キューブ 【1998,1999,2000,2001,2002】

スクエアボディの多機能車ヒット作

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実用性を徹底したパイクカーの末裔

 先鋭的かつ革新的なデザインのモデルを意味する1987年のBe-1に始まる日産のパイクカーのシリーズは、続くパオとエスカルゴ(1989年)を経て、フィガロ(1991年)、ラシーン(1994年)などへと続くことになる。スタイリングデザインの流れから見れば決して本流ではないが、ひとつのアイデアとして、ユーザーに受け入れられたのは間違いない。そうしたパイクカーの流れを受け継いだ量産モデルの1台が、1998年2月にデビューした初代のキューブだった。「より低く、流麗に」というスタイリングの王道の正反対。実用性のため「より高く、四角く」を徹底した個性派だ。ちなみに、車名のキューブ(Cube)とは、英語で立方体を意味する。

実態はマーチをベースにしたハイトワゴン

 直接的なベースとなったのは、第2世代目のマーチで、主要なシャシーコンポーネンツやエンジンを流用している。ホイールベース2360㎜はマーチと共通だが、全高は1625㎜とマーチよりも200㎜高く、全幅も1610㎜と20㎜ほど広げられている。当時、小型車から中型車まで、いわゆるハイトワゴンと呼ばれる背の高いモデルが人気を集めていたが、そんな人気を取り込む形で、マーチの派生モデルとして考えられたものである。確かに、この種のワゴンは天井が高ければ使い勝手にも優れることは言うまでもない。決してスタイリッシュというわけではないが、便利でキュートな小型車として、とくに若いユーザーは注目した。

 メカニズムとして特別に特徴的な部分はない。エンジンは排気量1274㏄の直列4気筒DOHC16バルブ(CG13DE型、出力82ps/6000rpm)をフロントに横置きとして前2輪を駆動する。4輪駆動仕様は1999年11月に追加設定されている。トランスミッションは4速オートマチックあるいはCVT無段変速を選ぶことができた。シフトレバーの位置は全車コラム式なっていた。サスペンションもマーチと同じで、前がストラット/コイルスプリング、後ろが5リンク/コイルスプリングの組み合わせ。ブレーキは前がベンチレーテッドディスク、後はドラムだ。

使い勝手にこだわったリアゲート付きボディ

 テールゲート付きワゴンのスタイルは、後部のCピラーにウィンドウを持った6ライトとなっており、後方の死角を減らすとともに、スタイリング上のアクセントとなっていた。テールゲートは上方開きの一枚ドアでバンパーレベルまで開くことができ、嵩張る荷物の積み下ろしも容易なものとしていた。また、ガラス部分のみでも開閉することが可能だったから、小物の出し入れなどには重宝する。これらは、ハイトワゴンならではの使い勝手の良さである。さらに、2列目シートは50:50の分割可倒式で、3人乗車+長尺ものの積載も可能だった。

 初代キューブは、外装の豪華さなど、無用な装飾を排して、実用性の高さと使い勝手の良さを第一にデザインされており、シンプルさと軽さが大きな特徴となっていた。こうした実用車本来の魅力はマーケットに支持され、生産開始から10カ月の1998年10月に国内生産累計が早くも10万台を突破。当時の日産では1982年の初代マーチに次ぐスピード達成だった。2000年9月に2度目のマイナーチェンジを施し、内外装のリファインとエンジン性能の向上を図り、魅力を高めた。以後、オーテックバージョンなどの限定車を登場させながら、2002年10月に第2世代へとバトンタッチした。