カルディナ 【2002,2003,2004,2005,2006,2007】

ビュレットフォルムをまとったスポーツ5ドア

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すべてを一新した3代目の登場

 2002年9月に登場した3代目トヨタ・カルディナは、それ以前とはキャラクターがはっきりと違うチャレンジングなモデルに仕上がっていた。カルディナはもともとスバル・レガシィ・ツーリングワゴンのライバルとして開発されたモデルである。初代は1992年11月、2代目は1997年9月に登場。ともにメカニカルコンポーネンツの多くをコロナ(同コロナ・プレミオ)と共用しており、実用性の高いワゴンとして市場に認知されていた。販売実績面でも堅調だった。

 しかし3代目は、ネーミング以外すべてが変わった。そもそも3代目はワゴンに見えなかった。スタイリングは先進ビレットフォルム。大型リアゲートを備えているため、ワゴンと呼べないことはなかったが、“スポーツ5ドア”と呼ぶ方がしっくりとくる造形である。スタイリングからは広いラゲッジスペースは連想できず、事実、荷室空間は先代モデルよりも狭かった。2分割方式の後席を倒せば、実用的なフリースペースが出現したものの、荷室の積載能力は、カルディナにとってのメインワークではなく、余技に過ぎない印象だった。

GT-FOURを筆頭にスポーツ性を徹底的に追及

 3代目カルディナが追い求めたもの、それはスポーティな走りだった。ラインアップは、1998ccの直4DOHC16Vターボ(260ps/33kg-m)を搭載するGT-FOURを筆頭に、1998ccの直4DOHC16V(150ps&152ps/20.2kg-m)のXとZ、そして1794ccの直4DOHC16V(132ps/17.3kg-m)を積むZとXの計5グレード。駆動方式はフルタイム4WDとFFの2種で、トップグレードのGT-FOURはネーミングから連想できる通り4WDのみが組み合わされた。トランスミッションは全車4速ATである。

 3代目の方向性をストレートに反映したのは、GT-FOURだった。GT-FOURには標準仕様のほかに、フロント倒立式&リア・モノチューブ式ダンパーを組み合わせた専用サスペンションとレカロ製バケットシート、トルセンLSDを装備したNエディション、さらに装備を厳選したシンプルなCエディションを設定し、スポーツユーザーの趣向に合うモデルを用意した。

 GT-FOURの名は、WRC(世界ラリー選手権)を席巻したセリカが名乗った栄光のネーミングである。セリカGT-FOURは、1999年7月発表の7代目では絶版となっており、熱き走りの血統を継承したのが3代目カルディナだった。

ドイツ・ニュルブルクリンクで速さを実証

 カルディナGT-FOURはカタログで「エンジニアたちの英知が結晶した先進のテクノロジーが息づいている」と宣言するように生粋のリアルスポーツだった。260psを発揮する3S-GTE型パワーユニットは、低速域から盛り上がる豊かなトルクとシャープなレスポンスを実現。さらに国産2リッター・ターボ初の「優-低排出ガス車」に認定されるなど環境に優しいスポーツ心臓に仕上げていた。

 足回りはフロントが高剛性のストラット式、リアはトーコントロールリンク付きの新開発ダブルウィッシュボーン式。駆動方式は滑りやすい路面でも安定したトラクション能力を誇るセンターデフ式フルタイム4WDだった。カルディナGT-FOURは開発過程で、ドイツ・ニュルブルクリンク・サーキットで徹底的な走り込みを行い、兄貴分のスープラよりも速い8分46秒をマークする。まさに速さは超一級品。Nエディションの“N”はニュルブルクリンクを意味していた。
 引き締まったプロポーションを持つ全長4510mm、全幅1740mm、全高1445mmのカルディナは、新世代のスポーツリーダーとなることが期待された。

走りを支えた骨太の基本設計とは?

 カルディナGT-FOURはパワフルなエンジンだけでなく、スポーツモデルの基本となるボディ骨格を徹底的に鍛え上げていた。アッパーボディは各ピラーの断面積を拡大し、フレーム結合部などを補強。ねじり剛性を飛躍的に高める。またフロントサスペンションメンバーとダンパー取り付け部の剛性をアップし、センターとリアフロアはクロスメンバーで補強。さらにリアサスペンションメンバーとサスペンションアームをしっかりと作り込むことで、操舵時の応答性をアップしていた。マニュアル感覚のシフト操作が楽しめるスポーツシーケンシャルシフトマチックなど、斬新なアイデアも満載していたが、それ以上に走りを支えるボディ剛性を追求した硬派なスポーツモデル、それがカルディナGHT-FOURの本質だった。

 しかし販売成績は、さほど振るわなかった。セリカGT-FOURの後継車に相応しいパフォーマンスを備えていたものの、スポーツユーザーがGT-FOURに期待したのは速さとともに、スタイリングを含めたスペシャルティな味わいだった。カルディナは先進的なスタイリングの持ち主だったが、セリカと比較すると実用車のイメージが強かった。
 さらに前2世代と同様に、カルディナにワゴンの実用性を期待した層にとっては、さほど広くないラゲッジ空間が不満点だった。

 カルディナ、とくにGT-FOURはスポーツカーに匹敵する走りと、定員5名のキャビン空間、そしてHB以上、ワゴン未満のラゲッジスペースを備えた欲張りモデルだった。1台のGTカーとして完成度の高いモデルといえた。しかし、ユーザーニーズとは微妙に異なっていたようだ。
 カルディナは2005年1月のマイナーチェンジを経て、2007年6月に生産を終了した。