レクサスIS 【2005,2006,2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013】

世界を目指したプレミアムスポーツ

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1989年アメリカ市場からスタート

 LEXUS(レクサス)は、1989年にトヨタがアメリカで立ち上げたプレミアムブランドである。日本ではセルシオとして販売する新世代大型高級車を、アメリカで売り出すのに際して設定された新しいプレミアムブランドで、従来のままのトヨタの名では、高級車としての存在感が薄いというのがレクサス誕生の理由であった。

 アメリカの高級車マーケットは、日本の高級車のそれとはかなり様子が違っう。日本では、「高級車」と呼ばれるモデルは、レクサス(セルシオ)の誕生までは、トヨタ・センチュリー、日産プレジデントくらいしか存在しなかった。一方のアメリカには、GMのキャディラック、フォードのリンカーン、さらにかつてのクライスラーにはインペリアルと言うブランドがあった。メルセデス・ベンツやBMWといった欧州製プレミアムもアメリカ市場が主戦場だ。それらのモデルはいずれも5万ドル以上の高価格車でありながら、年間の販売台数は数万台を超えている。アメリカの自動車市場の奥深さと巨大さを思い知らされる数字だ。こうしたマーケットに、全く新しいブランドが上陸しようと言うのだから、月並みな価格戦略やサービスの充実などだけでは到底通用しないことは誰の目にも明らかなことであった。

 トヨタは、まずトヨタ(TOYOTA)と言う従来のブランドから全く切り離した存在としてレクサスを立ち上げた。その手法は実に徹底したもので、販売店系列を新規に築き上げ、店舗のスタイルから販売方法に至るまで、全てを新しく近代化した。ユーザーが販売店を訪れても、それがトヨタ系列の販売店だとは分からないほどだったという。アメリカ市場で構築されたレクサス・ブランドには当初LS(日本名セルシオ)とES(同ウィンダム)の2車種しか無かったが、それでも初年度だけでも1万6300台を販売しており、新規参入の高級車ブランドとしては異例とも言える成功を収めた。

 アメリカ市場での成功を受け、レクサス・ブランドを日本市場へも逆輸入の形で導入しようと考えるのは当然で、周到に準備をし2005年から日本市場でのレクサス・ブランドの展開が開始された。

ISはアルテッツァの発展バージョン

 2005年に日本でも販売が開始されたISシリーズは、以前のトヨタ・ブランドではトヨタ・アルテッツァとして売られていたモデルの進化版である。とはいえ、アルテッツァのコンセプトをそのままにレクサスへと移行したわけではない。たとえば、ボディサイズは、全長4575mm、全幅1795mm、全高1430mm、ホイールベースは2730mm。アルテッツァと比べて全長で175mm、全幅で75mm、全高で20mm、ホイールベースで60mmそれぞれ大きくなっている。つまり、アルテッツアよりひとまわり上級クラスへと成長させ大きなボディを組み合わせたということになる。

 スタイリングは、レクサスの一員にふさわしくまったく新しくデザインされた。日本舞踊などに使われる扇をイメージした、細いクロームメッキの縦バーで構成されたラジエターグリルの中央には、巨大なレクサスのエンブレムが付く。空力的にも洗練さが増し、ボディ外板の強度を増すためのプレスラインの数は多くなった。

装備充実、快適クルージングを約束

 ISのインテリアは上質で快適。とくに後部座席の座り心地は素晴らしい。スペース的には平均的だが入念な作り込みにより快適な空間になっている。インスツルメンツパネルも、レクサス・ブランドに馴染む高級感溢れる仕上がりとなった。

 内装を含めて仕様は4種あり、HDDナビゲーション、CD/MD付きオーディオシステム、前後席パワーシート、ディスチャージ・ヘッドライト、VSC、前後8個のエアバッグ、クルーズコントロール、ETCを装備する標準型を基準に、スポーツサスペンションと18インチ・タイアを加えたスポーティ指向のバージョンS、本革張りシートやウッドパネルなどを加えたラグジュアリー版のバージョンL、さらにメッシュタイプのフロントグリルやリアスポイラー、スポーツシートを装備したバージョンFを設定する。
 別格のスペシャルモデルとしてISのスポーツポテンシャルを磨き込んだV8/423psエンジンを積むIS Fも2007年秋に登場。2009年5月にはIS250に魅力的なコンバーチブルモデル、IS250Cも加わった。

洗練のV6と怒濤のV8ユニットをラインアップ

 駆動方式は基本的にはフロント・エンジン、リア・ドライブである。搭載される主力エンジンは2種あり、いずれもガソリン直接噴射システムを持つV型6気筒だ。排気量は2499ccと3456ccである。2.5リッター仕様がIS250を名乗りスペックは215ps/6400rpm、3.5リッター仕様はIS350で318ps/6400rpmを発揮する。トランスミッションは6速オートマチック。また、IS250に限って、フルタイム4輪駆動システムを備えるAWD仕様も揃えられる。

 フラッグシップのIS Fのパワーユニットは専用設計の4968ccのV8。最高出力423ps/6600rpm、最大トルク51.5kg・m/5200rpmと圧倒的でトランスミッションは8速オートマチックが組み合わされる。ブレーキは全車4輪ディスク。ABSやVDIS方式のスタビリティ・コントロールも装着。価格はIS250が392万円から488万円、IS350が496万円から532万円、IS Fは780万円となり、アルテッツァからは大幅な価格アップとなった。しかし一新されたスタイリングや大きく進化した安全装備、充実した快適装備の数々を考えると、相当の割安感がある。

トータル性能という新概念を提唱

 日本で展開するレクサス・ブランドでは身近な存在のISシリーズは、硬派なスポーツセダンと言うポジションが与えられている。スポーツセダンと言うと、高性能を追求する余りに豪華さや快適性と無縁になりやすいが、ISシリーズは今までのスポーツセダンのイメージを大きく塗り替える完成度と言える。

 BMWやメルセデスといった世界のプレミアムモデルに、トータルな性能の高さと高いクオリティで対抗出来る高性能サルーンに仕上がっている。単に速さだけでなくブランド性を含めた総合的な仕上がりで勝負するこのやり方は、ようやく日本の市場でも理解されるようになって来たようだ。レクサスISシリーズ、このモデルは後年、クラシックと呼ばれる存在になるかもしれない。