リーフ 【2010,2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017,2018】

持続可能なゼロエミッション社会に向けた回答

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走行中CO2を排出しない無公害車

 日産のZEV(Zero Emission Vehicle = ゼロエミッション車)である電気自動車(EV)のリーフは、2010年12月から日本での市販が開始された。車名のリーフ(Leaf)は、植物の葉を意味するLeafにちなんだもので、無公害車であることを象徴している。

 リーフは、走行中にCO2などの排出ガスを一切排出しないピュアEV。高い環境性能を実現したゼロエミッション車である。今後とも地球の環境を汚すことなく、持続可能な社会への抜本的な構造変化が求められる21世紀。リーフは、それに対する日産の回答だった。
 80kWの最高出力を持つモーターと、高密度リチウムイオンバッテリーによって力強く、スムーズな走りと、200kmの十分な航続距離を実現。さらに国や自治体と一体になったEVインフラの整備の積極化で、新たなクルマ社会の中心の座を目指している。

たま電気自動車から60年の時を経て新世代EVが誕生

 電気自動車というシステムは、最近始まったものではない。実は、自動車という交通手段が実用化され始めた19世紀末から20世紀初頭の時代に、蒸気機関やガソリン機関、ディーゼル機関などと並んで、電気システムは自動車の動力源として大きなポジションを占めていたのである。とくにアメリカでは操作が簡単であること、部品点数が少なく、製造が容易であること、オイルの飛散がなく排気ガスが出ないことなどの理由で、特に女性や高齢者ドライバーにもてはやされた。だが、ガソリンエンジン車や蒸気エンジン車に比べて、絶対的に短い航続距離と搭載しているバッテリーの充電に要する時間が長いことから、次第に市場性を失う。加えて、1912年に電気式スターターが実用化されると、初期の電気自動車は過去の遺物となった。

 日本でも、第二次世界大戦の敗戦直後の1947年ころ小型の電気自動車が作られていたことがある。旧・立川飛行機の後身である東京電気自動車が生産した「たま電気自動車」がそれで、ガソリンの供給が逼迫していた特殊な社会事情から人気を集めたが、1950年に朝鮮動乱がぼっ発し、バッテリーの主要な部品である鉛が高騰したことから生産を中止している。生産台数はセダンとトラック合わせて80台前後であったと言う。いわば日産リーフの大先輩というところだ。ちなみに、東京電気自動車製造株式会社は、やがてガソリンエンジン車の生産に転身してプリンス自動車となり、1966年には日産自動車に吸収合併されることになる。不思議なめぐり合わせである。

5名乗車の実用モデル、リーフ

 2010年12月に発売されたリーフは、5人乗りの5ドアハッチバックで、ホイールベースが2700㎜という、かなりの大型車となっている。全長は4445㎜、全幅1770㎜、全高1545㎜である。スタイリングは、旧型のマーチを拡大したような印象で、曲面を多用している。現代的なスタイルはクルマらしいと言えば言えるが、新世代の電気自動車であるのだから、もう少し突飛なデザインでも良かったのでは?と疑問が残る。

 駆動方式はフロント部分に電気モーターを置く前輪駆動で、4輪駆動仕様などはない。モーターは最大出力80kW、最大トルク280N・mの性能を持つ3相交流式のEM61型と呼ばれる永久磁石型同期電動機で、床下に搭載されているバッテリーは、日産と日本電気(NEC)の共同出資で設立されたオートモーティブ・エナジー・サプライ社で製造されるラミネート型リチウムイオンバッテリーで、バッテリーセルを192個の並列接続とし、90kW以上の安定した電力取り出しが可能だと言う。

 充電に要する時間は、使用状況や温度や湿度などの環境によっても微妙に差異が生ずるが、3相200V電源の場合、急速充電を使って全容量の80%まで充電するのに30分でとされている。満充電までは8時間、100Vの家庭用電源(単相100V)で容量0から100%充電するには、およそ28時間を要する。バッテリーの特徴は完全密閉型とされていることで、当然だが海水に浸かっても漏電しなかったと言う。バッテリーの充電ソケットは急速充電用と家庭電灯線用の2個がセットされているが、その場所は車体先端部にカバー付きで1か所のみとなっている。クルマの駐車位置が充電器の場所によって制限されることも起こるわけだ。

走りを支えるメカニズム

 ガソリンエンジン車のように、エンジンの動力を断・接するクラッチ装置や回転を減速するためのトランスミッションなどはない。走行速度のコントロールは、スロットルペダルに相当するレギュレーターのペダルでスタートから最高速度まで全速度域をカバーできる。

 サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後がトーションビーム/コイルスプリングとなっている。車重はデビュー当初のモデルでは1520㎏であり、5人乗りの乗用車としては決して軽くはない。この車重を支えるため、スプリングやショックアブソーバーは強化されている。ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクで、サーボアシストが付く。ブレーキング時にバッテリーへ電力を還元する回生ブレーキシステムも備えている。装備されるタイヤは前後輪とも205/55R16サイズのエコロジー仕様のもの(ブリヂストン製ECOPIA EP150など)となっている。

米国、欧州でも販売を行うワールドカー

 従来のモデルとは全く異なるシステムと構造をもった電気自動車であるだけに、その生産も今までとは全く異なる手法で行われる。2010年10月からの生産は、神奈川県にある日産追浜工場のみで行われるが、2012年からはアメリカの日産工場で、さらに2013年には英国のサンダーランド工場でも生産が開始される。また、バッテリーや電動モーターの生産もポルトガルやアメリカでも行われる計画となっている。世界中からの集合体で造り上げられる、国際的なモデルと言って良い。生産台数は日本国内で年間5万台、アメリカでは15万台、英国でも5万台を超える生産を計画。日産リーフは、2011~2012年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。