ジュニア 【1962,1963,1964,1965,1966,1967,1968,1969,1970】
セドリック・イメージのタフなトラック
1962年1月にモデルチェンジされ、2代目に進化した日産の中型トラック、ジュニアはセドリック・イメージのスタイリングとメカニズムで好評を博した。1956年10月に誕生した初代ジュニアも、当時ノックダウン生産していたオースチン用1489cc(50ps)エンジンを搭載し、曲面タイプの大型ウィンドーを採用するなど乗用車感覚をセールスポイントとしていた。それを考えると2代目がセドリックの雰囲気を携えていたのは当然といえば当然だった。タフさがなにより要求されるトラックの分野でも、スタイリングをはじめとする乗用車ムードは大きな訴求ポイント。むしろ毎日の仕事の相棒だからこそオーナーのプライドをくすぐる演出が重要だったのである。
2代目ジュニアがセドリックらしさを感じさせたのは、4灯式ヘッドランプを採用したフロントマスクだった。ただしセドリックが、縦型4灯式からジュニアと同様の横型4灯式マスクに変更するのは1962年の10月。横型4灯式マスクの採用にかけてはジュニアのほうがセドリックに先んじていた。ジュニアの好評を受け、セドリックのヘッドランプを横型に変更したとは考えにくいが、ボンネットに2本のオーナメントを配置することを含め、ジュニアとセドリックは明らかに同じ造形テーマでまとめられている。
ボディのスリーサイズ(全長×幅×高)はほぼ小型車規格いっぱいの4660×1690×1715mm。これはセドリックの4590×1690×1505mmと比較してひと回り大きく、初代ジュニアと比較しても70mmほど全長が伸びていた。ジュニアの伸びやかな印象は、このボディサイズに負うところが大きかった。トラックとして大切な最大積載量は初代の1.75トンから2トンへと拡大していた。とはいえ初代よりノーズを伸ばしたことの影響で荷室長は初代の2450mmから2310mmへとむしろ短くなっている。ちなみに同一車両サイズで最大積載量が1.5トン積みのタイプも用意していた。
スタイリングとともに、セドリックの血統を感じさせたのはエンジンである。2代目ジュニアは2トン積みが1883cc、1.5トン積みが1488ccエンジンを搭載していたが、ともにセドリックから流用したものだった。とくに1883ccの直4OHVエンジンは当時の小型トラックとしては最強の部類に入るパワフルさがセールスポイントで、最高出力85ps/4800rpm、最大トルク15.2kg・m/3200rpmを発揮した。セドリック用と比較して3ps/0.4kg・mほど数値的には劣っていたが、これはレギュラーガソリンに対応させるため圧縮比をセドリック用の8.5から8.0に低くしたためだった。それでも当時85psのパワーは圧倒的で、荷物を満載した状態でも急坂をパワフルに上る余裕でユーザーを魅了した。トランスミッションは4速コラムシフトでトップスピードは110km/hと公表されていた。
1.5トン積みの1488ccエンジンのスペックは71ps/5000rpm、11.5kg・m/3200rpmとセドリックと共通。1883ccユニットと比較するとやや見劣りするが、こちらもセドリック用ユニットだけに滑らかさと静粛性に優れ、トップスピードも105km/hをマークするなど実用性は十分だった。
足回りにもセドリックの影響が見られる。サスペンション形式はフロントがダブルウィッシュボーン、リアがリーフ・リジッドとセドリックと共通。フロントのばねこそセドリックのコイルに対してトーションバーを採用していたものの、トラックとしては快適性を重視していたことは明らかだった。当時のカタログでは「悪路でもノーピッチングのやわらかな乗り心地で、高速安定性も乗用車なみです」と足回りの優秀性をアピールしていた。
室内はスタイリングやメカニズムと比較するとセドリックのムードは薄い。クッション性を重視した3名掛けのシートこそ乗用車イメージだったが、丸型2連メーターを配置したシンプルなインスツルメントパネルは、セドリックというよりブルーバードのイメージが強かった。標準状態ではヒーター、ラジオ、時計、ウィンドーウォッシャーなどがすべてオプションというシンプルさもトラックという事実を印象づけた。ただし軽いタッチで確実に操作可能な吊り下げ式ペダルや、フレッシュエアを自在に取り入れられるベンチレーション機構など、ユーザーフレンドリーな工夫を随所に盛り込んでいたのも事実。けっして豪華ではないが2代目ジュニアはビジネスを相棒として完成度の高いトラックだった。
2代目ジュニアには、頑丈なフレームシャシーの特質を生かしてさまざまなスペシャルボディが架装された。当時のカタログには高床式トラック、高所作業車、ライトバン、ダブルキャブトラックなどが紹介されていたが、身近な存在として親しまれたのが消防車。都市部はもちろん地方の消防署にも多くが配備されたポピュラーな消防車である。
ジュニアの消防車は4405×2000×2100mmという比較的コンパクトなサイズを武器に、大型車が入れない狭い道に面した火災現場で大活躍した。大型消防車と同等のパワフルな放水能力を持ち、パワフルな3956ccの直列6気筒エンジン(130ps)を積むことで抜群の機動力を発揮したのが魅力だった。数々の消化用装備により3020kgに達した車重をものともしない力強さはさすがの一言。ちなみに消防車の正式車名は「ニッサン中型消防車FR40型」で、ジュニアのネーミングは冠されていない。