時代に即した安全性、省資源、低公害、居住性の向上などを果たした新世代のスポーティツーリングカーに仕立てることを目標とする。

 高性能バージョンの2000GTシリーズは、旧型の“ケンメリ”と同様に4ドアセダンと2ドアハードトップの2タイプのボディを設定。グレード展開はL20型エンジンを搭載する2000GTとL20E型エンジンを採用する2000GT-Eを軸に、上級仕様のGT・Lタイプ/GT-E・Lタイプ/GT-E・Xタイプ、そして新設定のスポーティモデルとなるGT-E・Sタイプをラインアップした。

当初の搭載エンジンは2種のL20型

 基本骨格には高張力鋼板を多用して軽量化を果たし、同時に構造の合理化を図った新モノコックボディを採用。路面追従性および剛性を高めた改良版の前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの4輪独立懸架サスペンションをセットする。スタビライザーはフロントが全仕様標準で、Sタイプのみリアにも装備した。制動機構はマスターバックサイズを拡大した前ディスク/後リーディングトレーリングが基本で、Sタイプはリアもディスク化。タイヤはSタイプおよびハードトップGT-E系に185/70HR14を装着し、それ以外は6.45-14-4PRを採用した。

 搭載エンジンは燃料供給装置にニッサンEGIを採用したL20E型1998cc直列6気筒OHCユニット(130ps/17.0kg・m)とツーバレルキャブレターを組み込んだL20型1998cc直列6気筒OHCユニット(115ps/16.5kg・m)の2種。全ユニットにNAPS(日産排出ガス清浄化システム)を採用したうえで、来るべき昭和53年排出ガス規制に対応できるシステムを搭載可能とした。トランスミッションはGTおよびGT・Lタイプに4速MTとニッサンマチック(3速AT)、それ以外のグレードに5速MTとニッサンマチックを設定。ファイナル比は全TMともに4.111にセットした。

グランドツーリングカーにふさわしいスタイルを実現

 スタイリングについては、従来のウエッジ型シルエットとサーフィンラインの伝統を受け継ぎつつ、ボディの大型化や“機能美”“高品質感”を追求。全体的には、スポーティツーリングカーにふさわしい安定感とダイナミック感を持つエクステリアに演出。また、GTの専用アレンジとしてハニカム型のフロントグリルや放射状レンズカットの丸形テールランプなどを採用した。

 インテリアは、居住空間を広げたほか、ガラス面積の拡大や明るい室内色の採用などにより、ソフトで上質なキャビンスペースを構築する。また、GT-E・XタイプおよびSタイプには可変照度スイッチ付きメーター照明を、GT・Lタイプ系およびGT-E・Xタイプには水晶発振式デジタル時計を装備した。フロントシートはGT-E・Xタイプにヘッドレスト埋込式、それ以外のグレードにヘッドレスト差込式のローバックタイプを装備。シート表地はGTにニットレザー、GT・Lタイプに起毛トリコット、GT-E・Xタイプに起毛平織り、GT-E・Sタイプに最高級ジャージを採用した。

昭和53年排出ガス規制に適合してC211型系に移行

 第5世代のC210型系“スカイライン・ジャパン”は、1年ほどが経過した1978年8月になると一部改良を行ってC211型系へと移行する。改良のメインテーマは、最も厳しいとされる昭和53年排出ガス規制への対応だった。
 世界トップレベルの厳しさといわれた昭和53年規制に対し、開発陣は2000GT系に採用するL20E型およびL20型エンジンに様々な排出ガス対策を施す。まず点火システムには、新開発のハイブリッドICフルトランジスターイグナイターを装備。従来のフルトライグナイターの利点に加え、より精度が高く、かつ高出力と耐振性に優れたシステムとした。また、使用空燃比(空気対燃料の比率)がつねに理想空燃比(理論上ガソリンが完全燃焼する空燃比)の近辺に制御されるO2センサーも組み込み、排出ガスの清浄化とともに優れた走行性能と経済性を実現する。そして、排気系には新開発の無交換式三元触媒(Three-Way Catalyst)装置をセット。白金(プラチナ)やロジウムなどの貴金属を組み合わた触媒コンバーターは、有害物質を有効に還元した。

“電子制御エンジン”と称する新パワートレインを採用したスカイライン2000GTは、セダンとハードトップの2タイプのボディに、L20Eエンジン(130ps/17.0kg・m)搭載の2000GT-E/2000GT-E Lタイプ/2000GT-E Xタイプ/2000GT-E Sタイプ、L20(S)エンジン(115ps/16.5kg・m)搭載の2000GT/2000GT Lタイプという6グレード、2ボディで計12グレードが用意される。また、納車時には“排出ガス53年規制適合車”のステッカーを貼付していた。

“省燃費”と“高性能”を両立させた「GTターボ」デビュー

 1979年7月にはマイナーチェンジが敢行される。もっとも大きく変わったのはエクステリアのアレンジで、2000GT系のヘッドランプは初代スカGであるS54以来続けてきた丸型4灯式から角型2灯式へと刷新。同時に、フロントグリルを横桟基調の端正なデザインに変更する。グリル内にはスカイラインの頭文字のSをモチーフとする新エンブレムも組み込んだ。
 インテリアに関しては、インパネおよびメーターパネルのデザインを改めたことが訴求点。メカニズム関連では、L20E型ユニットの点火進角の見直しやファイナルギア比の変更(4.111→4.375)、リアサスペンションへの非線形スプリングの装着などを実施した。

 1980年4月になると、高性能バージョンの真打となるモデルをラインアップに加える。既存のL20E型ユニットに排気エネルギーを活用するターボチャージャー機構を組み込んだL20E-T型1998cc直列6気筒OHCターボエンジンを搭載する「2000GTターボ」シリーズを設定したのだ。キャッチコピーは「“省燃費”と“高性能”を両立させた夢のエンジニアリング」。グレード展開はセダンとハードトップともに2000ターボGT-E/2000ターボGT-E・Lタイプ/2000ターボGT-E・Xタイプ/2000ターボGT-E・Sタイプで構成した。

ターボはレーシングカーR383の技術を投入

 プロトタイプスポーツカーのR383を開発する過程で学んだターボ技術を盛り込んだL20E-T型エンジンは、圧縮比をL20E型の8.8から7.6へと引き下げたうえで、最適な点火時期を得るために進角を電子制御するノックセンサーや専用設定のニッサンEGIなどを組み込む。エンジン特性としては2100rpm付近からスムーズにターボが効き始め、その後5600rpmのクライマックスへと一気に到達するようにチューニングした。

 最高出力は145ps/5600rpm、最大トルクは21.0kg・m/3200rpmを発生する。トランスミッションは専用セッティングの5速MTとニッサンマチック(3速AT)の2機種で、ドライブシャフトのジョイントには等速型を採用。懸架機構は強化タイプの前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの4輪独立懸架で構成し、ステアリング特性はクルマの性格に合わせて弱アンダーにセットする。制動機構は前ディスク/後リーディングトレーリングで、Sタイプには後ディスクを採用した。

 2000GTターボの追加によって、高性能イメージを一段と高めた“スカイライン・ジャパン”は、1981年8月になると全面改良が行われ、第6世代のR30型系、通称“ニューマン・スカイライン”に移行する。しかし、デビュー当初は旧世代のジャパン、とくに2000GTターボの人気がなかなか衰えなかった。伝統の“サーフィンライン”(R30型系では廃止されていた)を配したちょっとワルっぽく、スポーティなルックスと、高性能なターボエンジンによる優れた走りが、若者層から衆望を集め続けたのである。歴代スカイラインの中でも、伝統とハイテクが最も巧みに、かつ分かりやすく融合したモデル−−それがジャパン2000GTターボだった。歴代スカイラインの中でも人気の高い名車である。