ダイハツデザイン5 【1980〜】

時代が求める軽自動車スタイルを独自発想で提案

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


個性と実用性に富む1.5BOX軽ボンバンの誕生

 鈴木自動車工業が1979年5月に発売したアルトを皮切りに、市場では商用車登録のボンネット付き軽ライトバン=軽ボンネットバンが大注目を集めていた。ユーザーの指向を重視したダイハツ工業は、次期型クオーレに軽ボンネットバン仕様を設定する方針を打ち出す。しかも、アルトを凌駕する合理的な設計と優れた経済性を有する1台に仕立てることを開発テーマに掲げた。

 車両デザインを企画するに当たり、開発陣はまず“FF1.5BOX”という発想を掲げる。エンジンが収まるフロント部をコンパクトに仕立てたうえでボディ高を高くとり、居住および荷室空間を最大限に広くする手法を採用した。エクステリアに関しては、現代的でスマートな造形に仕上げる。ワイドな視界と開放感を実現するために、ガラスエリアも広くとった。外観と同様、インテリアも洗練させ、シンプルで使いやすい室内空間を創出する。

 ダイハツ版の軽ボンネットバンは、「ミラ・クオーレ」の車名で1980年6月にデビューする。“実用性+個性=ミラ・クオーレ”のコピーを冠した新型軽自動車は、購入費用の安さと優れた燃費性能、そして1.5BOXの実用性の高さなどが好評を博し、たちまちヒットモデルに成長。ダイハツ製軽自動車の主役に位置づけられるようになる。1982年5月のマイナーチェンジでは車名を「ミラ」に変更し、晴れて単独車種になった。1985年8月に登場した2代目モデルも初代のコンセプトを継承。デザインはさらにスペース効率を追求した“1.3BOX”となった。

イタリアンデザインを導入した新型ハイトワゴン

 税制の改訂により軽ボンネットバン人気が衰退し、またハイパワー競争にも陰りが見え始めていた1990年代初頭、スズキは新発想のセミボンネット付きのハイトワゴン「ワゴンR」を1993年9月に発売する。右1ドア+左2ドアの個性的なスタイルに広くて快適な室内空間を備えたワゴンRは、たちまち人気モデルに成長した。

 軽自動車におけるスペース効率の向上に着目し、企画立案の俎上に載せていたものの、完全に先を越されてしまったダイハツは、遅ればせながら軽ハイトワゴンの開発を急ピッチで推し進める。シャシーに関しては基本的に既存のミラをベースとし、その上で“ビッグキャビン&ウルトラコンパクトノーズ”と称する新パッケージを構築した。スタイリングに関しては、イタリアのデザイン会社であるI.DE.Aが参画。Aピラーからフロントフェンダーおよびバンパーへとつながる独特のキャラクターラインに縦長形状のリアコンビネーションランプ、ワゴンRとは異なる横開きバックドアや左右4枚ドアなどを採用する。

 開発陣は内装についても創意工夫を実施。クラス唯一の左右独立リアシートスライド機構や前後席フルフラット機構を組み込んで利便性を向上させた。
 ダイハツの軽ハイトワゴンは、「ムーヴ」の車名をつけて1995年8月に発売される。市場に放たれたムーヴは、利便性に優れる4ドア+右ヒンジ式バックドアや豊富なシートアレンジなどで好評を博す。また、1997年5月にアメリカンイメージを持たせた角型2灯式ヘッドライト+メッキグリルを装着し、内装では専用アレンジのインパネやシート地などを採用したスポーティモデルの“裏ムーヴ”こと「カスタム」シリーズが登場すると、その人気に一層の拍車がかかった。

小さいことは素晴らしい!新型ミゼット登場

 ダイハツは1996年4月になると、軽自動車の新しい使い方や楽しみ方を提案するニューモデルを市場に送り出す。“わが街のミニマムトランスポーター”をテーマに開発した「ミゼットII」だ。

 一大ブームを巻き起こした初代ミゼットを現代風にアレンジした軽トラック型のミゼットIIは、軽自動車規格より全長で約500mm、全幅で約100mm小さいコンパクトボディで仕立て、最小回転半径は3.6mを実現する。また、前輪が運転席より前にくるセミキャブレイアウトを採用し、ステアリングの操作性を引き上げた。スタイリングは非常にユニークで、独立タイプのヘッドランプとスペアタイヤが形作るフロントマスクは愛嬌たっぷり。フロントのサイクルフェンダーやメッキタイプのガードバーなども、外観の個性を際立たせていた。

“楽しさ”を追求したFFオープンスポーツ

 ダイハツによる軽自動車の楽しみ方の提案形は、2002年6月になるとスポーツモデルへと発展する。“ワンダフルスモール”を謳うFFオープンスポーツの「コペン」が市場に放たれたのだ。
 FFレイアウトを活かした車両デザインは、キャビンフォワードと低重心を強調した“ティアドロップシェイプシルエット”で仕立ててスポーティ感を主張。ルーフ部には油圧機構を採用した電動開閉式の“アクティブトップ”と軽量・着脱式の樹脂製デタッチャブルトップを設定する。一方のインテリアデザインは、シンプルで端正なブラック基調のカラーリングで構成。高級感あふれるレザーシート仕様もオプションで用意した。

 専用工場の“エキスパートセンター”で製造されたダイハツ渾身のFFオープンスポーツは、様々なバージョンを加えながら2012年8月まで生産。後継モデルは2013年開催の東京モーターショーでそのコンセプト版が披露された。“新感覚・オープンスポーツ NEW FUN+”を開発テーマに掲げた第2世代は、スタイリッシュかつエモーショナルな独創的フォルムを基調に、外板意匠をカバーケースのように自由に着せ替えられるユニークなデザイン手法を採用。軽オープンスポーツの新たな楽しみ方を提案している。