ハイエースWGN 【1989〜2004】

“もうひとつの最高級車”を謳った4代目1BOXワゴン

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1990年代に向けた高級1BOXワゴンの開発

 後に“バブル景気”と呼ばれる未曾有の好景気に沸いていた1980年代終盤の日本の自動車市場。その最中にあって、レジャーユースで多く活用された多人数乗り車の1BOXワゴンは、高級で利便性の高いモデルが求められていた。

 このカテゴリーの旗艦としてハイエースを設定し、市場をリードしていたトヨタ自動車は、1990年代に向けた高級1BOXワゴンの姿を鋭意模索する。入念なユーザー調査を行い、得られた結論は、動力性能のさらなる向上と先進的なスタイリングの構築、そして快適さと豪華さを実現した室内空間の創出などであった。

“トヨタの、もうひとつの最高級車”として積極開発

 スタイリングに関しては、未来を予感させる先進的で伸びやかな曲面フォルムを基調とし、上級モデルではフォグランプ組み込み型の大型異形ヘッドランプや大型PPバンパー、バックドア一体デザインの横長大型リアコンビネーションランプなどを装備して高級感を主張する。また、バンパーコーナー部にエアロスリットを配置するとともに、サイドウィンドウのフラッシュサーフェス化を図って空力性能の向上と風切音の低減を実現した。
 従来型の大きな特徴だったルーフ部のアレンジでは、新たにリアムーンルーフを追加した“トリプルムーンルーフ”を設定。乗員の開放感を引き上げると同時に、ルックスの個性化を成し遂げる。ボディサイズやホイールベースも従来型より延長し、高級1BOXとしての存在感をいっそう高めた。

 室内空間については、質感の高い新形状のインパネを組み込むとともに、ステアリングポスト角の変更(52度→39度)やパーキングブレーキの移設(インパネ下ステッキ型→前席間レバー型)、全車フロアシフト化などを実施して乗用車感覚を向上させる。また、上級グレードの2列目席には90/180/270度の回転が可能な大型2人席ベンチシートを、3列目席には前後680mmも移動するスーパースライド機構を採用した。
 開発陣は細かな装備面にもこだわり、電動スライドドアおよびイージークローザーやハンドフリーマイクとスピーカーを活用したジョイフルトーク、バックソナー&クリアランスソナー、電動チルト&マニュアルテレスコピックステアリング、ダブルカーテン、3段階調光式蛍光灯、湯沸しポット&アイスメーカー付冷温蔵庫、10スピーカー式高性能オーディオ、液晶6.5インチTVなど、豪華なアイテムを豊富に取りそろえた。

エンジンは実用性重視のガソリン&ディーゼル

 搭載エンジンでは、直接駆動カム式動弁系やクロスフロー吸排気系、EFIなどを組み込んだ新開発ガソリンユニットの2RZ-E型2438cc直4OHCと1RZ-E型1998cc直4OHCを採用したことがトピックとなる。さらに、大幅な改良を施した2L-II型(2446cc直4ディーゼル)およびターボ付きの2L-TII型や3L型(2779cc直4ディーゼル)といったディーゼルユニットも用意。3L型は副変速機付きのパートタイム4WDと組み合わせた。操縦性や走行安定性の向上についても抜かりはない。動力性能の引き上げに合わせて、シャシーを大幅に改良。同時に、TEMSやPPSといった先進機構も積極的に盛り込んだ。

 第4世代となるハイエースは、1989年8月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“トヨタの、もうひとつの最高級車”。同社のマークIIやクラウンに匹敵する豪華装備を満載した高級1BOXワゴンであることを、声高に主張していた。

市場動向に合わせた改良を続けて15年の長寿命車に成長

 華やかなスタイリングや豪華な装備類などで、1BOX界の“ハイソカー”と呼ばれた4代目ハイエースは、デビュー後も市場ニーズに則した様々な改良を実施していく。1990年10月には4WD車のラインアップを拡充するとともに、積載性に優れるSW(スイッチワゴン)を設定。1993年8月にはマイナーチェンジを行い、内外装の刷新や4WDのフルタイム化、3リッターの1KZ-TE型ディーゼルターボエンジンへの換装などを実施した。

 4代目ハイエースの進化は、まだまだ続く。1996年8月には再度のマイナーチェンジを実施し、内外装に変更を加えると同時に安全性能を強化(前2席エアバッグおよびABSの標準装備化)。1999年7月には3度目のマイナーチェンジを行い、フロントマスクの変更やインパネ形状の刷新、1KZディーゼルターボへのインタークーラーの追加などを実施した。

 モデル進化の過程では、ノーズを伸ばして動力源をフロント部に置いたワゴン専用パッケージングのグランビア(1995年8月デビュー)や後継モデルのアルファード(2002年5月デビュー)といった高級ミニバンが登場したものの、ハイエースは1BOXならではの使い勝手の良さや耐久性に富むシャシーなどがユーザーから強く支持され、それに応える形でメーカー側も4代目ハイエースの生産を継続していく。結果的に全面改良を実施して第5世代に移行したのは、デビューから15年あまりも経過した2004年8月のことであった。