エテルナΣ 【1980,1981,1982,1983】
先進ディーゼルを設定したシックな上級サルーン
1970年代半ば、日本の自動車メーカーは販売台数の拡大を狙って、販売チャンネルを増やすことに躍起となっていた。日本の自動車メーカーとしては、比較的後発(実質的には1960年に発売した三菱500が最初の量販乗用車)となった三菱自動車は、強大な三菱グループを後ろ盾に企業スケールを急速に拡大、1970年代までには軽自動車から大型セダンまでのフルラインアップを完成していた。
イタリア語で「無限」「不滅」を意味するエテルナ(Eterna)を車名とし、それにギリシア文字で集大成などの意味を持つ∑を加えた新シリーズが登場したのは1978年3月。エテルナ∑は新設された販売チャンネルの一つだったカープラザ店系列の専売車種でもあった。内容的にはギャラン店系列のギャラン∑とのバッジエンジニアリング(同一のモデルの意匠やエンブレムを変更して販売する手法)であり、細部を除いて同じモデルとなっていた。エテルナ・シリーズには、パーソナルなスペシャルティクーペとしてエテルナΛもあり、こちらのモデルも細部が異なるだけで、内容的にはギャランΛと同じであった。
初代のギャラン・シリーズは1969年12月に発売されており、1978年3月にデビューしたエテルナ∑は3代目ギャランの派生モデルだった。エテルナ∑は1980年4月にフルモデルチェンジされ第2世代となる。2代目も、内容的にはギャラン∑との兄弟車であることに変わりはない。ただし、車名からはギャランの名が外れ、エテルナ∑の単独ネームとなった。
スタイリングは、旧型のイメージを色濃く残したものだが全面的に刷新された。シャープさの中にも高級感を増した造形となっていた。エクステリアの特徴は、フロントマスクが、優れた空力特性を得るため僅かにスラントさせたことと、ラジエターグリルがヘッドライトよりも低く横長になっていること。
インテリアは直線基調のメーター・ナセルを中心に円形の速度計とエンジン回転計を備える。シート表皮やドアの内張りなどはグレードによって異なるが、全体的に豪華さを増している。これは全モデルに共通する内容となっている。全長4480×全幅1680×全高1370mm(GSLスーパー)の5ナンバーサイズに収まるボディサイズは、トヨタのマークIIや、日産スカイラインなどのライバルより全長がやや短かった。駆動方式は全車がオーソドックスなFRである。
エテルナΣシリーズに搭載されるエンジンは、当時先進のターボチャージャー付きディーゼル仕様を含め、1.6ℓ~2.3ℓまで排気量の違いで4種、エンジンチューンの違いを含めると全体で7種が揃えられていた。旧型からのキャリーオーバーは1.6ℓの直4ガソリン(86ps)のみで、後はすべてが新設計ユニットである。
話題を集めたディーゼル仕様は、排気量2346㏄の4D55T型・直列4気筒SOHCターボ(95ps/4200rpm)で、三菱独自のサイレントシャフトと、燃料噴射時期自動制御機能。さらにトランスミッションにフルードカップリングを加えることで低燃費かつ静かなディーゼルを実現していた。ガソリンの上級エンジンは「シリウス80」とネーミングされた電子制御インジェクション(ECI)を組み合わせた排気量1997ccのG63B型・直列4気筒SOHC(120ps/6000rpm)だった。GSRグレード専用ユニットで、トランスミッションは5速マニュアルが組み合わされた。ちなみにGSRはサスペンションも4輪独立タイプにグレードアップする。
デビューから約1年半後の1981年11月には、2000GSRに最強モデルのターボ仕様が加わった。排気量1997㏄のガソリンG63BT型・直列4気筒SOHCターボ(145ps/5500rpm)ユニットを搭載したモデルだ。性能を考えると比較的リーズナブルな価格設定とされ、充実した装備と相まって好評を博した。ちなみに三菱がターボモデルを積極的に投入したのは、少ない車種構成でライバル各車の多彩なモデル展開に対抗するには、エンジン性能のバリエーションを増やすのが効果的だったからだ。三菱の高い技術力を存分に生かしたターボの装着はまさに最良の手段といえた。
端正なスタイルと三菱の持てる先進技術を盛り込んだエテルナ∑シリーズは、ジェントルで高性能な大人のセダンとして好評を博した。実質機能を磨いた欧州調の正統派サルーンとして記憶されている。